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[総体]勝負所で強さ発揮、「感性、人間性、知性」併せ持つルーテル学院が鹿本下し、4年ぶりの全国王手!:熊本

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[6.2 全国高校総体熊本県予選準決勝 鹿本高 1-4 ルーテル学院高 水前寺]

 平成26年度全国高校総体「煌(きら)めく青春 南関東総体2014」サッカー競技(山梨)熊本県予選は2日、準決勝を行い、4年ぶりの優勝を目指すルーテル学院高が全国大会初出場を狙う鹿本高に4-1で勝利。ルーテル学院は3日の決勝で大津高と戦う。

 ルーテル学院の小野秀二郎監督は「感性、人間性、知性。ルーテル学院の中でこの3つのレベルを持っている選手がメンバーに入っている」と口にする。実力だけであってもダメ。協調性や戦術理解も併せ持っていなければ、ピッチに立つことはできない。今年は県1部リーグで鹿本に敗れるなど4連敗を経験。チームが崩壊してもおかしくない状況だった。ただ、「不平不満なく、アドバイスを聞いていた。それは心の成長。彼らには自分たちを伸ばせる力がある」と指揮官が目を細めるルーテル学院は、「感性、人間性、知性」を持って一丸となって立て直してきた。この日は先制しながらも追いつかれる展開となったが、それでも注目エースFW中原輝主将(3年)が「(県リーグで連敗したころは)苦しかったし、このままで勝てるのかなという不安があった。でもみんなでこの壁を越えたから成長できたと思っている」というルーテル学院は、自分たちのやるべきことをやり続け、終盤に強さを見せつけて全国へ王手をかけた。

 試合開始前から雨が降り続ける難しいピッチコンディション。序盤は互いにリスクをかけないような戦いだったが、徐々に攻守のスピード、走力で上回るルーテル学院が試合の流れを引き寄せる。10分に中原が個で相手ディフェンスラインを切り裂き、14分にも中原からのパスを受けたMF涌田千慧(3年)の右足シュートが枠をかすめた。ボール支配を高めたルーテル学院は24分にも右サイドでの崩しから最後はファーサイドでフリーとなった涌田が決定的なシュートを放つ。だが優勝候補の一角、熊本学園大付高を破って4強入りしている鹿本は最後まで諦めずにDFが身体を寄せ、またGK酒井勇輔(3年)がビッグセーブをして得点を許さない。ルーテル学院は26分にもMF蛭間匠(3年)が右サイドを打開して決定的なラストパスを入れるが、鹿本DF陣がゴールを死守。鹿本はなかなかいい形でボールを動かすことはできていなかったが、それでも10番FW徳永祐哉(3年)を起点とした攻撃から、MF小原智明(3年)やFW原田明(2年)がサイドのスペースを突いて対抗した。

 スコアが動いたのは前半28分だ。ルーテル学院は左クロスから相手のファウルで獲得したPKを中原が左足で左隅へ沈めてリードを奪う。ただ鹿本はすぐさま反撃し、33分にビッグチャンス。左サイドからの崩しで最後はファーサイドでフリーとなったMF内田将也(3年)が右足を振りぬく。これはDFに当たってわずかにゴール左へ外れた。それでも後半開始30秒、鹿本は左サイドでの混戦から徳永が鮮やかな右足コントロールショットを逆サイドのゴールネットへ沈めて同点に追いついた。

 これでまたスイッチの入ったルーテル学院は、この日相手を苦しめ続けていた中原の緩急をつけたドリブル突破や、長身左SB蔵治大和(3年)の攻撃参加、FW上江啓太(2年)や蛭間の仕掛けなどサイド攻撃の迫力が増す。8分には左サイドからPAへ侵入した蔵治が決定的な左足シュート。さらにこぼれ球をつないで上江が左足を振りぬく。だがGK酒井、CB来海亨(3年)主将中心に耐えた鹿本は攻め返すと、10分にワンツーから徳永が右足シュートを放ち、20分にはMF宮崎優樹(3年)のスルーパスから右サイドの小原がラストパスを入れた。それでも次の1点を奪ったのは、自力に勝るルーテル学院。22分、左中間から中原が出した斜めのスルーパスを中央の蛭間が右足でゴールへ流し込んで勝ち越した。

 ここからルーテル学院が強さを見せつけた。再び同点に追いつくために鹿本が反撃を試みるが、中盤での潰しやCB永田亮太とCB横山将大(ともに3年)中心の最終ラインが強固な守り。相手に全くシュートを撃たせない。逆に上江や中原が個人技でPAまでボールを運ぶルーテル学院は32分、中原のスルーパスから蛭間が右足シュート。GKの跳ね返りを上江が左足で決めて3-1とした。試合終了間際にも速攻から抜け出した中原が左足でこの日2点目のゴール。決勝のカードはルーテル学院と大津の“熊本ダービー”となった。

 ルーテル学院の小野監督は「技術は低いけれど、ボクが来て12年目で初めてですよ。3学年全員が大会へ向けて坊主(丸刈り)にした。(それを含めて)今までにないくらい、まとまっている感じがする。きょう1枚もらいましたけれど4試合イエローがなかったし、けが人もいない。そういうツキも持っていると思う」。3年生が気合入れるために丸刈りにしたところ、1、2年生も自主的に髪を切ってきたという。チーム全員で壁を乗り越えてきたチームには「かつてないほど」の一体感や真摯に取り組む姿勢がある。決勝で戦う大津はタレント軍団だが、一体感と走ること、全員攻撃全員守備では負けない。中原は「自分たちは上手い選手が集まっている訳ではない。全員で守備して攻撃する。走り合宿などでやるべきことはやってきた。自分たちらしく泥臭く走って、勝ちたい」。10日間で6試合、5連戦という過酷な“耐久戦”を「感性、人間性、知性」を持ったルーテル学院が自慢の走力と一体感で走りぬく。

[写真]後半22分、ルーテル学院は蛭間(7番)のゴールで勝ち越し

(取材・文 吉田太郎)

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