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岡崎慎司独占インタビューVol.1:ゴール量産をもたらした発想の転換

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 シーズンも終盤に差し掛かり、日本代表FW岡崎慎司(マインツ)が好調だ。ブンデスリーガ第31節終了時点ですでに13ゴールを挙げ、MF香川真司(マンチェスター・U)がドルトムント時代の11-12シーズンに記録した欧州主要1部リーグでの日本人最多得点記録に並んだ。今季から加入したマインツでレギュラーとして28試合に先発し、“生き生き”という表現がピッタリな躍動感溢れるプレーを見せ続けている。シュツットガルトに所属していた昨季までの2シーズン半で合計10ゴールだったストライカーに今季、どのようなターニングポイントがあったのか。ゲキサカ独占インタビュー第1弾――。

Vol.2:欧州で磨かれた点取り屋の本能
Vol.3:「自信のなさ」が出た4年前…ブラジルへの決意

―今季ここまでの自分をどのように見ていますか?
「充実していますよ。一番の要因は、自分が変われたということですね。FWとしてシーズンを通して先発で出られているということが一番大きいです。自分が何をしなければいけないのかが明確になりました」

―『変われた』という感覚を具体的に教えていただけますか?
「考え方が変わったということですね。ヨーロッパに来てからこれまでは『どう点を取るか』『どうやってポジションを確立するか』ということに関して、自分の考えがあまりまとまっていないというか、整理されていなかった部分がありました。それがマインツでFWとして出る機会が増えて、他の人(のプレー)に合わせるのではなく、自分に合わせさせようと考えるようになりました。FWにはそれが一番重要だということに気づきました。監督からも厳しくプレッシャーをかけられることによって、自分が変わらなきゃいけないということが明確になり、その中で自分も自信を持ってやれるようになったという部分が大きいのかなと思います」

―以前、話をうかがったときに『シュツットガルトに比べてマインツはチームとしてバランスが取れていて、決め事も多そうだと思った。そういう環境のほうが自分の良さが生きると思って移籍を決意した』と話していましたが、実際にここまで戦ってきていかがですか?
「シーズン当初は、シュツットガルト時代と同じような状況に陥っているなと思ったんです。やっぱり周りに合わせてしまっていた。チームがうまくいくために、自分がその役目を果たさないといけないと思っていました。でも、チームが求めていることを考えたときに、周りに合わせているだけではチームのためにならないと気づいたんです。例えば、自分が後ろに下がってバランスを見たり、サイドハーフから中に入ってそこでさばいたりすることは、そんなにチームのためにならない。それよりも我慢して、FWの位置で引っ張ったり、裏に抜ける動きをしたりしていれば、そのうちの何回かがチャンスになる。そのほうがチームのためになると考えるようになりました」

―その“気づき”は今までになかったものだったんですか?
「シュツットガルト時代は、そう思っていても、チームのバランスが崩れているから結局はできませんでした。マインツはチームとしてバランスが取れているので、僕がそういう役割に徹したときに、周りがちゃんと見てくれるんです。だから、このチームだからこそ気づけたことだったかもしれないですね」

―それはいつごろのことですか?
「去年のホッフェンハイム戦(2013年10月5日)でした。途中交代した試合だったんですが、自分の中では思い切ってやった上での交代で、手応えもありました。あとは点を決めさえすれば、何かが変わるような試合ができたんです。その直後に日本代表のセルビア戦とベラルーシ戦があって、チームとして2連敗して、結果は出なかったんですが、自分の中では良いプレーができたと思っていました。あくまで自分の中での手応えなので、周りには分からない感覚だと思いますが、自分は攻め続けることができたんです。裏を狙い続けて、足下で受けたときも迷わずにできたというか、思い切り自分のプレーができました。ところが、その後、チームに戻ってすぐのバイエルン戦は出られませんでした。もちろん、コンディションを考慮されてのことですが、監督からの信頼がないんだなと思いました。そこから先は『もう落ちるところはないから自分が変わらなきゃいけない』と思ったんです。そして、その次のブラウンシュバイク戦に先発で出て、2点取ることができました。あの試合で点を取っていなかったら、また控えに回されていたかもしれません。あそこが自分の中の分岐点ですね」

―監督の期待にも応えられたんですね。
「(トーマス・)トゥヘル監督はそもそも『やりたいようにやれ』と言ってくれています。僕が気を遣って、周りに合わせていただけだったんです。裏の動きをとことんやればいいし、ゴールだけを見てやってくれればいいという理由で、1トップに置いてくれているのだと思います。だったら、とにかくボールを呼び込めばいいわけですよね。あとはどれだけチャンスをつくれるか、思い切ってやりたいようにやれるかなんです。ブラウンシュバイク戦の先制点はループシュートだったんですが、シュート自体は無我夢中で、決めることができて本当に楽になりましたね」

―マインツはシステムを頻繁に変えますが、1トップというポジションが自分に与えた影響はありますか?
「自分がFWだということを思い出すきっかけになりました。今はFWのプレーを思い出したので、別にサイドでも『自分なりのサイドハーフをやればいいんだ』と思えるようになりました。今まではサイドハーフだったら『自分が起点にならないといけない』と思ったりしていました。そうではなくて、自分のリズムでとことんやることで、結果的に相手を押し込んだり、自分がフリーで起点になれたりもする。1トップを任されたことがきっかけになって、昔の自分の感覚に戻れた気がします。それこそ清水エスパルスでやっていたようなプレーですね。とにかくゴールを目指して、周りが自分に合わせてくれる。そういうプレーに今はなっています。その機会を与えてくれたのは監督とチームです。自分一人ではここまで来ることはできなかったと思っています」

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(取材・文 了戒美子)

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