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[総体]ユース取材ライター陣が推薦する「全国総体一押し選手」vol.4:東福岡MF増山朝陽(3年)

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平成26年度全国高校総体「煌(きら)めく青春 南関東総体2014」サッカー競技
特集企画「ユース取材ライター陣が推薦する『全国総体一押し選手』」
第4回:文・安藤隆人


 優勝候補の東福岡高。『赤い彗星』の右サイドはMF増山朝陽にとって『聖域』となりつつある。ボールを受けると、低い重心から繰り出される、爆発的な加速力とキレで、一気にバイタルエリアを切り込んでいく。

 特筆すべきは人並み外れたフィジカルとボディーバランスだ。父親は日本人で、母親はスペイン人系フィリピン人。ハーフである彼は、その身体に確かな技術と、爆発的な運動神経を持ち合わせている。そして、ピッチに立った時の雰囲気もまた、彼のポテンシャルの高さを表す指標ともある。

 少し話がそれるが、選手が持つ『雰囲気』は重要だ。「何かやってくれそうだな」、「もっと見てみたいな」と思わせてくれるのは、プレーとピッチ上での佇まいが大きく反映される。こういう雰囲気を持った選手が少ない中、彼はそれを持つ稀有な存在と言える。

 増山は今年になってレギュラーを掴んだ、『遅咲きの花』だった。だが、決して能力が足りなかったわけではない。一昨年の岐阜国体では、彼のドリブルは特別の存在感を放ち、福岡県選抜の準優勝に貢献。5試合で18得点をたたき出すなど破壊力を見せた攻撃をけん引するなど、高い能力を持っていることは間違いなかった。しかし、選手層の分厚い東福岡において、昨年は数年に1度と言える3年生のタレントが揃った年。能力の高い彼と言えども、なかなかレギュラーに食い込むことが出来なった。

「自分の武器にばかり頼りすぎて、がむしゃらさが足りなかった。もっと球際を激しくいったり、何が何でも突破するといった気迫が足りないと感じた。だからこそ、今年はそれを前面に出していきたいと思っているし、今年のチームにおいて、攻撃のリズムを壊すのも自分だし、いいリズムを作るのも自分。その中で良いプレーをすることが大事だと思っている」。

 ピッチ上での雰囲気は、まさしくこの意気込みの表れだった。常にタイミングを狙っていて、その隙を見逃すことなく、身体能力の高さを生かしたプレーを発揮する。野生のライオンのように、虎視眈々と、そして迫力と躍動感を解き放つ。高校3年生となった以上、単に「レギュラーを獲得しました」だけでは意味がない。『違い』を生み出す選手になるために。彼は強い決意の下にピッチに立っている。

 そんな彼にプロや有力大学も注目するようになった。あるJクラブのスカウトは彼をこう評す。「まだ無名だけど、間違いなくプロでやれる能力を持っている。あのタレントはちょっとやそっとでは出てこない」。
 
 高い能力ながら、まだ全国的に無名な稀有な存在である増山朝陽。
「目標はもちろんプロ。将来的には世界でプレーをしたいし、(母親のルーツでもある)スペインでプレーすることに憧れを持っています」。

 山梨インターハイは彼が『全国区』になる最初の大会となるかもしれない。九州最大の都市・福岡から関東の山梨に向けて。全国という大舞台に飢えたライオンは、その牙を研ぎ澄ましている。


執筆者紹介:安藤隆人
 日本列島、世界各国を放浪するサッカージャーナリスト。育成年代を精力的に取材する“ユース教授”。主な著書は『走り続ける才能たち 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、『高校サッカー聖地物語』(講談社)など

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【特設ページ】高校総体2014

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