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ザッケローニ監督のW杯メンバー発表会見要旨

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 日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督は12日、都内で記者会見を行い、ブラジルW杯に出場する日本代表メンバー23人を発表した。

以下、ザッケローニ監督の会見要旨

アルベルト・ザッケローニ監督
―23人の代表が決まりました。どういう基準で選んだのか?
「基準としてはまずはクオリティー、才能だ。それに関しては、たくさんの該当選手がいたと思う。その次にチームの和を大切にすること。やはりグループ力というのが非常に大切になってくる。戦術的理解力の高さ、もしくはユーティリティプレーヤー。できるだけ多くの選手が複数、2つ以上のポジションをカバーできるということも選考の基準に入れた。

 インテンシティーを出せる能力というのも選考基準に入っている。本大会でも自分たちのやりたいサッカーというのがあって、それを出すためには、やはり主導権を握っていかなければならない。そういう戦いをしなければいけないという中で、リアクションサッカーに徹するのではなく、自分たちのやりたいことを出せる選手、そういったものも選考基準に入れた。

 それに加えて、同じ実力、力のある選手が2人いたとしたら、若い選手を選択したということを最後に付け加えたい。その理由としては、タフな移動スケジュールや、高温多湿な環境でやっていくにあたって、フレッシュな選手を選びたかった。当然、準備期間も限られているということもあるから、一つひとつ詰めていく時間がない。そうなったときにこれまで一緒に積み上げてきた選手、これまで代表に名を連ねたきた選手を大切にしたし、そういった理由で今回入っている選手もいる。ここ最近、非常に活躍している選手、いいパフォーマンスをしている選手もたくさんいたのだが、これまで一緒に戦ってきたもの、積み上げてきたものをより大切にした」

―決断はいつ、どのような状況で下したのか?
「23人に関しては、かなり前の段階で、頭の中では固まっていたのだが、やはり最後の最後まで考えたいということで、みなさんもご存じのように、この間の土曜日も広島に視察に行ったし、テレビなどを通じて選手の状況はチェックしていた。悩みどころとしては、ポジションのところだ。ボランチを1枚多く連れて行こうかというところも頭の中にあって、ただそれをするとフォワードを一枚削るか、もしくはディフェンスラインを一枚削るか、そういう話になってくる。リストを見ても分かるように、たくさんの攻撃的な選手を選ぼうと最終的には決断をした。その理由としては、ブラジルに行って日本のサッカーを出すために、主導権を握りながらサッカーをするために、このメンバーが正しいのではないかというふうに決めた」

―自分たちで主導権を握った戦いをしたいということだが、このメンバーでどんな戦いをしたいか。
「先ほども言ったように、選手を選ぶ基準としては、できるだけ自分たちのサッカーを出せる選手というのを重点的に考えながら選んだ。相手に合わせるよりも、自分たちのやりたいことを出そうというコンセプトがあるのだが、その中で当然これまでの4年間で日本代表は非常にクオリティーも高くなり、プレーの精度も非常に高まったと自負している。本大会に行くにあたって、日本サッカーが成長している、ここまで日本代表は伸びているんだという証を残すために、こういったメンバーを選んだし、そういったサッカーをしていきたい。

 いいパフォーマンスを求めればいいのかということになってくるが、当然それだけではなく、やはり結果というものが求められることもよく分かっている。ただ、それを踏まえたうえで、自分の経験から言わせてもらうと、いいパフォーマンスをすれば、より結果が付いてくる可能性が高まると思っている」

―監督は常々、W杯にベストのコンディションで臨むことが大事だと言っていたが、今回はケガから実戦帰したばかりの長谷部選手と、長期離脱からまだ実戦復帰していない内田選手、吉田選手が入っている。W杯までにほぼ100%の状態に戻るという確信があるのか、それとも希望的観測をもって、ある意味“賭け”で連れて行くのか、どういう心境か。
「考えたのは、まず14日の初戦まで今日から起算して1か月ちょっとある。それに加えて、メディカルスタッフ、コンディションスタッフと忠実に情報交換してミーティングを進め、その意見を踏まえたうえで、選手たちの状況を把握してきた。合流のタイミングから、これらの選手は100%の状態ですべてトレーニングに参加できるようになっているし、そういう情報が届いている。また、ブラジルに入る前までに3試合あるから、それを通じて体のコンディションを高めることができる。

 物事をどう捉えるかという話で、イタリアではグラスに半分の水が入っている場合、それをいっぱい入っていると捉えるのか、半分しか入っていないと捉えるのか、そういう言い方をする。例えばこの場合、半分も入っていると解釈すれば、この3選手に関して言えば、たくさんの休み時間があった、しっかりと休んでくれということだと思う」

―監督は継続というものを大切にしているが、長い間代表から外れていた大久保選手が招集された。あらためてこの大一番で彼を招集、抜擢した理由は?
「考え方としては、どちらかというとこれまでどうして呼んでこなかったのかを説明したほうが話が早い。選手の特徴としては、非常に経験があり、嗅覚があり、どこにいったらチャンスがもらえるのかどうか分かっている選手である。そういう意味では、それ以外の選手たちを成長させることが大切だとこれまで考えていたが、そういった計算のできる選手がチームに何を与えてくれるのか、そういうアイデアもこれまで持ち続けてきた。このコンセプトに関しては、これまで他の機会でもみなさんに説明してきたつもりではある」

―23人に絞る中で最も悩んだところは?
「やはり23人しか呼べないということが大前提にあって、この4年間、代表チームに貢献してくれたメンバーがこのリストに入らないところも非常に苦しい思いをしたし、また若い選手、フレッシュな選手を23人の中に何とか入れることができないかということでも正直、悩んだ。それを踏まえたうえで、ブラッター会長に電話をして、23人以上呼べないかというような話もしたが、かなわなかった」

―この23人の選手たち、監督、スタッフも一緒にどのようなW杯にしたいか? その夢を語っていただきたい。
「私に課せられたノルマはW杯に行くことであり、日本サッカー界を成長させることだった。夢に関して言うと、選手には具体的な目標を掲げる、また宣言するつもりはない。自分が伝えていきたいと思っていることは、W杯で世界に立って、相手のことを気にせず、自分たちのやりたいサッカー、自分たちのことをより気にしてサッカーをしようと。そして、最善の努力をしてできるだけ前に進みたいと思っているし、相手のことを考えすぎずに自分たちのサッカーに集中して、勝利に近づくことを考えようというメッセージを発信していきたいと思っている。当然、相手にリスペクトを払わなければいけないが、おびえる必要もないと考えているので、そういう意味でチーム全員、全体が臆することなく思い切りW杯を戦う事が大切だと思っている。

 選手たちにはこのチームの基本コンセプトや基本戦術はすでに浸透している状態にあると思っている。細心の注意を払いたいこととしては、最高の状態、フィジカルコンディションでブラジルに入り、試合に臨むことが大切になってくると思う。この4年間を振り返っても、うちの調子が良くなかった、うまくできなかったときというのは、必ずコンディションのところにいくつかの問題を抱えていた。そういう意味ではコンディションのところだけで、あとは選手たちの能力、このチームのポテンシャルというものには最大の信頼を置いている。私が求めるサッカー、やっていきたいサッカーを達成するためには非常にフィジカルコンディションが大切で、その状態に左右される。そこはしっかり整えていきたい」

―この4年間、常に本田圭佑選手が中心にいたと思うが、彼に対するピッチ内外での期待は?
「これまで同様にやってほしいというふうに思っている。ピッチ内ではパーソナリティーであったり、パワーであったり、そういったものを存分に発揮してほしいと思っている。彼に対する心配というものはまったくなくて、これまでどおり思い切りやってほしいと思うし、ザッケローニジャパンになる前の代表でも、すでにその力は十分に証明していたと思う。本田も一番最初のアジア杯から一緒に戦ってきた仲であるし、まさにアジア杯でチームの中心メンバーをしっかりつくろうというコンセプトがあった。彼もその一人に該当する。それ以外には、この4年間で著しく成長してきたメンバーが今回のリストに入っている」

―今回のW杯でどれだけの成績が残せるかという点で具体的に監督が考えている成功と失敗のラインは? また日本サッカー協会は?
「私自身は少し違った考え方を持っていて、例えばさきほどの例えで言うと、(質問者は)おそらくグラスの半分にしか水が入っていないと考えるタイプなのでは。私はそうではなく、ポジティブに物事を考えたいと思うので、成功のイメージだけを持ってやっていきたい」

原博実専務理事「監督といつも話しているのは、今の日本サッカー界、日本の選手の持っている良さをまず出してほしいということ。まずはグループリーグを突破する。我々だけでなく、他のグループもグループリーグを突破することは簡単ではない。W杯は短期決戦に近いので、1試合1試合の重みが大きい。まずはグループリーグを突破する。ここに全力をかける。協会としても現場としても、まずはそこです」

―開幕までの1か月でやりたいこと、ここからどうやってチーム力をさらに上げていきたいか?
「まず23人全員がそろうのはおそらく23日になると思う。各々のスケジュールがあって、そこで全員がそろうことになることと思う。準備期間でも3つの場所があり、当然スタッフと話し合いを重ねながら、どのタイミングでフィジカル、または戦術、技術を高めていくのか、そういったプランは作成してある。ここ半年で代表チームとしては3月の3日間しか集まっていない。まずは全員を集めて、このチームのやり方をおさらいするところから作業を進めたいと思っている。まずは自分たちのやりたいこと、コンセプトを理解する。それを踏まえたうえで、相手がこうしてくる場合にはどう対応するかということも考えていきたい」

―日本はこの4年の間に東日本大震災があった。今年はソチ五輪で選手たちが勇気と感動を与えてくれた。次はサッカーの番だと思うが、被災地も含めた日本のサポーターに対して、監督からメッセージを。
「まず代表選手たちも3月11日のことを忘れていなくて、常にそのことを気にかけている。私自身も3月11日には日本にいたし、どれくらい大変なことが起こったかということは分かっている。代表選手たちはそういったことを考えながらピッチに下りてくると思うし、熱い思いを持ちながらピッチに下りてくるだろうと確信している」

―香川選手が今シーズンは無得点で終えたが、状態についてどのように考えているか。また、主導権を握るサッカーと言っているが、どうしても結果がほしいときに引いて守るという慎重な選択肢もあるのか?
「一つめの質問だが、個人の話に興味が行きがちだが、やはり個人の話をするときにはチームの話を同時にしなくてはいけない。例えば昨シーズンに関しては香川は非常にいいパフォーマンスをした。所属クラブもやはりいい結果を残している。今シーズンに限っては、よくあることだが、チームがうまくいかなかった。その影響を受けて、香川自身も他の選手と同様に、パフォーマンスというか、結果が昨季と比べて落ちただけではないかと考えている。当然、監督としては、彼の特徴、能力を最大限に引き出せるようにチームづくりを進めることを考えている。

 2つ目の質問だが、主導権を握った戦い方をしていきたいというのが大前提で、それができないということももちろん想定内にはあるが、そういった戦術の準備はある程度持っているし、そういった状況に耐え得る準備というのは進めていくつもりだ」

―アジア王者として臨むW杯になるが、その責任感を感じるか? アジア王者としてアジア1位の成績をブラジルで残したいか?
「そういった比較の仕方は個人的にはしていない。ブラジルに行ってこのチームのクオリティーを最大限に出す、最大限に表現するということだけを考えている。当然、その能力を出していくにあたって、フィジカルコンディションが非常に大切になってくるが、それが伴ったときには我々は非常にいい戦いができると思っている。どこまでできるかということに関しては、当然相手もあるので、ここで決めるわけにはいかないが、グループリーグの対戦相手を見ても、簡単な試合は一つもない。W杯だからタフな戦いになると思うが、それを踏まえたうえで自分たちのサッカーをして、自分たちの能力を最大限の形で表現したいと思っている」

―この23人にはどんな気持ちで大会に臨んでほしいか? 選手の多くはW杯を夢と語るが、監督にとってのW杯は?
「夢に関してだが、自分が夢を見るのは目をつぶった時だけ。つまり眠っているときだけ。一監督としては、目の前にあることだけをしっかりと把握していかなければならない。

 選手たちに持ってほしい気持ちというところでは、常にポジティブな気持ちでいてほしい。これまでの4年間、参加した大会はコンフェデ以外、ほとんどすべて結果を残してきた。時にいわゆる格上と呼ばれている対戦相手にもいい戦いをしたことがある。そういったことを考えると、やはりこれまでやってきた、信じてきたサッカーの精度をブラッシュアップしていく、高めていくという気持ちを持ってほしいし、そのサッカーをしてきたからこそ、こうした結果が付いてきているのだと思っている。

 私としては、最高のチームが手元にあるという思いでいる。このチームであれば、非常にいいサッカーができるのではないかという思いもある。フィジカルコンディションが伴えばということになってくるが、最高のプレーができるのではないかと思っていて、そういったチャンスを与えてくれた日本サッカー協会に感謝したいと思っている。繰り返しになるが、常にポジティブでいることが必要で、そういう気持ちで戦っていきたい。もし結果が付いてこない、負けるようなことがあった場合は、素直に対戦相手のところに行って『非常に素晴らしいプレーだった』と称えられるような考え方をしたい。当然、すべての対戦相手にリスペクトを払わなけれいけないが、怖がる必要はないし、おびえる必要はない。最大のミスがあるとすれば、対戦相手を恐れることがミスになると思っている。そういった面で、できるだけ選手にはストレスのかからない環境、状況をつくっていきたいと思っているし、もしプレッシャーがかかる状況だとすれば、やはり試合で自分たちのサッカーをいかにできるかというところに集中させていきたい」

―ボランチで悩んだということだが、細貝選手を外して青山選手を入れたのは大きな決断だったと思うが?
「その決断は難しくて、先ほども言ったようにボランチを4枚にするか5枚にするかというところで迷った。青山が入ったから(細貝が)外れたわけではなく、決断に至った理由としては、どこまでユーティリティで使えるかというところを考えて、いろいろなタイプを判断して、最終的にこのメンバーを選んだ」

―積み重ねが大事ということだが、大久保選手はこのチームでやっている時間が少ない。どういう役割、起用法を考えているのか?
「選手たち全員に、それぞれの持っている特徴というのを出してほしいと思っていて、それは当然、大久保にも該当する。彼は非常に経験があり、クオリティーがあり、年齢は30歳を超えているが、フィジカルパフォーマンスは落ちていない。あとは相手に読まれない動き、意外性を持っている。私が代表監督に就任した当初はケガが多くて、ケガに悩まされていたイメージがあったが、ここ1年半のパフォーマンスは非常に素晴らしい。質問の答えとしては、彼の持っている能力を出してほしい。つまり、経験であり、クオリティーであり、意外性である」


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