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ドイツ経由ブラジル行き 大迫勇也「日本人のFWが弱いという印象を覆したかった」

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 2013年7月の東アジア杯以降、ザックジャパンにおいて急速に存在感を増したFW大迫勇也。今年1月にはブンデスリーガ2部の1860ミュンヘンへ移籍したが、ブラジルW杯の半年前に海外移籍することは、W杯メンバー入りを考えれば、大きな賭けだった。だが、大迫は見事にその賭けに勝ち、ブラジル行きの切符を勝ち取った。新天地で何を手にし、どう感じて大舞台へ臨もうとしているのか。この半年を振り返りつつ、本大会を見据えてもらった。

―W杯メンバーに選ばれました。
「気が引き締まる思いでした。ここからなんだなって」

―自分が23人に選ばれると予想していましたか?
「入るか入らないかということは考えなかったです。それは監督が決めることであって、僕らはピッチの中でしかアピールできないので」

―まずはドイツでの半年間を振り返りたいのですが、欧州のシーズン途中である冬の移籍は大きな決意だったのではないですか?
「そんなことはないですけどね。チャレンジしか考えてなかったですし、プラスの面しか考えていなかったです。冬の移籍への抵抗とか、どうしようかなという気持ちはなかったですよ。移籍しようと決断するのはハッキリしていましたから」

―大迫選手と言えば、高校時代も鹿島でも華やかなキャリアを築いています。それでもドイツの2部を選択したことには理由があるのでしょうか?
「まず大きな理由は、ポジションがFWだったということですね。日本人のFWに対して、海外の人は弱いイメージしか持っていないと思うんです。そういうイメージを持たれているのも嫌だったし、覆してやりたいと思いました」

―FWへのこだわりが強かったんですね。
「FWでしかやるつもりはなかったです。2列目の選手は(海外でも)評価されていますが、FWが“弱い”という印象をどうしても覆したかった。それに関してはこれから先も、もっともっとやっていきたい部分でもありますね」

―2部への移籍には次へのステップという位置づけもあったのではないですか?
「そうですね。そのための半年というのもありましたし、ステップアップすることを前提に考えて、自分が成長できる環境でプレーすることが大事かなと考えました。W杯のことも、あるにはありましたが、それよりも自分がこの先、選手としてどうしたいのかを考えました。日本に残ってやったほうが良いのか、まずは2部でも海外のチームで自分を磨く方が良いのか。その結果、自分の今後を考えたときに、海外でやるのが一番かなと思ったんです。決断まで少し時間がかかりましたが、迷いはなかったです」

―今、話に出た“これからの自分”というものをどう描いているのですか?
「日本人のFWが海外の1部のレベルの高いチームでプレーしているケースは少ないので、そういうところでプレーしたいと思っています。サッカー人生の中で、そういうチームでプレーしている時間を長くしたいなと思って、その中で冬の移籍を決断しました。シンプルに、それだけですね」

―移籍後すぐにゴールが続きました。好調な滑り出しに見えました。
「そうですね。でも、好調に見えましたか? まだまだやることがたくさんあるなと思いましたし、チーム状況もあって、いろいろと考えながらやっていました」

―最初はどんなことを考えながらプレーしていたんですか?
「なかなか前にボールが入らない状況もあって、自分が下がってゲームをつくったりもしないといけない中で、いろいろと幅が広がった感じです。その状況の中で点を取る方法を考えたことが大きかったですね」

―ボールが出てこない点は日本との大きな違いでしたか?
「そうですが、逆にそういうのが楽しかったという部分もあります。日本では味わえない部分でもありますし、こういうサッカーもあるんだなと割り切っていました」

―とんとんと3点取りましたが、全部パターンが違ったのが印象的でした。
「そうですね。でも、たまたまかもしれないですよ。むしろ同じパターンでばかり点を取ることのほうが少ないんじゃないですかね。僕はあまりパターンとかは意識していないですね」

―特に意識して臨んだことはありますか?
「得点に対する気持ちがブレずにやることが一番だと思っていましたし、ゴールへの迫力を上げないといけないと思っていました。ゴールに対する姿勢であったり、そういうことですね。向こうのFWにはそういうものがすごくありますし、それを強く感じました」

―フィジカル的な部分で感じたことは?
「ドイツはセンターバックが重いし、強いので、もうちょっとウェイトを付けたいなというのは思いました。スピードを殺さずに強さを付けたい。でも、それには慣れもあると思うんですよね。少しでも早く慣れるように、フィジカル強化も並行しながらやらないといけないという感じでした」

―DFとの駆け引きや技術面では手応えもあったのでは?
「海外のDFは、(FWが)止まって受けるより、裏を狙ったり、動いたりする選手が嫌いだと思うんです。実際、嫌がりますしね。そういうプレーをしつつ、ポストプレーもしつつ、混ぜながらやることが一番かなと思います」

―日本とは違うサッカーに適応しつつある中で、自身のプレースタイルの変化も感じますか?
「すごく幅が広がったかなと思いますね。受けたあとにうまくゴール前に入る動きとか、そういう場面は増えたかなと思います」

―その点ではスパイクの『ナイキ ハイパーヴェノム』も助けになっているのでは?
「すごく軽くて、走りやすいスパイクなんですよ。スピードを生かすという点ではとても助かっています」

―そもそもスパイクにはどんなこだわりがあるんですか?
「まず何よりも軽いことです。次に足が痛くないことで、それくらいなんですよ。フィット感などの感覚的な部分は、履き始めだけ少し気にしますけど、その後は慣れてくるので大丈夫です」

―それにしても、成長を実感するのではないですか?
「でも、まだ3か月しかやっていないので。これからですよ。もっとこうしたほうがいいとか、ああしたほうがよかったというのは、日本にいたときよりも考えるようになりました。それ自体がすごくプラスだと思うので、1年後とかに『移籍してよかった』と思えるようにしたいですね」

―現在の状況には満足していますか?
「大変でしたし、難しいこともありましたけど、全部含めて楽しかったかなと思います。でも、まだまだですね。満足度で言うと……半分くらいかな。まだ全然です」

―飄々としている印象ですけど、チーム内でもそういう感じですか?
「そうですね。このままです。というのも、最初のころは『みんなに話しかけて仲良くならなきゃ』というのがあったんですけど、そのうち疲れちゃって(笑)。自分らしくしていれば良いのかなと思いました。それにこっちから絡みに行かなくても、みんなが絡んでくるから。楽しくやってますよ(笑)」

―さて、代表についてお聞きしたいです。W杯はいつごろから意識していましたか?
「もともと、思っていたかな。ちょっとずつですけど」

―それは2014年のW杯を?
「意識していました。少しずつ鹿島で試合に出られるようになって、徐々に長い時間、出られるようになっていくのと同時に、意識していました。でも、本当に意識するようになったのは1年前くらいですかね」

―東アジア杯の頃ですか?
「そのちょっと前くらいですね」

―Jリーグの試合に継続的に出られるようになった以外に理由はありますか?
「プロ4年目(2012年)の最初くらいから、(当時の)ジョルジーニョ監督にずっと『代表に入れ』と言われていて、それから意識していたんです」

―A代表デビューとなった東アジア杯では得点も決めました。当時は手応えがありましたか?
「全然ですね。そのときはまだまだ足りないなと思っていたので、逆にもっとがんばらないといけないなと思いました」

―ザッケローニ監督は東アジア杯以前、メンバーを固定気味に戦っていましたが、本大会でのメンバー入りというのもここから現実的に考えられるようになったのではないですか?
「どうなんですかね。あくまで自分次第だと思っていたので。自分のプレーをすることが一番だし、自分は自分で、選ぶのは監督なので」

―その後の欧州遠征も含めて、大迫選手と代表のスタイルがフィットしていくように見えました。
「でも、まだ代表に合わせている感も強いんです。自分に合わせてもらうくらいじゃないと、点は取れないと思っています。決まり事などに気を遣い過ぎというか、意識し過ぎというか……。悪いことではないですけど、自分にしかできないことをやったり、付け加えたりしていかないと自分の成長にもつながらないと思うので、そこは大事にしたいですね」

―W杯本大会ですが、グループリーグから白熱しそうですね。
「どこも強いですから、『対戦相手を評価してください』とよく言われるんですが、どこも能力が高いんですよね。だから逆に楽しみでもあります。その中で自分やチームのプレーをやらないといけないので」

―初戦が大事と言われていますが?
「全部大事だと思います。一戦一戦が大事です。『どれが』というのはない。全部です。最初勝っただけでもダメだし、逆に負けて落ち込んでいるわけにもいかないと思います」

―ブラジルの気候はどうですか?
「暑いのは鹿島にいるときから好きなんですよ。夏場の試合が好きでした。日本も暑いですからね。とにかく楽しみです」

―対戦してみたい国はありますか?
「うーん……。どこでも良いというか、どことでもやりたいですね。1試合でも多くやれれば、強い相手ともできると思いますし、がんばるしかないですね。1試合1試合、勝つことと点を取ることが大事だと思っています。でも、とにかく楽しみです!」

(取材・文 了戒美子)

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