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[MOM1027]韮崎MF野中裕太(3年)_「他の人よりも強い自信がある」気持ちで伝統校牽引

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.9 関東大会山梨県予選決勝 韮崎高 3-1 甲府城西高 中銀ス]

「自分、下手なんですけど、自分の気持ちとかを(ピッチ上で)出せるように全力でやっていきたい」と言い切るファイターだ。韮崎高の左MF野中裕太(3年)は、現役時代に韮崎で元日本代表MF中田英寿氏と同期だった今村優貴監督が「チームを引っ張っている」という存在。本人は「自分は負けず嫌い。人よりもトラップのセンスとか、パスのセンスはないんですけど、気持ちが他の人よりも強いという自信がある。それが強ければチームにもつながると思っている」とその強い気持ちとプレーでチームをけん引し、タイトル奪取へ繋げた。

 この日の前半はチーム内にやや「人任せ」にしてしまっている部分があった。J1甲府のホームスタジアムである、山梨中銀スタジアムで、同級生たちの大声援の中でのプレー。緊張もあってか、やや後手になる部分があった中、野中は運動量多く走り、前線からの守備、思い切った仕掛けでチームを後押しした。そして後半5分には左サイドからのパスを右足ダイレクトでミドルシュート。枠を捉えたこの一撃はDFのクリアに阻まれたが、チームは直後のCKで勝ち越し点を奪い、3-1で優勝した。「周りのみんなが緊張しているのかなとか思った部分があるんですけど、(気持ちを)出すのが苦手な選手もいるかもしれない。でも、オレは得意なので、みんなよりも技術とかが劣っているけれど、そういう気持ちの部分で引っ張れたかなと思います」と胸を張った。

 悔しい思いが今年へのパワーになっている。昨年の全国高校総体で韮崎は16強入り。Aチームの一員だった野中だが、登録17人にはギリギリで入ることができなかった。野洲高、静岡学園高を連破するなど福岡で躍動するチームの中で、野中の役割は用具係。ただ「自分が選手として出れないのはすごく悔しかったんですけど、同い年や一個上の先輩が頑張っていた。自分ができることがあるならそれを頑張るしかない」と野中はチームを全力でサポートし、その姿については今村監督も「一生懸命やってくれた。悔しい思いをした中で頑張れた」と目を細める。今年は全国舞台に立てなかった悔しい思いを胸に、どのような状況でも常に全力で戦うことを心がけ、チームの白星に繋げている。

 最上級生となった現在も自分ができることを頑張るというスタンスは変わらない。野中は「とにかく一戦一戦大事にしてどれも勝ちにこだわること。そのために日々のトレーニングを大事にしている。一戦一戦大事にしていれば全国につながると思う。とにかく日々を大事に。総体(関東大会予選)は優勝できたのでインターハイ、選手権、一戦一戦集中して優勝できる形にしたいです」。技術を気持ちの強さでカバーするMFはどんな逆境が訪れても、変わらずに戦って、勝利へ導くつもりだ。

(取材・文 吉田太郎)

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