beacon

[総体]憧れの全国V世代を追う桐蔭学園、全国へ王手:神奈川

このエントリーをはてなブックマークに追加

[6.15 全国高校総体神奈川県予選準々決勝 桐蔭学園高 0-0(PK7-6)湘南工科大附高 等々力]

 夏の高校王者を決める平成26年度全国高校総体「煌(きら)めく青春 南関東総体2014」サッカー競技(山梨)の神奈川県予選準々決勝が15日に行われ、11年の全国王者・桐蔭学園高は0-0で突入したPK戦の末に湘南工科大附高を下した。桐蔭学園の現3年生は、中学3年生のときに全国優勝を見て、入学してきた世代。主将のGK藤川誠人は「僕たちは、3年前の優勝メンバーに憧れて桐蔭に入って来ている。全国に出ることが目標ではなく、全国を優勝することが目標。次の一戦もチーム、味方を信じて頑張りたい」と、あと一歩に迫った全国大会出場(神奈川県は2チームが出場)へ意気込んだ。

 試合は、ゴールこそ生まれなかったが、実力伯仲の好ゲームだった。前半の立ち上がりは、湘南工科がやや勢いに勝った。ピッチの幅を広く使うポゼッションを展開し、サイドから中央へ斜めのパスを入れて相手の守備網を切り崩しにかかった。特に3トップの一角を担う左FW上米良柊人は、果敢なドリブルでパスサッカーにアクセントをつけていた。一方の桐蔭学園は、相手をサイドに追い込む守備ブロックを形成し、相手が中央へ入って来てもタイトな寄せでシュートへ持ち込ませなかった。ボールを奪うとサイドで起点を作り、周囲の選手がボールホルダーとの距離を縮めてコンビネーションによる打開を図った。しかし、互いに相手の攻撃をしっかりと食い止めたため、前半のシュート数は桐蔭学園1本、湘南工科2本と少なかった。

 状況が変わったのは、後半からだった。湘南工科が鋭い立ち上がりから積極的にゴールを狙った。後半1分にMF勝山聖也がミドルシュート。同16分、18分には右FW植木勇作がシュートを放った。すると、桐蔭学園も後半21分に右からのクロスをFW下山晶瑛がスライディングシュートを狙い、左CKを獲得。左DF藤崎雄太郎が上げたクロスをCB三輪泰平がヘディングで合わせたが、湘南工科は手堅いブロックで混戦からボールをかき出して難を逃れた。後半のシュート数は桐蔭学園6本、湘南工科4本と一気に増えて攻め合いとなった。桐蔭学園は後半30分に右CKからCB青戸翔が立て続けに惜しいヘディングシュートを放った。一方、湘南工科も左CKのこぼれ球をCB鶴田雄佑が上げ直したボールがクロスバーに当たる惜しいシーンを作り出したが、いずれも得点にはならなかった。

 試合は80分間で決着がつかず、20分間の延長戦に突入。13時キックオフで30度近い気温の中での熱戦は、ここでも勝敗が決まらなかった。延長後半の終了間際、桐蔭学園は左利きのボランチ新井博人のフィードを受けた右MF鳥谷部嵩也が相手をかわして決定機を迎えたが、シュートはゴール右に外れた。100分を戦い終えて、試合はPK戦を迎えた。ここでも両チームがノーミスでサドンデスに突入し、緊迫した雰囲気が続いた。しかし、湘南工科の7人目のキックを桐蔭学園のGK藤川がセーブ。直後に桐蔭学園は途中出場のFW赤塚豪也がキックを成功させ、PK戦7-6で死闘を制した。

 桐蔭学園にとっては、押された時間帯にしっかりと守備面で対応し切れたことが勝因と言える。賎機徳彦監督は「湘南工科さんは、プリンスリーグに所属している。ウチは神奈川県1部なので、相手が格上。ポゼッション(ボース支配)を取られるのは仕方がない。相手のパスコースを切りながら、サイドに追い込んだり、くさびのパスを狙ったりと誰もサボらずに組織を作って最後まで守備をやり切ったことが失点ゼロにつながったと思う」と選手の健闘に賛辞を惜しまなかった。

 連帯感の裏側には、藤川が「チーム内で問題がたくさんあって、話し合いをして泣く奴がいたり、ケンカになったりすることもあった。でも、積み重ねていくことでチームとしてのまとまりが出てきた。当初は、選手起用に関しても、なんでオレじゃないんだと言う選手がいた。でも、出ている選手を信じようとみんなで話し合った」と明かした、ミーティングの積み重ねがあった。攻め込まれても焦りはなかったというCB青戸は「スカウティングで仲間が相手の特徴をしっかりと教えてくれたので、相手の10番のカットインなどは気を付けて対応していた。あとは、最終ラインで全員がカバーし合うことを意識していた。今のチームには信頼がある」と自信を示した。一体感と粘り強さを見せた桐蔭学園は、22日に行われる準決勝で麻布大附高と全国大会出場の切符をかけて対戦する。

(取材・文 平野貴也)

▼関連リンク
【特設ページ】高校総体2014

TOP