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本田、ザッケローニ監督との“闘争”を語る

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 4日(日本時間5日)、米フロリダ州クリアウォーターに構えられた合宿地でのインタビューセッション。FW本田圭佑(ミラン)は自らの“集大成”と位置づけるブラジルW杯に向けて、この4年間、アルベルト・ザッケローニ監督と「妥協のないすり合わせ」を行ってきたことを明かした。

 カテナチオの国・イタリアで育ち、長年セリエAで指揮を執ってきたザッケローニ監督は、日本選手の好む、しっかりとボールを保持してパスを回しながらゴールに迫っていくというやり方に対して、就任当初は違和感を持っていたようだ。

 誤解を招かぬよう、敬語をまじえた丁寧な言葉遣いで本田が説明する。

「すり合わせを行ってきたのは、例えばつなぐ部分。シンプルな言い方ですが、監督はもともと、自身の国、リーグで指揮を執られていて、日本の“回しながら相手のゴールに迫っていくという感覚”というもの(に対する理解)は最初はなかったと思っています。ただ、そこの考えについては、良い意味でギャップがあって当然です。だから、もっとつなぎたいという部分は、過去3年くらいでたくさん言ってきました」

 思い返せば昨年8月に宮城県仙台市で行われたウルグアイ戦に向けた練習会場。本田とザッケローニ監督はピッチの中心で20分間に渡ってマンツーマンで話をしていた。詳細は明かされていないが、指揮官の表情は険しく、互いに激しい身振り手振りの応酬。その様子は「話し合い」を通り越して「やり合い」にすら見えた。

 ウルグアイとの試合後、本田は「あそこで話していてできたことは半分半分。トライしたかったのは、シンプルに言うとポジショニング。今までの僕がボールを受ける位置と、今日の受ける位置を見比べてもらえれば、答えは出ると思う」と話した。試合のデータからは本田がより中央でプレーした時間が長かったことが浮かび上がっていた。

 セルビアとベラルーシに無得点で連敗し、チーム状況が著しく悪くなっていた昨年10月の東欧遠征の際にも、指揮官との激しいやりとりは続いた。本田は「あのころが、本気で言いたいことを言った場面ではラストかもしれないですね」と振り返った。

 本気でぶつかっていったことで得られたのは、互いの歩み寄りだ。さらに丁寧な言葉を選びながら本田は言った。

「私自身も歩み寄りましたし、監督自身も歩み寄ってくれたんじゃないかなと思うので、あのへんで何となくフィックスされた感じはあります。でも、監督はいい意味で頑固。やはり監督がイニシアチブを取りながら、選手たちがこういうところをこうしたら良いのではないかというバランスです」

 一概に妥協なきすり合わせとは言っても、選手が監督に向かって行くには相当な勇気と覚悟が必要だ。一方で、本田の“闘争”が意味あるものになったのは、選手の考えに耳を傾け、受け止め、そのうえで自身の戦術を授けるというプロセスを踏むザッケローニ監督だからこそ。揺るぎない信頼関係の原点が浮かび上がる。

 本田は4日の練習でも、会場到着後、真っ先にピッチに出てきた。クリアウォーター到着後、毎日実践していることだ。頂点を目指す日本代表の中心に本田がいる。

(取材・文 矢内由美子)

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