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[SBS杯]危機感募らせるU-19日本代表は静岡ユースに薄氷のPK戦勝利・・・優勝の可能性消滅

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[8.15 SBS杯第2戦 U-19代表 1-1(PK4-2)静岡ユース 愛鷹広域公園多目的競技場]

 「2014 SBS杯国際ユースサッカー大会」は大会2日目の15日、U-19日本代表と静岡ユース(U-18静岡県選抜)が激突。1-1でもつれ込んだPK戦の末、U-19代表が4-2で勝利した。U-19代表は1勝1敗としたが、勝ち点はPK戦白星による2のみ。この日、U-19コロンビア代表が2-1でU-19韓国代表を下して2連勝、勝ち点6としたため、U-19日本代表の優勝の可能性はなくなった。U-19日本代表は17日の最終戦でU-19韓国代表と戦う。

 10月に開幕する15年U-20W杯アジア最終予選、AFC U-19選手権ミャンマー2014へ向けて不安の残る試合となった。試合後の記者会見でU-19日本代表の鈴木政一監督は「きょうは何もないです。最悪です。組み合わせも新しいメンバーもあった中で、ゲーム前から心配はしていたんですけど、案の定全体の流れの中で攻撃では相手の状況を見ずに味方も見ずに重なってしまったり、同サイドを攻めてしまったり。ボールを動かして、という(自分たちの)サッカーが全くやれない状態」とバッサリ。ビッグチャンスをつくりながら1得点に終わった前半、そしてメンバー交代後リズムに乗れないままミスから同点に追いつかれた後半、そして1~2学年下の年代の静岡相手にPK戦で何とか勝利と、U-19代表にとっては実りの少ない試合となってしまった。

 U-19代表は0-1で敗れたコロンビア戦から先発6人をチェンジ。4-2-3-1システムのGKは吉丸絢梓、4バックは右から藤谷壮内山裕貴三浦弦太内田裕斗で中盤は川辺駿鈴木徳真のダブルボランチ。右が高木大輔、左が坂井大将、トップ下が表原玄太で1トップには越智大和が入った。一方、前日の韓国戦を3-2で制している静岡ユースはGKが似鳥康太で4バックは右から石渡旭越水旋太松原后袴田裕太郎の並び。森主麗司河上将平が中盤の底の位置に入り、右が大石竜平、左が名古新太郎、トップ下に水谷拓磨、1トップは小谷春日が務めた。

 序盤からボールを握り、左右に動かして穴を探るU-19代表に対し、静岡は前線から積極的にプレッシャーをかけ、小谷や大石のスペースへの飛び出しを活かして攻め返す。ただ、静岡はU-19代表のプレスの前に慌てて蹴ってミスするようなシーンの連続だった。PAでの攻防が少なく、大きな動きがないまま時間が進んだが、前半半ばを過ぎるとU-19代表がギアチェンジ。中盤で別格のプレーを見せる川辺がDFを剥がしてからスルーパスを連発し、決定機をつくり出した。

 22分、川辺のスルーパスから表原が抜け出すと、24分には中央から左前方へ仕掛けた川辺のスルーパスから越智が左足で先制点をねじ込む。先制したU-19代表はこの後、大きな展開で静岡を揺さぶり、鈴木の右足ミドルなどで2点目を狙っていく。静岡も大石のFKに松原が飛び込み、河上のミドルシュートなどで反撃。だが試合を支配したU-19代表は40分にも川辺のスルーパスからPAで切り返した越智が決定的な左足シュートを放ち、アディショナルタイム突入後の41分には左CKから三浦が惜しいヘディングシュートを放つ。ただ似鳥の好セーブや体を張ってブロックする松原ら静岡の集中した守りの前に追加点を上げることができなかった。

 U-19代表は後半開始から三浦、内田、川辺、坂井、越智に代えてCB中谷進之介、右SB石田崚真、MF大山啓輔、左MF汰木康也、FW諸岡佑輔を投入。静岡も右SB塩谷仁、MF上原力也、左MF西澤健太をピッチへ送り出す。立ち上がりから仕掛けたのは静岡。中盤でキープ力を発揮した上原や水谷を軸に大石や西澤の攻撃力を活用したサイドアタックでU-19代表ゴールを脅かす。

 対するU-19代表は9分、左サイドから切れ込んだ汰木のラストパスを表原が叩くがGKがキャッチ。カウンターから高木が右足シュートへ持ち込むシーンがあり、ボールも支配して攻めてはいたが、攻撃はどこか後ろに重く、ダイナミックな崩しや個で脅威となる選手は見られず。静岡に違いを見せることができないでいると、24分に自陣でのミスからボールを失い、直前に投入されていた静岡MF望月大の個人技にゴールを破られてしまった。

 U-19代表はたまらずMF金子翔太を投入し、金子を起点に攻めたが、26分にPAへ飛び込んだ表原は松原の好守に阻まれ、29分に金子のスルーパスに高木が反応したが、わずかに届かない。また右サイドで長い距離を走るSB石田へ何度かボールが入ったが、ゴールに結びつくことはなかった。5,326人の観衆はディフェンスラインの背後を鋭く突く地元静岡の攻撃により沸いていた。32分にMF宮本航汰も投入した静岡は終盤、松原を中心とした守り、上原を軸とした攻撃で渡り合って1-1で試合終了。PK戦でU-19代表は吉丸が静岡2人目の塩谷のシュートをストップしたが、3人目の鈴木のシュートが似鳥に止められてしまう。ただ2-2から4人目の望月が外した静岡に対し、U-19代表は中谷、大山が決めて4-2で勝利。一瞬笑顔もこぼれたU-19代表だったが、内容の悪さに試合後は厳しい表情を見せている選手が多かった。

 主将の三浦は「チームとして共通意識であったり、いいリズムでサッカーをすることが前半も後半もできていなかった。昨日の反省を活かしてもっと内容のいいサッカーをしたかったんですけど、きょうは結果も引き分けで優勝もなくなってしまったし、内容も改善したかったんですけど、そこもできていなかったことは一番の課題だと思います」と語り、川辺は「今のままだったら全然ダメだと思う。それを何人が思っているか分からないですけど、言われて気付くんじゃなくて、一人ひとり意識高くやらないといけない。練習もそうですけど、日ごろ自分のチームで19歳で出れていない選手多いですけど、自分のチームの練習で危機感持ってやっていかないと最終予選でまた負けるなと思います」と危機感を募らせていた。4大会ぶりとなるU-20W杯切符を懸けた本番まで残り2か月。今大会、FW南野拓実やMF松本昌也ら主力候補の数人がいないことは確かだが、今大会の試合内容、チームの雰囲気も決してよくはない。普段Jリーグで出場機会の少ない選手たち、そしてU-19代表はここから危機感をもって変わることができるか。

[写真]前半24分、U-19代表は越智が先制ゴール

(取材・文 吉田太郎)

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