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[総体]親とかわした誓い果たすも歯がゆい思い・・・東福岡MF中島主将、涙の日本一

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[8.8 全国高校総体決勝 大津高1-4(延長)東福岡高 中銀スタジアム]

「より厳しい環境で成長するためにアビスパから東福岡に入って、3年で、キャプテンとして優勝。思い描いた通りに来ている?」。堪えていたのだろう、記者からの質問に対して語り始めた東福岡高(福岡)MF中島賢星主将(3年)は、突然言葉に詰まり、その後は涙で途絶え途絶えになりながらも親への感謝を口にした。「自分は『アビスパを辞める』と言った時に親からも凄い反対されて、でも『自分がキャプテンになって、全国制覇する』って・・・・・・親と約束して・・・、親と一緒にアビスパに頭下げて、東福岡に入れてくれたので親に感謝したいです」

 中島はアビスパ福岡U-15に在籍していた中学時代にフランス1部リーグの名門・ボルドーの練習に参加。また中学生ながら高校年代最高峰のリーグ戦高円宮杯プレミアリーグWESTに福岡U-18の一員として出場し、現在所属する東福岡や富山一高、京都U-18からゴールを決め、年代別日本代表の常連でもあった中島はユースチーム、トップチーム昇格も期待される存在だった。だが「東福岡は選手層が厚い。簡単に試合には出られないし、自分がもっと伸びると思った」と同じ福岡市内の強豪校で部員200名を超える東福岡への進学を決断。育ててくれたJクラブ・福岡への強い思いも抱きつつ、自分の夢のためにより厳しい道を歩むことを選択した。それに一度は反対しながらも理解し、後押ししてくれた家族への感謝はわずかな言葉では表現できないほど大きい。昨年度の選手権直前での怪我、敗退などを乗り越えて迎えた3年目の夏、「自分がキャプテンになって、全国制覇する」約束を実現した。

 ただ、涙は喜びだけではなく、自身の不甲斐なさに対するものでもあった。「きょうは勝ったんですけど、個人的には嬉し涙でも何でもなくて、何もいいプレーができなかったという歯がゆさが凄くあって・・・切り替えて、冬に向かってやっていかないといけないなと思います」と唇を噛んだ。今大会、中島は開催地代表で同じく優勝候補だった山梨学院高との3回戦で勝負を決めるスーパーゴール。大黒柱として得点、アシスト、そして非常に速い判断から展開するゲームメークでチームを決勝へ導き、そのボールコントロール技術で何度も会場を沸かせてきた。

 それでも決勝では警戒して引き気味に守る大津のダブルボランチの前になかなか持ち味を発揮できず、決定的な仕事をすることもできなかった。普段より相手にボールを引っ掛けてしまうシーンが増え、特に0-1の後半はバイタルエリアからドリブル、パス交換から強引に切れ込んでいったがシュートへ持ち込むことができなかった。チームは残り2分にMF赤木翼のゴールで追いつき、延長戦での3発で逆転V。「日本一が目の前にあるのにここ落とすなんてもったいないからな」とチームを鼓舞するなど、強いキャプテンシーでチームを引っ張った中島だが、チームを救うことができなかったという自責の念が頭の中を閉めていた。

 もちろん警戒されていたことは確か。だが中島は「警戒されていて何もできないようじゃダメだと思う。チームがピンチの時に自分が救えなかったということに関してはみんなに申し訳ないです」と力不足であることを口にした。「こういう大舞台になった時に結果を出したり、沸かせたり、感動させたり、そういうプレーヤーにならないといけない。大会始まる前から、大会が終わった時には『誇れる10番になりたい』と思っていた。でもそれはできたのかなと、満足していません」。家族との約束を果たす日本一。ただ自分自身に宿題を課した。「ここぞというときほど、輝ける選手になりたいです」。満足することなく日本一に輝いたJ注目のU-18日本代表MFは、達成感に浸ることなく、また次の目標へ向けて走り出す。

[写真]東福岡の中島主将(左)はこの日の悔しさを糧にまた成長を期す

(取材・文 吉田太郎)
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