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[総体]ユース取材ライター陣が推薦する「全国総体一押し選手」vol.1:京都橘GK矢田貝壮貴(1年)

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平成26年度全国高校総体「煌(きら)めく青春 南関東総体2014」サッカー競技
特集企画「ユース取材ライター陣が推薦する『全国総体一押し選手』」
第1回:文・森田将義


 本来ならば、注目選手11人の中から、「総体No.1」と思える選手を選ぶ挙げるべきかもしれない。しかし、彼の場合は「本当にNo.1?」と尋ねられると正直、悩む所である。ただ、粗削りながらも、将来性を含めた“面白さ”は大会でもトップクラス。1年生ならばNo.1と自信を持って言えるのが京都橘高(京都)のGK矢田貝壮貴だ。

 一昨年度は準優勝、昨年度はベスト4と高校選手権で輝かしい成績を残した京都橘の原動力となっていたのが、現・熊本のGK永井建成だ。ハイボールの強さと野性的な勘の鋭さを活かしたセービングでゴールマウスに鍵をかけた男が卒業した穴は、新生・京都橘における懸案事項の一つだった。

 そこに収まったのが、1年生の矢田貝だった。中学時に所属していたFC平野(大阪市)の練習を見学した米澤一成監督の目に留まり、京都橘高の練習会に参加。そして「先輩がとても優しくて、GKコーチもいて、本当に楽しかった。ここなら自分の夢だった全国制覇も叶えられると思った」と門を叩いた。

 武器は1対1の強さとキック精度の高さ。そして、決定機を防ぐと「的がデカいんで、止めて当然」と米澤監督からイジられる程の恰幅の良さ。182cm、79kgという図体はとてもルーキーとは思えぬ雰囲気を醸し出している。それでいて、「あまり筋トレはしていない」というから驚きだ。もちろん、不安も多いが、将来性も買われ、入学前の3月から定位置を掴むと、名古屋U18や、札幌U-18、前橋育英高ら名立たる強豪が参加したマリノスカップで優勝し、幸先の良いスタートを切った。

 ただ、4月から始まった高円宮杯プレミアリーグWESTで待ち受けていたのは散々たる結果だった。「自分が触って入ったので悔しかった」と振り返る失点で開幕の東山高戦を落とすと、以降は5試合で13失点を喫して勝ち星が奪えず。「負けるのは自分の失点のせいと、落ち込んでいた」。

 そんな彼の転機となったのが永井の存在だった。5月に京都橘を訪れた永井は肩を落とす矢田貝に対し、「自分がミスして失点してしまっても、『味方が取り返してくれる』って思っていれば、試合は絶対に勝てる。信じないとあかん。ちゃんと味方を信じろ」と声をかけたという。入学の決め手にもなった先代の言葉に「心が軽くなった」という。

 迎えた総体京都府予選の初陣となったベスト16の桂高戦で入学後初めて、完封を達成すると、その後も見事なシュートストップを見せて優勝に貢献。「入る前は1年生がキーパーというのは不安があるので、嫌やった」という主将DF林大樹が「今は不安をまったく感じさせない存在感を出してくれている。建成くんも凄かったけど、あいつも1年であの存在感は凄い」と評したように、京都橘の最後尾が板についてきた。

 永井と矢田貝には奇しくも街クラブチームから京都橘に入学し、1年生の頃から出場機会を掴んだという共通項がある。この後、矢田貝も全国大会での活躍、プロ入りと進めるだろうか。物語の1ページ目となる総体での活躍に期待したい。

(取材・文 森田将義)

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