beacon

[総体]父・平岡監督の言葉胸に戦う大津MF平岡「父を胴上げできるように」

このエントリーをはてなブックマークに追加

[8.7 全国高校総体準決勝 大津高 1-0 前橋育英高 韮崎中央公園陸上競技場]

 親子鷹で頂点に立つ。大津高(熊本)の中盤を支えるMF平岡拓己(3年)の父は同校の指揮を執る平岡和徳監督。20年以上に渡って大津を率いてきた平岡監督は公立校である大津から多数のJリーガーを育ててきた一方で、これまで1度も全国大会の決勝を経験していなかった。それが息子が最上級生となった今年、初の決勝進出。昨冬、全国高校選手権で優勝した富山一高(富山)の大塚一朗監督と大塚翔主将に続き、親子で全国の頂点に立つという快挙に王手をかけた。

 父は帝京高(東京)の主将として高校日本一。息子もそれに続こうとしている。この日、ダブルボランチの一角に入った平岡は派手なプレーをする訳ではないものの、シンプルに、テンポのいいパスで攻撃のリズムをつくり出す役割を完遂。「周りに助けられた部分がいっぱいあった」と話しつつも、「自分の中でも意識してテンポよくはたくということはできたかなと思います」と納得の表情を見せた。そしてもうひとつ貢献度が大きかったのは守備面だ。相手の中盤にはU-19日本代表MF鈴木徳真がいた。絶妙なタッチと非常に速い判断でボールを動かしてくる鈴木に苦戦したものの、最後まで決定的な仕事をさせなかったことは自分自身に対する自信にもなった。

「(相手はU-19日本代表だったが)同じ高校生なのでやれないことはないと思っていた。相方の田原とかよくやってくれていた。もっと頑張らないといけないです。(それでも)14番(鈴木)を潰せたことは自信にもなりましたし、ゼロに抑えられたこともボランチとしてよかったと思います」と胸を張った。

 現在は中盤の軸として欠かせない存在となっているが、レギュラーを掴んだのはわずか3か月前。全国高校総体の熊本県予選直前からだ。チーム内では指揮官の息子という事で注目を集めてきたが、怪我もあり、なかなかポジションを奪うことができなかった。ただ、「チームメート、先輩方からもそういう目で見られていたと思うんですけど、認められないと出られないと思っていた」という平岡は「認められる」ため地道に努力を続けてきた。「(大津は)早朝練習があるんで、家が近い分、6時くらいから毎日3年間やってきた」。父よりも早く通学し、課題の守備面に必死に取り組み、「元々1年の時はSBをやっていたんですけど、(平岡監督から)中盤でもっとシンプルに捌くようにしろと」と指摘されて中盤でのボールタッチ、パスを磨くなどひたすら成長を目指してきた。そして3年の夏、努力はようやく花を開かせ、周囲からも「認められる」存在となった。

 この準決勝は1点差。今大会、PK戦での勝利も終了間際の決勝ゴールによる劇的な勝利も経験してきた。決勝にたどり着くまでの道のりは決して簡単ではなかったが、苦しい時に支えになっていた言葉がある。「『苦しい時は前進している』という、先生(父)がいつも言っている言葉なんですけど、苦しい時間帯でもその言葉あったから走れたりした」。父の教えを胸に戦ってきたことが、平岡自身を成長させ、チームの歴史を変える一因にもなった。

 日本一は自身の夢であり、父の夢でもある。「父の夢もずっと全国制覇だったので、その夢が叶うように。自分自身もその夢をずっと見てきたので、父を胴上げできるように精一杯頑張りたいです」。あと1勝を成し遂げるための対戦相手は今大会5試合22得点の強敵・東福岡高。夢を実現するためには困難もあるだろうが、どんなに苦しくても「前進している」という思いを持って最後まで戦い抜く。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
【特設ページ】高校総体2014

TOP