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山本昌邦のW杯分析「コスタリカらしいサッカー、日本らしいサッカー」

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 ブラジルW杯はいよいよ4試合を残すのみとなった。02年日韓W杯日本代表コーチや04年アテネ五輪U-23日本代表監督などを歴任した山本昌邦氏が、世界トップクラスの戦術から、日本の未来像まで解説する。

コスタリカの巧みなラインディフェンス

 準々決勝オランダ代表コスタリカ代表がスコアレスでも目が離せない試合展開となったのは、両国がそれぞれの特徴を出していたからだった。

 オランダは枠内シュート率が高く、それが今大会ナンバーワンの得点力(12得点)につながっている。この試合でも20本中15本、じつに75%がゴールマウスを捉えていたが、無得点に終わったのはコスタリカの守備力が高かったからだ。ゴール前のシーンが多く、スコアレスだから面白くないとは言わせない、見ごたえ十分の内容だった。

 悪いできではないのにゴールが遠いオランダ。MFヴェスレイ・スナイデルのシュートがゴールポストとクロスバーに弾かれたシーンがあったが、これはGKケイラー・ナバスの好守を上回るために、より際どいコースを狙った証だろう。

 途中から前線に4選手を並べてきたオランダに対し、コスタリカの最終ラインは相手の人数に関係なく守るやり方をしているためゴールを割られることはなかった。中量級の体格であるコスタリカは、フィジカルに頼るのではなく、ラインコントロールを駆使してオフサイドをとることができる。中心はDFジャンカルロ・ゴンサレス。数十cm単位でのきめ細かいラインコントロールは、ゴンサレスがいるからこそ成り立つ戦術だろう。その上で、個々の選手は球際に強い。強豪5か国相手にわずか2失点(1点はPK)というのもうなずける。

準備に勝ったファン・ハール監督

 決勝トーナメント1回戦のギリシャ戦でPK戦までもつれたコスタリカは、90分で決着をつけたかったため、早めに交代のカードを切った。3枚目を使い切ったのは延長前半7分だったが、その時点でオランダが切った交代のカードは1枚のみ。私はなぜ交代のカードを残しているのかと思いながら解説をしていた。FWロビン・ファン・ペルシーは足がつっていたし、主導権を握っていたので早く試合を決めたほうがいいと思っていたのだが、PK戦になって答えがわかった。

 オランダの勝利は、偶然ではなく必然の勝利だった。PK戦での戦いぶりは、緻密な準備をしていたとしか思えない。今大会ナンバーワンの得点力(12得点)を誇りながらも、スコアレスになってPK戦までいくことまで、ルイス・ファン・ハール監督は想定していたのだ。

 PK戦直前に投入されたGKティム・クルルは、5人のキッカーが蹴った方向にすべて反応し、そのうち2本をストップ。2人目を終えた段階で、私の中でオランダの勝利は確信に変わった。ここまで好セーブを連発していたナバスも、PK戦では逆をつかれていた。これはオランダの情報戦での勝利だ。コスタリカにクルルの逆をつくような経験値はなかった。最悪PK戦までいっても、勝ち上がる。ファン・ハール監督の自信を見た試合だった。

日本らしいのはどんなサッカーなのか

 コスタリカの素晴らしさは、戦術ではなく選手ありきということにつきる。連動した守備も、効率的なパス回しも、すべてはFW ブライアン・ルイス、FWジョエル・キャンベル、MFクリスティアン・ボラーニョスのタレント力を活かすためのもの。前線の3選手に個の力があり、それを上手く活用するためにはどうしたらいいのか。ホルヘ・ルイス・ピント監督が出した答えが今大会のコスタリカのスタイルで、かつてはボールをキープしてパスをつなぐサッカーをしていた。ポゼッションサッカーを捨てて挑んだ結果、過去最高となるベスト8までたどりついたのだ。

 オランダもFWアリエン・ロッベン、ファン・ペルシー、スナイデルを活かした速く攻め切るサッカーにシフトし、ベスト4まで勝ち進むことができた。

 オランダとコスタリカが示してくれているように、日本の選手のいいところを活かすサッカーが、日本らしいサッカーということになる。どの選手をどう組み合わせるかによって、どういうサッカーをするかは変わってくる。つまり、日本らしさは不変ではないのだ。日本らしいサッカーが一人歩きしてしまっているのが残念でならない。

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