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[MOM1045]駒場FW吉澤泰成(3年)_逆足で2得点、ダイナミックなプレーが光る

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.2 関東高校大会決勝 駒場高 3-0 佐野日大高 保土ヶ谷]

 両足でフィニッシュを狙うストライカーが、決勝戦で2得点を挙げて初優勝に大きく貢献した。駒場高のFW吉澤泰成(3年)は、佐野日大との関東大会決勝で2ゴール。いずれも左足のダイナミックなシュートだったが、右利きの選手だ。

 1点目は、前半34分に生まれた。右サイドから攻め込むと、2トップを組む2年生FW片岡勇介のパスを受け、相手をかわして左足に持ち替えるやいなや、豪快に振り抜いた。決して力のある弾道ではなかったが、しっかりとミートした球はファーサイドのポストに当たってゴールイン。ライン上を這って、相手GKとニアサイドのポストが交錯するような状態でボールの行き先が注目されたが、ラインを割ってチームにとっての追加点となった。

 吉澤は「片岡から良いボールが来た。相手が寄せて来ていたのが分かったので、切り返して左で打った。良いシュートが入ってくれたらいいなという気持ちで思い切り打ったら、結果としてラッキーだった。左足も蹴れるというほど自信はない。(左足では)奇跡みたいなゴールが多い」と笑ったが、利き足とは逆の左足を巧みに使う場面はシュート以外でも見られた。左サイドでは、右足で細かくボールタッチをするドリブルから右足で切れ込むそぶりを見せて左足のセンタリングを上げるシーンもあった。山下正人監督も「あの子は、両方蹴れる」と太鼓判。横河武蔵野FCジュニアユース時代に磨いた技術が生きている。

 2点目は、後半7分だった。左サイドからのクロスをMF高橋康太が右足ワンタッチのコントロールで流した球を、左足のダイレクトシュートでまたもファーサイドへと流し込んで、今度はすんなりとゴールを奪った。クロスをダイレクトで狙うプレーには、吉澤なりの狙いがある。「自分の持ち味はキープをして中盤の上がりを待ったり、サイドへ流れて溜めの時間を作ったりするところ。でも、僕たちは、守備の時間の長い試合が多い。ワンチャンスで決められる選手にもなりたい。それができれば、守備の選手は楽になる。だから、(横からのボールで相手が対応しにくい)クロスはなるべくトラップをせずに(相手に時間を与えずに)ダイレクトで打とうと考えている」と話した。

 狙い通りの一撃は、勝敗を決定付けるダメ押し点となった。両足を使えることからも分かるように、吉澤の足下にボールが収まればチームの選択肢は増える。左右どちらにもドリブルでの抜け出しとパスを狙えるから、相手は的を絞りにくい。山下監督は「とにかく速いとか体が強いとか、ゴリゴリ来るという感じじゃないけど、ゴニョゴニョと(ドリブルで)やるから相手は嫌だよね」と独特の言い回しで評した。

 ただ、今季のチームで最初から絶対的なエースに位置付けられていたわけではなかった。山下監督は三鷹高校を全国高校選手権のベスト8に導いたことでも知られる名将だが、とにかく守備の意識を徹底させる。「点を取られなければ、負けない。追いつかないなら足音でプレッシャーをかけろ」とまで言うほど、こだわるポイントだ。吉澤は、指揮官の求める水準を上回ることができず、練習試合ではCBやボランチにコンバートされた。

 ただ、その中で「センターバックで行くと言われたときは、マジかよと思った。でも、やっているとDFの気持ちが分かった。前から追うと後ろが楽になると分かったので、今は前線から相手を追ったり、相手のボランチもマークしたりするようにしている」とコンバートの意味を汲み取り、成長につなげた。山下監督は「最近は理解力が出てきた。言われたことを理解して、すぐにやってみようとしている。だから、話の聞き方が以前とはまったく違う。オレが話している間に、自分の頭の中でしっかりとシミュレーションをしているようなイメージだと思う」と、取り組み方にも変化を感じているという。チーム最大のコンセプトを体現するようになったエースの活躍は、チームをさらに上へ押し上げていくために不可欠だ。

 チームは今後、高校総体の東京都予選を戦い、全国大会出場を狙う。吉澤は「今回は、まさか優勝できるなんて思っていなかったので、驚いている。あまり実感はないけど、素直に嬉しい。自分たちは守備と粘りのチーム。自分はただ、一戦一戦というつもりでやってきた。ただ、関東大会の優勝が目標じゃない。選手権を目標にやっているので、この成績が今季最高の成績にならないように、どんどん点を取ってチームに貢献して全国を目指したい」と関東制覇に満足することなく、次の獲物を狙う気概を示した。

(取材・文 平野貴也)

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