beacon

厚木マーカスがダービー制して4強、初出場の防大は敗退:全国自衛隊サッカー大会

このエントリーをはてなブックマークに追加

 全国の自衛隊基地・駐屯地で活動するサッカーチームの日本一決定戦「第48回全国自衛隊サッカー大会」男子の部は25日、駒沢オリンピック公園で準々決勝を行い、前回優勝の航空自衛隊入間基地第3補給処(空自3補)、同3位の海自下総、4位の海自厚木マーカス、陸自習志野が準決勝に進出した。

 最多16度の優勝を誇る海自厚木マーカスは、OBチームで前回準優勝の海自厚木A.N.F.C.(通称:厚木なかよし)を3-0で破った。前回大会は準決勝で対戦し、厚木なかよしがPK戦の末に勝利。マーカスがリベンジを果たす形となった。前半はスコアレスで進んだが、後半15分過ぎにセンターバックの大山徹(士長・日本大出身)が左足シュートを決め、緊張感のほぐれたマーカスが徐々に試合のペースをつかんで行った。

 大学時代にはサイドバックをしており攻撃参加が得意という大山は「自分は初参加なので感じなかったが、去年負けているので周りの選手は硬かった。先制点が取れて緊張が解けた感じだった。右利きだけど、高校のときにケガをして左足も練習した。シュートは、良いコースに飛んで良かった」とゴールを振り返った。マーカスは後半28分、09年度全国高校サッカー選手権大会の優秀選手に選ばれているMF大楠恭平(士長・神村学園高出身)が地を這うミドルシュートで追加点。昨年の敗戦を知る選手だけに「(同じ基地で以前に所属していた選手も多く)知っている人たちが相手なのでやりにくかったけど、去年の悔しさもあるので絶対に負けられなかった」とダービーマッチに強い気持ちで臨んでいたことを明かした。

 マーカスは試合終了間際にもMF上野章大(士長・東野高出身)が加点。強さを見せつけてのベスト4進出となった。山崎裕貴監督は「しびれる試合だった。今日は谷中潤希(士長・東久留米総合高出身)たち若い選手がやってやろうという気持ちを見せていた。後半に相手の運動量が落ちるのは分かっていたが、先制点が大きかった」と勝利に安堵。緊迫の一戦を乗り越えた最強軍団が準決勝へ駒を進めた。

 また、前回3位の海自下総は、キャリアの違いを見せて、初参加で勢いを見せていた防衛大に1-0で勝利した。ペースを握って試合を優勢に進めたのは防衛大だったが、海自下総の5バックを崩しきれなかった。後半、両チームの疲労感が強まるとピッチにスペースができ始めた。そして、海自下総は一瞬の隙を逃さなかった。後半27分、左サイドを押し込むと、左ウイングバックの松本誠吾(2曹・向上高出身)がミドルシュート。鋭い弾道がニアサイドを破ってゴールへ飛び込み、決勝点となった。松本は、厚木なかよしの一員として出場した前回大会決勝でも左足のミサイルシュートを決めている。得意の一発で勝利に貢献し「よく耐えたという試合。相手は一回りも違う(若い)から、元気。みんな走れるし、上手い子もいる。怖いチームが増えちゃいましたね。ゴールですか? 上がっていくのに疲れちゃって、良い具合に力が抜けた。足はほとんど振っていない。当たったという感じ。やっと当たった」と笑顔を見せた。

 初出場の防衛大の挑戦は、ベスト8で終わった。しかし、若い力は確かな爪跡を残し、今後の大会の動向を左右する存在であることを証明した。試合後、悔し涙を流した防衛大の福井大介主将(三田学園高出身)は「優勝を狙っていたし、狙う力があったと思うので、その分、悔しさが残る。意図的にボールを奪う作業を繰り返すことはできていた。ただ、勝負強さの点では足りなかった。駆け引きの部分では、相手が上だったのかもしれない」と言葉に無念さをにじませた。

 しかし、海自下総の平岩朋彦監督が「防衛大は、若さだけでなく個々の上手さも感じた。来年以降も必ず全国大会に出て来て上位に入って来ると思う。自衛隊のチームでは高校や大学とは練習試合でしか対戦できないので、真剣勝負ができるのは新しい刺激」と話したように、大会にとって彼らの初参加は大きな意義があった。刺激を受けたのは、大人たちばかりではなかったようだ。3年生で大会の選手宣誓も務めた小川翔太郎(日向高出身)は「運動量が落ちたときの守備が課題。大学リーグに生かしたい。やっぱり、自衛隊だけとはいえ全国大会だし、トーナメント戦など独特の雰囲気があった。この大会では相手の足が止まるけど、老かいさというかちょっとした巧さ、駆け引きを感じた。今回の敗戦で、来年こそはという気持ちが強くなった。またイチからチームを作り直して臨みたい。全国優勝というものをかけた緊張感のある、価値ある大会。来年こそは優勝したい」と巻き返しを誓っていた。

 あす26日は駒沢補助競技場で準決勝2試合が行われ、27日には味の素フィールド西が丘で決勝戦、3位決定戦が行われる。いずれも無料で一般観戦が可能となっている。


■準々決勝(4月25日)・結果
陸自習志野 3-0 海自徳島
海自下総 1-0 防衛大
空自3補 4-1 海自大村
海自厚木マーカス 3-0 海自厚木A.N.F.C.

■準決勝組み合わせ
陸自習志野 vs 空自3補(10:00、駒沢補助)
海自下総 vs 海自厚木マーカス(12:00、駒沢補助)

[写真]海自厚木マーカスは後半15分に大山が先制ゴール。海自厚木A.N.F.C.を下した

(取材・文 平野貴也=フリーライター)

TOP