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3-4-3諦めたザッケローニ監督

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 W杯で指揮官が伝家の宝刀を抜くことはなさそうだ。アルベルト・ザッケローニ監督が会見で「3-4-3システム」を使わないであろうという方針を示した。

「4年間、このチームでやってきたが、3-4-3を完成させて、もう一つの戦術的オプションを持つには時間が足りなかったと思っている」。潔くそう言った。

 ザッケローニ監督にとって3-4-3は代名詞と言うべきシステムだ。プロサッカー選手の経験を持たない異色の戦術家は、初めてセリエAで指揮を執ることになったウディネーゼ時代の3シーズン目である97-98シーズンから本格的にこのシステムを採用。ドイツ代表FWビアホフをセンターフォワードに、ウイングに元V川崎のアモローゾらを据え、3位という大躍進。イタリアサッカー界をあっと言わせる指導ぶりで翌98-99シーズンは名門ミランの監督へと上り詰め、スクデットを獲得した。

 2010年9月に代表監督に就任した日本でも、同年12月末の合宿から3-4-3システムの指導を開始。基本システムは岡田ジャパン時代と同じ4-2-3-1のまま、「試合の中で顔を変えるため」という超攻撃的オプションづくりを目的とし、選手たちにコンセプトを植え付けた。

 しかし、日本ではなかなか根付かなかった。昨年10月15日の東欧遠征ベラルーシ戦の後半6分から使ったのを最後に、試合では封印。そのベラルーシ戦も、試合終盤の後半40分には4-2-3-1に再変更しており、3-4-3ではチームが機能しないと“見切り”をつけた試合となった。

 ネックは、長身で屈強なセンターフォワードタイプに適任の選手が不足していたこと。力を付けてきたFW豊田陽平(鳥栖)らを試したが、チーム全体に浸透していたコンビネーションサッカーを優先した。

「これまで積み重ねてきたやり方なので、試合の流れやタイミングで戦術的にこのオプションを試すかもしれない」とも付け加えたが、事実上は手放す覚悟はついているのだろう。それは23人の代表メンバーの顔ぶれからも明らか。「もちろんここにいる選手は複数のシステムができするが、4-2-3-1が適していると思う」と説明した。

「イタリアでは3-4-3を常に使ってきたというようにメディアは言うが、実際に私が使ったのはウディネーゼ、ミラン、トリノ、それとインテルでの7試合だけ。インテルではウイングバックがケガをして、その後からシステムを変えた」とも補足したザッケローニ監督だが、「監督は自分のサッカー観や哲学を持つべきだが、それを選手に強要することはいけない」ときっぱり言った。

 指揮を執ってきた4年間、選手とのコミュニケーションを重んじ、選手の特長を引き出そうと腐心してきた指揮官の決断だった。

(取材・文 矢内由美子)

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