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[プレミアリーグWEST]「オレらが立ち向かってやろう」京都U-18が京都橘から4発で連敗ストップ!

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[5.6 高円宮杯プレミアリーグWEST第4節 京都橘高 0-4 京都U-18 宝が池公園運動施設球技場]

 高校年代最高峰のリーグ戦、高円宮杯U-18サッカーリーグ2014 プレミアリーグWESTは6日、第4節を行い、13年度全国高校選手権4強で今季昇格組の京都橘高と13年プレミアリーグWEST4位の京都サンガF.C.U-18の京都府勢対決は、MF大西勇輝主将(3年)の2ゴールなどによって4-0で京都U-18が快勝した。

 9位の京都橘と10位・京都U-18はここまでともに開幕3連敗。京都U-18はGK若原大志(3年)が離脱中で、京都橘も12年度高校選手権準優勝経験者のCB林大樹主将(3年)が2月の左足首手術からようやく交代出場するまで回復してきたところ。ともに守備の柱を欠いている中で、機能性を欠いたり、一発に泣くなど厳しい戦いを強いられていた。この日は対戦相手に中学生時代や選抜チームなどでともにプレーしていた選手が多く、互いに負けられない戦い。特に京都U-18にはその思いが強かったようだが、大西は「3連敗で最下位だったので、ボクたちがチャレンジャーという気持ちというか、橘高校にサンガは負けられないという立場ではなくて、オレらが立ち向かってやろうという、そういう下からの謙虚な気持ちが勝利に繋がったと思います。(相手には)知っている人がいるし、橘に負けたくないという気持ちが冷静さを失わせるかもしれないですけど、そこをぐっと抑えて『オレらはチャレンジャーだ』ということを言い聞かせてできたことが大きかったと思います」。その姿勢がピンチでも身体を張って守り切らせ、攻撃でも4得点を生んだ。大西は「やられそうな時も守ることができた。勝つという気持ちが上回ったから、守れたり、点が入ったと思う。こういう気持ちを忘れなければ、どのチームにもいい戦いができると思います」と“きっかけ”を掴む1勝を喜んだ。

 試合は前半2分、京都橘の1年生FW岩崎悠人のループシュートが会場を沸かせ、5分には京都U-18のU-19日本代表候補FW奥川雅也(3年)が右サイドから放った無回転FKがゴールを捉えた。さらに7分には右サイドでDFを鮮やかに抜き去った奥川の右足シュートがファーサイドのポストをかすめる。互いにゴールの予感を漂わせていた序盤。だが、ここから試合は膠着した。互いに攻め切る前にミスが起こり、相手DF陣に冷や汗をかかせるようなシーンまでにはなかなか至らなかった。前半半ばまではまだ力みのあった京都U-18と米澤一成監督が「(京都U-18に対する)思いを持っているヤツもいるし、(雰囲気に)飲み込まれているヤツもいる。チームの中でチグハグだった」と振り返った京都橘。今季結果も出ていない両チームはなかなかリズムに乗ることができなかった。

 それでも、平山悠大(3年)とU-16日本代表DF麻田将吾(1年)の両CBや13年U-17W杯日本代表MF永島悠史(3年)を起点にボールを動かす京都U-18は24分に右MF大西が逆サイドへ展開すると、左コーナー方向へ逃げながらGKをかわした奥川が立て直してから中央へラストパス。直後には奥川が鋭くPAへ切れ込み、そのこぼれ球をFW松下英右(2年)が左足で叩く。一方、倉本光太郎清水遼大、MF志知大輝(全て3年)中心に相手の攻撃を阻む京都橘も24分、カウンターからFW仙頭啓生(3年)が左サイドから入れたアーリークロスがMF大野挙弥(3年)へ届き、29分には左サイドの岩崎から再び対角線上の大野へラストパス。ただ、決定機を迎えた大野の右足シュートはGK遠近眞明(1年)が止めて得点を許さない。

 試合が動いたのは31分だった。コンパクトになっていたバイタルエリアに上手くすべり込んだ奥川がDF数人を引き付けてスルーパス。これで抜け出した大西が右足ダイレクトでゴールへ沈めて京都U-18が先制した。京都U-18はさらに35分、カウンターから松下が左サイド前方のスペースへ展開すると、走りこんだSB石岡巧丞(3年)がダイレクトで左足クロス。中央へ飛び込んだ松下の後方から現れた大西が頭でゴールへ押し込んで、連続ゴールを挙げた。不振が続いていることと、京都橘に対する攻略法として、この日はシステムを3トップから4-4-2へ変えていた京都U-18だったが、ボールを持って自在に動く奥川とDFラインの背後を狙う松下の2トップなどが上手くハマる形となった。

 この後は京都U-18が完全にボールを支配し、あわや3点目というチャンスをつくり出す。それでも前半の残り時間を踏ん張った京都橘は後半、サイドを有効に使ってチャンスを連発した。2分に日本高校選抜MF中野克哉(3年)のスルーパスから仙頭が右足を振りぬくと、9分には右ショートコーナーから中野がゴールライン際を個人技で打開。FW久田和歩(3年)のシュートはクロスバーを直撃したが、12分にも右サイドでキープした中野を起点に志知のパスで抜け出した仙頭のクロスを右SB小川礼太(2年)が右足で合わせた。志知のインターセプトなどから仙頭、中野がサイドでの1対1を制してPAへパスを入れる京都橘に対し、京都U-18の対応も後手になっていた。

 京都橘には十分に追撃するチャンスがあった。ただ川勝博康監督が「チームとして(最後のところで)しっかりとディフェンスをすることができた」と振り返る京都U-18はPAで相手の攻撃を跳ね返すなど得点を許さず、逆に個で勝敗の行方を決めてしまう。23分、京都橘はセットプレーのこぼれ球に反応した中野が左足シュートを放つ。これをブロックした京都U-18は2分前に投入されたばかりのFW門司康成(2年)が身体を張ってつなぎ、高速カウンター。パスを受けた奥川が一気にDFを振り切ってGKと1対1となると、シュートを一度左ポストに当てながらも跳ね返りを自ら押し込んで3-0とした。京都橘は岩崎の右足ループや中野の左足シュートなど後半だけでシュート9本を放ったが、無得点。逆に京都U-18は後半45分、遠近からのキックを左サイドで受けた奥川がドリブルで駆け上がり、スルーパス。これを門司が右足で決めて4-0で試合を終えた。

「個人個人の意識が高く、自信も持っている」と川勝監督が説明する京都U-18だが、個々の思いが強すぎたか、なかなかいい形として表れてこなかった。奥川は「勝ちたいという気持ちが強すぎて自分たちのサッカーを見失ってしまったことが連敗したことにつながった」。ただ開幕3連敗を喫し「ひとつきっかけが必要だった」(川勝監督)というチームはミーティングを重ね、まずそれぞれの役割を果たすことで結果に結びつけた。川勝監督は「選手、タレントはいると思う。ただチームとして上手く機能することが大事。それがきょうはピッチの上で合った。上手く機能しながら、個性を出していけるサッカーを目指していく」。京都U-18の選手たちは京都U-15時代に川勝監督の下、全国2冠を達成している世代。申し分のない実績も今は忘れてチームとしてひとつの勝利を目指す姿勢がある。

[写真]前半32分、大西の先制ゴールを喜ぶ京都U-18イレブン

(取材・文 吉田太郎)

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