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宮本恒靖氏の日本代表分析「パワープレーの選択自体は間違っていない」

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 コートジボワール戦の逆転負け、ギリシャ戦のスコアレスドロー……。グループリーグ2試合を終えて1分1敗の勝ち点1にとどまっている日本代表は、24日のコロンビア戦に勝つことが決勝トーナメント進出のための最低条件となっている。これまでの2試合で自分たちのサッカーを表現できず、アルベルト・ザッケローニ監督のチグハグな采配もあって、ここに来てザックジャパンに対する批判の声は強まっている。とはいえ、まだグループリーグ突破の可能性が完全に消えたわけではない。他力の状況ながら、わずかな可能性を懸けて挑むコロンビア戦へ。2002年の日韓W杯、2006年のドイツW杯と、過去に2度のW杯を経験した元日本代表DFの宮本恒靖氏は、現在の日本代表をどのように見ているのか――。


 日本代表が決勝トーナメントに進出するためには、第3戦でコロンビアに勝利した上で他会場の結果次第という厳しい条件があります。選手たちの心理を想像すると、やはり苦しい状態にあると思います。前向きにならないといけないという気持ちはありながらも、一方で自分たちが思い描いていた大会になっていないという現実があって、そこで揺れている気持ちをなんとか第3戦に向けて整理しようとしているはずです。

 自分も2006年のドイツW杯で同じような状況を経験しました。そのときはジーコ監督が第3戦で新しい選手を起用してチームに違う風を入れて活性化させようとしましたが、それで立ち上がりにうまく試合に入れたところがあったので、新しい力を使うのは今までの流れを変える、いいきっかけにできるかもしれません。

 第2戦のギリシャ戦では、それまで主力だった香川真司選手をベンチに置き、大久保嘉人選手をスタメンで起用しましたが、レギュラーを外したというネガティブな影響よりも、出番を待っていた選手を使って新しい風を入れたというポジティブな影響のほうが大きかったと思います。特に大久保選手はプレー自体もすごくアクセントになっていたと思いますし、スタメンから外された香川選手もそのまま出場機会がなかったら精神的に難しくなっていたかもしれませんが、後半に自分の力を証明する時間を与えられていたので、そういった方法は悪くなかったと思います。

 第3戦に向けて選手サイドでできることは、最後までチームとしてあり続けることです。勝っているチームであれば、自然と一体感が出てきていいのですが、うまくいっていないときはそれぞれのベクトルが変わってしまいがちです。すべてを一つにするのは難しいかもしれませんが、なんとかみんなが違う方向を向かないように、自分たちのサッカーをさらにレベルアップさせていくことに集中していくべきだと思います。

 また、コロンビア戦に向けて21日の練習を突然オフにしたようですが、その判断はよかったと思います。監督がいろんな状況を鑑みて、今は練習をやってもうまくいかないと判断したのだろうと想像できますし、今の状況では戦術云々よりもメンタルをいかに持ち直すかということのほうが重要だと思います。

 ドイツのときも第2戦が終わってから第3戦までの練習の雰囲気はやはり難しいものがありました。23人、25人が練習に参加する中で、それぞれの心理状況がプレーに表れてしまうことで、なかなかポジティブな状況をつくりにくいと考えたのでしょう。選手たちを一回ピッチから離したのはいい判断だったのではないでしょうか。

 そういう精神的に苦しい状況で、大久保選手のようなベテランがチームにいる影響は大きいと思います。コートジボワール戦後には、落ち込んでいた香川選手を励ましたり、いろいろとチームメイトに言葉をかけていたようですが、そういったケアができるのがベテランだと思います。プレー面でも股抜きから相手に向かっていく姿勢を見せていましたが、ああいうプレーも仲間を勇気づけると思います。今回、大久保選手は難しい状況の選手に声をかけたりしているみたいですが、そういうことを聞くと「嘉人も大人になったな」と感じます(笑)。

 それから最近はパワープレーのことがずいぶんと話題になっていますが、その選択自体は普通のことだと思います。ザッケローニ監督がメンバー発表のときに、高さを使った攻撃に対して消極的な発言をしたからちょっとした騒動になっているのだと思いますが、パワープレーは練習していなくても別に難しいプレーではありません。手っ取り早くゴールに近づくために、今いるメンバーの中で最もヘディングの強い選手を前に置いて蹴るというのは勝つために必要な手段ですし、間違っていないと思います。

 あとはだれがセカンドボールを拾うのか、だれが後ろに流れるボールに対して向かっていくのかといったことを考えないといけませんが、そんなことは練習をしなくても日本代表に選ばれるレベルの選手ならできて当たり前です。残り15分、10分の段階から蹴り始めたら監督のやり方を疑問に思うかもしれませんが、残り5分あるかないかの時間帯で放り込み始めるのはごく普通のことですし、もし自分が選手の立場だったとしたら「蹴ろう」と言うと思います。

 この大会は全体的にフィジカルコンタクトの激しい試合が多く、審判があまりファウルを取らずに流している傾向があります。そういう意味では、日本はコロンビアに対してどんどんプレッシャーをかけ、ボールを奪って素早く前にゴールに向かっていくのがいいと思います。そうやって勢いづけることができれば好スタートを切れると思うので、立ち上がりから相手を自由にさせない守備を見たいですね。

 ボールを動かすことでリズムをつくるというやり方もいいとは思いますが、守備から入ってボールを早く奪って一気にフィニッシュまでいく形をつくり、それでCKを何回か取り続けるような状況になれば、チームのベクトルがゴールに向かいますし、しかもスピードを伴った、いいイメージを共有できるので、個人的にはそういった戦いをすればいいのではないかと思っています。

(構成 神谷正明)

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