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アギーレ新監督、来日会見要旨

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 日本代表のハビエル・アギーレ新監督が11日、来日し、都内のホテルで記者会見を行った。

以下、会見要旨

ハビエル・アギーレ監督
「みなさん、こんにちは。まずはじめに日本サッカー協会の大仁会長、原専務理事に心から御礼申し上げたい。今回、代表監督として声をかけていただいたことをとてもうれしく思っているし、名誉であると思っている。実は南アフリカW杯が終わったときに一度、声をかけてもらった。ただ、そのときは個人的な事情で受けることができなかった。家族の都合というか、私の子供がスペインの大学で学んでいたので、日本に来ることができなかった。そのあとも日本サッカー協会の方といろんな連絡を取っていた。その結果、ブラジルW杯が終わったときに日本サッカー協会から再度、アプローチがあり、合意に至った。そしてここにいるという次第だ。

 日本という素晴らしい国で代表監督をやれること、素晴らしい選手の多い国で代表監督をやれることをうれしく思っているし、2018年のロシアW杯には是非出場したいと思っている。同時にユース世代の選手育成にも関心を持っている。例えば五輪代表など、そういうところにも目を向けながら、代表監督の責任を果たしたい。間近に試合が迫っている。9月5日にウルグアイとの試合が迫っている。チーム全体で練習するには時間が足りないかと思うが、やる気はいっぱいだ。できる限りがんばって試合をしたい」

―選手選考で重視するポイントは? 言葉の面で難しいところがあると思うが?
「将来性のある選手を呼びたいと思っている。代表チームに入ることに意欲的な選手、そして国を背負ってプレーする気持ちを持っている選手を選びたい。選手として、個人ではなく、チームとしてプレーできる選手、そして試合に貢献できる選手を選びたいと思っている。

 言葉ができないことは障害にはならないと思っている。サッカーをする人間にとって、ボールが共通語だと認識している。言葉があまり話せなくても問題ないと思っているし、通訳の力を借りることもある」

―世界のトップの国と日本にはどれぐらいの差があると考えているか?
「トップの国というのはおそらく4か国か5か国だろう。ドイツ、ブラジル、イングランド、スペイン、イタリアなどがそれにあたると思う。日本とどこが違うのかと言えば、タイトルを獲ったことのある国だと言える。例えば、技術的に素晴らしくても、オランダはタイトルがない。日本もおそらくそうだと思う。素晴らしい選手がそろっているからその4、5か国が素晴らしいということではない。世界トップレベルの4か国、5か国との唯一の違いは、タイトルがあるかないか、それだけだと思っている」

―なぜ日本がブラジルW杯で勝てなかったと思うか?
「ブラジルW杯のときは、メキシコのテレビ局の仕事の関係で向こうに行っていたので、日本代表の試合も見た。何が良くなかったのかということだが、私は過去についてコメントするのは好きではない。前監督の内容に何かコメントしてしまったたがゆえに誤解を招くのは嫌なので、コメントは差し控えたい。ただ、私がつくりたいチームについて言えば、とにかく競い合う、切磋琢磨するチームにしたい。対戦相手がどんなライバルであろうと、全力で戦う、そして競い合うチームをつくりたいと思っている」

―日本代表監督のオファーを受けた理由は? 今後の強化ポイントは?
「どこに魅力を感じたかということだが、オファーの内容は真剣で紳士的なものだった。とにかくロシアW杯を目指してがんばりたいというニュアンスのものだったので、自分のプロジェクトとして大きな関心を持った。4年前にも声をかけてもらい、4年後にまた声をかけてもらった。日本サッカー界の方が真剣に考えて自分にオファーを出してくれた。そして非常にプロジェクトの内容も良いと感じて引き受けることを決めた。

 日本のプレー、チームについてコメントするのであれば、非常にメキシコのプレースタイルに似ていると思っている。例えば、ボールの扱い方、試合中のバランスの考え方、とにかく守備に力を入れるということ。自分は守備を固めて勝利を目指したいと思っているし、それを目標にしている。ボールは非常に大事なもので、ボールはどこの試合に行っても選手たちの前にあるもの。ボールを共通語にして、選手の間で競争力を伸ばしていってほしいと考えている」

―アギーレ監督が掲げる今後4年間のテーマをキーワードにすると?
「日本語に訳してスペイン語と同じ意味になるかは分からないが、とにかくコミットしたいと思っている」

―今後、どうやって選手を選んでいくか?
「とにかく自分で実際に見ることを一番に重要視したい。すべての選手にドアは開いていると申し上げたい。日本国内でプレーしている選手、海外でプレーしている選手。すべての選手をとにかく見て、観察して、その選手のプレーを分析したい。試合中だけでなく、試合以外の時間にどのような行動を取るのか。そういうことをすべて含めて見ていきたい。選手選考のプロセスには時間がかかると思う。次の試合にだれかを招集したからといって、その選手たちが長期にわたって呼ばれるということではない。試合を通じて選手の技術、プレーを観察しながら、最終的な自分のチームをつくり上げたい。目前に迫った公式戦は来年1月にオーストラリアで開催されるアジア杯だが、それを見極めながら選手を選んでいきたい」

―理想のDF像は?
「ディフェンスというより、バランスを重視したい。守ることも攻めることもできる、そういったバランスの取れた選手を求めている。攻守両方をこなせる選手が必要だと思っている。ボールを奪うことは大事だが、奪ったボールを的確に扱って上がっていくことも大事だ。守るというのは、守備陣だけの話ではない。FW、MFにも同じことを求めたい。とにかくボールを相手から奪い、その試合で目指していることに貢献する。DF陣の4人から5人だけが守備にあたるとは考えていない。GK、FWも含めて、11人全員が守ることができて、攻めることができるチームを目指している」

―選手に対して厳しく接する監督として知られているが、そのスタイルは変わらないか? ザッケローニ監督のときはザックジャパンと呼ばれていたが、何々ジャパンと呼ばれるなら何がいいか?
「最初の質問については、秩序立って、まじめに取り組んでいきたいと思っている。ネーミングについてはみなさん次第だが、私はサムライブルーというネーミングが気に入っている」

―日本代表ではどういうフォーメーションを考えているか?
「システムは試合の展開によって変化していくものだと思っている。DFが3人、4人のときもあるかもしれないし、5人のときもあるかもしれない。試合の状況に応じて4-3-3から5-2-3に変化することもあるし、他の形に進化することもある。トップを2人から3人にすることもあるだろう。試合の状況に応じてフレキシブルに使っていこうと思っている。基本のベースは4-3-3と考えている。ただ、これも試合の展開によって3-4-3になったりもする。そのときの選手の状況、試合の展開によって変えていきたい」

―日本代表には海外組が多く、日本で試合をするときには移動の負担も大きいが?
「長旅で疲れるということだが、数年前にそのような状況を改善するために、FIFAが同じ週に2試合定めるなどのルールをつくったと思う。選手が試合に合わせて回復する時間はあると考えている。欧州には世界でもトップリーグの国が多い。選手に対する報酬も高い。メキシコの選手も日本の選手もアルゼンチンの選手もブラジルの選手も欧州でプレーしているし、代表に招集されたときは似たような問題がある。ただ、私はそれが障害になるとは思っていない。長旅によって疲れているから試合に負けたとか、選手のコンディションが整っていないとか、そういうことはないと考えている。というのも選手はプロの選手で、(年間に)60試合ぐらいこなしている。自分の体調の整え方、例えば飛行機での移動の時間を利用してどう体調を整えるかなどは、自分でどうすればいいか分かっている。長旅は障害にはならないと思う」

―日本の過去のW杯での最高成績は決勝トーナメント1回戦だが、ロシアW杯でそれ以上に行く可能性は秘めていると思うか?
「日本はロシアW杯に進むポテンシャルを持っていると思う。過去にも何回かW杯本大会まで行っている。日本国内のリーグも非常に良くなっていると思うし、五輪世代について言えば、ロンドン五輪で試合を見たが、非常に優秀な選手がいると思っている。次の五輪代表チームにも(2016年の)リオデジャネイロを目指してがんばってもらいたいと思っている。また、日本代表に関しては、欧州のクラブで非常に良い仕事をしている選手たちがいる。そういうこともあり、次のロシアW杯を目指すというのは自分にとって価値のあるプロジェクトだと思って、仕事を引き受けた。日本の選手たちは非常に真剣で、非常にいい選手がそろっていると思っている」

―日本の印象は?
「日本に初めて来たのは1996年で、メキシコのチームを率いて来日した。そのときは親善試合を2試合行い、横浜、鹿島と対戦した。次に来日したのは2002年の日韓W杯で、そのときには約40日間、日本に滞在した。今回、妻と息子を日本に連れてきた。東京に住むつもりだ。まずできるだけ数多くのJリーグの試合を見たいと思っている。日本の文化については、メキシコもスペインも日本から離れているが、日本の情報はかなり入ってきている。今回、来日するにあたって、日本がどのような国か、どのような習慣があるのか、そういうことに関して書いてあるものをたくさん読んできた。自分の職業はサッカーなので、サッカーが一番だが、それ以外の文化的なものも妻や息子といろいろ試してみたいと思っている。我々は日本に長く住むことを望んでいるし、楽しみにしている」

―監督としての哲学は? 日本で試してみたいことが具体的にあれば?
「サッカーの哲学に関しては非常にシンプルだと思う。とにかくたくさん走る、いいプレーをする、そして勝利をおさめる。これに尽きると思う。それが私の哲学。チームに望むのは、自分たちは国を代表して、国を背負って戦っていることを常に肝に銘じてもらいたいということ。私は過去に選手としてW杯にも出場しているし、監督としても関わったが、代表チームの一員というのは、各自が責任を持って自分の責務を果たす。それが一番重要なことだと思う。

 プライベートなことについては、私もそうだが、妻も息子も旅行が好きなので、いろんな人に会いたいし、いろんな場所を訪れてみたいと思っている。日常的に街に出て、いろんな人と交流したい。日本は何千年という歴史を持っている国だが、日本の情報は欧州ではあまり知られていない。一般人としていろんな人たちと交流し、この国の知識を増やしていきたい」

―サッカー界で見れば日本はまだ若い国だが、そういう国をW杯に連れて行くことは新しい挑戦になるか? スペインのクラブで指揮を執ることはもうないのか?
「今回、日本の代表監督を引き受けたことは私のキャリアの中で非常に大きなチャレンジであると考えている。人間は日々、いろんなことを学んでいくということで、自分もがんばっていきたい。実は今回、スペインリーグのクラブチームからもオファーがあったし、他の国の代表チームからのオファーもあった。その中で日本を選んだのは、2010年の南アフリカW杯のときに原さんと霜田さんが声をかけてくれたこと。今回、再度オファーをくれたこと。そして自分が(4年前に)断ったあとも、自分の仕事を見てくれていたこと。そういうことに引かれて、日本代表監督を引き受けることを決心した。

 スペインリーグで指揮を執るかどうかについては、先のことは分からないとしか言いようがない。以前、スペインのチームを率いたときは、1、2年かなと思っていたが、結局、12年になった。明日のことは分からない。ただ、今の段階で確実に言えるのは、ロシアW杯を目指してがんばりたいということ。そこを目標にしているということを言いたい」

―若手に関心を持っているということだが、10代の選手で見てみたい選手がいる場合、ユース代表の活動と重なったときにはどちらを優先するのか?
「私の方針としては、とにかく公式戦を一番に考えている。親善試合よりも公式戦に出場させることを考えている。例えば、五輪代表とA代表の公式戦がたまたま同じ日になった場合は、A代表に若い選手を呼ぶかもしれない。ただ、親善試合と公式戦で日程が重なった場合は、公式戦を優先させたいと思っている。こういったものは五輪など、いろんな大会につながっていくからだ」

(取材・文 西山紘平)

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