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いつか再びC大阪で「本当の8番を付けられる選手に」。柿谷が背番号14に立てた誓い

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 4歳のときから在籍してきたセレッソ大阪への強い思いは、移籍会見でも垣間見えた。それまで、淀みなく質疑に応じていたMF柿谷曜一朗だったが、15日のセレモニー前に、サポーターへ向けたメッセージを求められると、言葉に詰まった。そして「C大阪でタイトルを獲ってから行くっていうふうに言っていたので。そこは、すごく申し訳ないなという気持ちがあります」と、絞り出した。

 18年近くを過ごしてきたクラブで、最も幸せだった瞬間に「このチームで8番を付けてプレーできるって決まったとき」を挙げた柿谷だが、今季は、その背番号に見合ったパフォーマンスができていないと感じていた。ACLでは8試合に出場して4ゴールを挙げていたが、Jリーグでは13試合で1得点と不振を極めた。

「この半年間、チームとして良い成績が残せなかったですし、個人としても、すごく厳しいシーズンでした。まだまだ弱いなというか、セレッソで中心になって、絶対的な存在になってというのは、自分には、まだまだ早いのかなというふうに思いました。この半年間、すごく楽しかったですけど、本当にいろんなW杯のことがあったり、いろんな注目のされ方をした中で、自分に勝てなかったことが悔しかった。だからこそ、(欧州で経験を積み)自分が尊敬している人たちの良い所を全部、取り入れることができたら、またこのチームで、本当の8番を付けられる選手になれるんじゃないかと思う。そういう意味で海外挑戦は、自分にとって、かなり大きな出来事だと思いますし、自分は成功するとしか思っていないです。サッカーだけじゃなく、すべてにおいて、成功するイメージだけ持っています」

 欧州での成功。その一つが、ビッグクラブへの移籍だろう。イングランド、ドイツ、スペイン、イタリアに比べれば、スイス・スーパーリーグはマイナーなリーグだ。実際、バーゼルも柿谷に対して「ステップアップしてほしい。そのために全力でサポートする」と、言われているという。だが、柿谷は「どこかに移籍するために活躍するというふうに自分で考えて挑むと失礼なので。まずはバーゼルでの6連覇に向けて、しっかりチームのためにプレーできればいいかなと思います」と、足元を見つめ続ける。

 自身が数か月後に立つであろう欧州CLの舞台についても、「欧州CLというのは、今まではテレビで見たりっていう世界だったので。あまり、まだ実感がない」と言い、「本当に対戦したいチームもなければ、選手もいない。バーゼルの一員として、そういう大会に出られる。そこで自分がしっかり活躍するというイメージだけを持っていればいいと思うので。どこと対戦したいとかは、あまりないです」と、続ける。つまり、現時点で柿谷にとって、本当に大事なのは、バーゼルで活躍すること、そして、C大阪で8番を付けられるにふさわしい選手になることなのだ。

 それだけ、C大阪の8番にこだわりのある柿谷は、バーゼルで14番を付ける。「チームに指定された番号ですが、バーゼルにとって14番は、C大阪の8番のような番号だと聞いています」と言う柿谷は、もう一つ、特別な決意を背番号に込めていた。「ちょうど8番と20番を足して、2で割った数字なんですよね。だから、『ラッキー』と思いました。この番号のように、森島(寛晃)さんと、アキさん(西澤明訓)を足して、2で割ったような選手を目指します」。

(取材・文 河合拓)

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