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W杯開幕戦でのPK判定を語る西村主審「自分に素直に対応した」

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 ブラジルW杯で審判員を務めた西村雄一主審、相樂亨副審、名木利幸副審が24日、都内で記者会見を行った。

 日本の審判団として初めてW杯の開幕戦を担当。西村主審は割り当てが決まったときの心境について「3人で『(開幕戦の割り当てが)あるかもしれないからしっかり準備しよう』と話していた。(割り当てが決まったときは)やっぱり来たなと。すんなりゲームに入っていけた」と振り返った。

 ブラジル対クロアチアの開幕戦では、後半24分にペナルティーエリア内でFWフレッジがDFデヤン・ロブレンに倒されたとしてブラジルにPKを与えた。ロブレンの手がフレッジにかかっていたが、激しいコンタクトではなかったため、クロアチアの選手は猛抗議。試合後も世界中で大きな議論を呼んだ。

 試合翌日、国際サッカー連盟(FIFA)審判団委員長のマッシモ・ブサッカ氏は「接触はあった。それがなければ、議論にもならない。(ロブレンの)左手が触れ、その後、右手も触れた。手を使ったプレーを審判が明確に見れば、判定は一つしかない」と、ホールディングのファウルを取った西村主審の判定を擁護していた。

 この日、記者会見に同席した日本サッカー協会の上川徹審判委員長も「試合翌日、FIFAも判断は的確だったとコメントしている。私も映像を見たが、DFの手は相手競技者の肩口にかかっていたし、正しいものだと思っている」と明言。「W杯に参加する審判団に対して行われるミーティングでは、大会のスタンダードが示され、そこでホールディングの映像も流されている。FIFAは手を不正に使って相手のプレーを妨げることに大きな関心を寄せている」と、ホールディングの反則を厳格に取ることが大会のスタンダードであったことも明らかにし、「我々もFIFAも、彼の判定は正しかったと思っている」と重ねて強調した。

 西村主審も自身の判定について言及。「いろんな立場の方がいるので、それぞれの考え方を尊重する」と前置きしたうえで、「パスを受けたアタッカー(フレッジ)はそのままワンステップでシュートを打ちたかったのだと思う。しかし、DFの選手(ロブレン)は(フレッジが)キープするのだろうと思って、手をかけたというのが実際に起きたこと。シュートを打たれると思っていたら、DFも手をかけなかったはず」と指摘した。

「読みの差がそこに出た。目の前で起きた現実をルールに照らし合わせると、ホールディングによって、その選手(フレッジ)はシュートを打つことができなかった。私は、的確なポジションから見えたものに正直に対応することを大事にしている。自分に素直に対応させてもらった」

 試合後に移動したリオデジャネイロの空港では、クロアチアのサポーターと遭遇し、周囲を取り囲まれる事態になった。西村主審は当時の状況について「ボランティアの方が空港でプラカードを持って待ってくれていたのだが、そこに西村、相樂、名木と書いてあって、簡単に認識されてしまった。スーツだとすぐに分かるので、私服で移動するなど対策は取っているのだが……」と説明。「暴力的に危機を感じたということはないが、快く思っていないサポーターもいるので、これは安全に切り抜けないといけないなとは思った。すぐに警備員の方が周りを守ってくれて、もめるにしても最小限で済んで、車に乗ることができた」と振り返った。

 PKの判定を下した場面をめぐっては、西村主審がクロアチアの選手に対して日本語で対応していたとも海外メディアでは報道された。この件についても質問が出たが、「僕は『ホールディングを見た』と英語で話したし、僕が英語でコミュニケーションを取っているのは(副審の)2人も(無線コミュニケーションシステムの)マイクで聞いている」と、報道を否定した。

「選手も必死になっていると、そういうふうに聞こえないということもある。残念な報道だが、そういうことが起こるのもサッカー。それは覚悟しているし、私の中ではそんなに気にしていない。そういうレッテルを張られても、私がピッチの中でやることは変わらない」。そう気丈に語った西村主審は「試合後にも、さまざまな貴重な体験をすることができた。この経験を生かして、日本サッカーの発展に尽力したい」と話していた。

(取材・文 西山紘平)

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