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内田、4年越しの思い…「恩返し」のW杯へ

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 日本代表のW杯メンバーに2大会連続で選出されたDF内田篤人(シャルケ)が12日、帰国し、都内で記者会見を行った。ファンも来場した公開会見。ビルの1階に設置された特設会場にエスカレーターで2階から降りてくる派手な演出に「すごく恥ずかしかった」と照れ笑いを浮かべ、エスカレーターの途中からは足早に駆け降りた。

 午後2時過ぎ、アルベルト・ザッケローニ監督が会見で23人の名前を読み上げたのとほぼ時を同じくして成田空港に到着。「(メンバー発表のタイミングが)荷物を待っているときで、テレビも見れず、高校のサッカー部のLINEのグループがあって、そこで……」。LINEのトーク画面に書き込まれる代表メンバーを見て、自分が入ったことも知った。

 2月9日のハノーファー戦で右太腿裏を肉離れし、長期離脱を余儀なくされている内田。実戦復帰はもちろん、チームの全体練習にもまだ合流していない。「チームの練習にも復帰せずに、メンバーに入れてもらって、拾ってもらった形」と感謝する。

 ギリギリの判断で手術を回避した。当初は肉離れだけの診断だったが、2度目の診察で右膝裏の腱が1本切れていることが発覚。「3人ぐらいの偉い先生に診てもらって、3人とも手術が必要だと言われた」。手術だけはしたくなかった内田は、鹿島時代からの旧知のドクターの診断を受けるため、日本に緊急帰国した。

「そのときは『俺、間に合うのかな』と思った」と不安もあったというが、日本での再検査の結果、「手術をしなくていいという決断をしてくれた」ことで、W杯出場への光が見えた。「そこで『間に合わないといけない』というふうに変わった」。だからこそ、この日、都内に向かって移動する車の中で真っ先に電話でメンバー選出を報告したのも鹿島のドクターだった。

 日本で懸命のリハビリに励み、3月中旬にはドイツに戻った。負傷直後は切れていた腱も「今はだいぶくっついてきた。今では左より太い」ところまで回復。全体練習への合流はまだだが、「スプリントとか、階段のダッシュとか、対人も1対1、2対2はやっている」と、徐々に負荷の高いメニューもこなしている。「チームにポンと入ってもやれる。体力的にはシーズン前より、数値は伸びている。(状態は)8割、9割ぐらいじゃないですか」と、順調な回復ぶりをアピールする。

「ケガをしてから、治療してくれたトレーナー、鍛えてくれたトレーナー。たくさんの人に支えられた。恩返しのためにも、ピッチに立ってプレーしたい」。そう語る内田にとって、ブラジルW杯は4年前のリベンジを果たす場でもある。

 10年の南アフリカW杯では、本大会直前にレギュラーを外された。不振にあえいでいたチームがシステムもメンバーも土壇場で大きく変更したためだった。結局、南アフリカでは1試合もピッチに立つことができなかった。

「サッカー選手なら、W杯はだれでも出たい大会。4年前は直前にメンバーが変わって、ベンチから試合を見ていた。そのイメージを払拭するチャンスだと思っている。ドイツで4年間がんばってきたし、いろんな大会に出た。この4年間には、自分でも少し自信がある。是非、ピッチで出せるようにがんばりたい」

 自分だけのためではない。今回、落選した選手たち、そして4年前、自分と同じようにW杯のピッチを踏めなかった仲間たちへの思いも口にした。「23人に入れなかった人もいるし、4年前、自分と一緒に出られなかった人もいる。そういう人たちの分も、少しでも僕が背負って、ブラジルに行けたら」。南アフリカW杯では、内田とともにFW森本貴幸、DF岩政大樹の3人がフィールド選手で出場機会がなかった。「森本、岩政さんのこともある」。4年越しのW杯。今度こそピッチに立ち、恩返しの大会にする。

(取材・文 西山紘平)

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