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[MOM1023]八千代GK宮口大海(3年)_チームの危機を救った声

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.29 関東大会千葉県予選2回戦 柏南高 1-2 八千代高 柏日体高G]

 出場した選手それぞれが攻撃面・守備面ともに役割を果たし切ったとは言い難く、名門・八千代高にとっては非常に苦しい8強入りだった。その中でGK宮口大海主将(3年)は常に声を出し続けて味方にできた守備の穴を最小限に留めるなど、ゴールマウスの前で抜群の存在感を発揮して勝利に貢献。「自分はとにかくしゃべり続けて、きょうは何が起こってもおかしくない状況だったので、しゃべって締めさせようとした」。不安が的中して味方のミスから先制点を奪われたものの、ゴール前で威圧感を示し続けていたGKは、相手に攻め込まれてもそれ以上の失点を許さずに80分間を終えた。

 宮口について豊島隆監督は「良くゲームが見えていて、ボクが思っていることを伝えてくれる。ピッチで起きていることを上手く改善するコーチングをしてくれる。ただ叫ぶのではなくて、チームにいい影響を与えてくれています。上手くバランスを取ってくれている」。キャプテンシーは強いが、厳しい言葉を味方に浴びせ続けて逆にチームの士気を下げるようなことはしない。チームメートにも声を出させるような声を意識し、チーム全体で盛り上げる。まだまだ劣勢になると下を向いてしまう選手がおり、ピッチ上にその声は広まっていないが、主将は下を向いている選手にも喋らせることで雰囲気を良くすることを心がけている。

 指揮官も「頭がいい」と信頼を置く守護神は飛び出し、クロスへの反応の良さも武器とする。この日も前半15分にDFラインの背後を突かれながらも相手アタッカーとの距離を詰めてシュートコースを消した。本人は今年、思い切った飛び出しができていないと満足していないが、その分、声で存在感を示し、的確なコーチングでピンチの芽を摘んでいる。「自分はずっと喋っているので、味方と相手に対しても存在感を示すこと。シュートを打たせないようにするコーチングも含めて、そこは意識してやっています」。

 昨年も主力GKとしてプレー。Jクラブユース勢などと対峙したプリンスリーグ関東での厳しい戦いを知っているからこそ、チームへの要求は高くなる。千葉県1部リーグで戦う今年は多少守備の対応が甘くても守り切れてしまっているが、プリンスリーグで戦ってきた強豪は必ず決めるべきところで決めてくる。逆転勝ちしたこの日の試合についても「大差で負けていてもおかしくない試合」と厳しかった。「目標は市船(市立船橋)、流経(流通経済大柏)に勝って、全国出て、全国で頂点に立つこと。きょうのような試合をしていたら苦しい。自分たちも理解して常に話しているんですけど、まだまだ。またみんなで話していく」。バランス感覚に優れたリーダーが、チームを向上させるために全力を尽くし、守護神としての役割も果たす。

(取材・文 吉田太郎)

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