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[総体]名門のプライド捨て“弱い”こと認める武南、課題残す6発勝利:埼玉

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[6.14 全国高校総体埼玉県予選3回戦 深谷一高 1-6 武南高 西武台高第2G]

 平成26年度全国高校総体「煌(きら)めく青春 南関東総体2014」サッカー競技(山梨)の出場権2枠を争う埼玉県予選は14日、3回戦を行い、12年全国準優勝の武南高は深谷一高に6-1で快勝。武南は15日の準々決勝で昌平高と戦う。

「力がないヤツが走ろうとしない。どうやって勝つんだ!」。前半を2-1で終えて迎えたハーフタイム。名将・大山照人監督からの強烈なゲキが選手たちに飛んだ。「チームがやらないといけないことがルーズになっている。ボールを受ける時に止まらないことをやらせようとしているけれど、試合ではできない。(自分たちのような)弱いチームが強いチームに勝つための術を体得してくれないです」と6発勝利にも指揮官は不満げだった。

 気合を注入された後半、武南は闘争心を前面に出して前からボールを奪いに行き、波状攻撃から4得点。ただ、力任せに1対1を制して決めたゴール、チャンスが多く、思惑通りの試合ではなかった。特に前半は味方へのサポートやカバーリングに何度も遅れが出る展開。前半8分に「チームがその時々にどうしてほしいのか考えたプレーをしたい」というエースFW山本奨(3年)の右サイドからの折り返しをFW石山大地(3年)が右足ダイレクトで決めて先制し、16分には2年生MF紺野和也の右CKをファーサイドのMF山形竜也(3年)がダイビングヘッドでゴールへ突き刺してリードを2点へ広げた。

 武南は右サイドの快足MF濱田康平やSB益子大輝(ともに3年)、左の紺野がサイドをえぐりクロスを連発。また山本がDFを個人技でかわしてシュートを放つなど攻め続けた。その中で2点を奪ったが、不用意なファウルや連係ミスが失点を生む。21分、軽いプレーから左FKを与えると、右SB山本凌磨(3年)の右足キックを中央でCB塚越健太郎(3年)に頭で合わせられて失点。完全にDFの足が止まったところを綺麗に決められてしまった。

 直後にはDFが深谷一MF橋本直樹(3年)に突っかけられてボールを失い、GKとの1対1に。全国総体準優勝メンバーのGK荒井文弥(3年)のビッグセーブがなければ同点に追いつかれていたところだった。前半9分に流れるようなパスワークからMF岡田昌樹(3年)、橋本とつなぎ、MF田上裕太(3年)が決定的なシュートを放つなど、正確な崩しも見せていた深谷一は追撃ゴールと直後につくり出した決定機によって応援団が一気に盛り上がるなど、完全に息を吹き返していた。

 ただ、拙いプレーの連続でさすがに目の覚めた武南は28分に右サイドを濱田がえぐり、山本がポストを叩く右足シュート。そして後半5分には中央の紺野が左サイドへ叩き、石山のクロスを山本が頭で合わせて3-1とした。深谷一の“切り札”FW橋本光(2年)のスピードの前に危ないシーンもつくられた武南だったが、濱田のスピードを上手く活用し、局面では個の技術で上回って決定機をつくり続ける。

 12分、右サイドからスピードのあるドリブルで深谷一DFを切り崩した濱田がPAまで侵入してシュート。13分にはMF奥津大貴(3年)の左クロスからCB西田稜馬(3年)がクロスバー直撃のヘディングシュートを放つ。そして14分には右ショートコーナーから紺野の上げた左足クロスを山形が頭で合わせてこの日2点目。24分には個人技でDFを翻弄した山本のラストパスを紺野が左足で決め、32分には右CKのセカンドボールをつなぎ、最後はMF矢野広大(3年)からのパスを受けたFW深野大輝(3年)がループシュートで6点目を決めた。

 荒井や山本、CB高野拓実(3年)と昨年からの主力も残すが、今年の武南は自分たちが“弱い”ことを認めている。もちろん全国高校選手権選手権優勝1回、全国高校選手権、全国高校総体準優勝各1回など輝かしい歴史を持つ武南の一員としてのプライドはある。ただ、強豪対決で相手をねじ伏せるような実力がある訳ではない。だからこそ今年は、相手よりも動いて勝機をつかむ。山本は「入学した時、今年の代は集まっていると言われていた。ただ、関東大会で負けて、自分たちは弱いとみんな認めた。チャレンジャーの気持ちでやっている。(弱いと)認めるのは悔しいですけど・・・勝てるようにしたい」と口にした。「弱いチーム」の評価を結果で覆せるように、武南は自分たちのやるべきことを貫く。

[写真]後半32分、武南は深野がループシュートを決めて6点目

(取材・文 吉田太郎)

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