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[特別インタビュー]神戸DF岩波「A代表の選手として五輪に出る」

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 ユース年代からポテンシャルの高さを示していたヴィッセル神戸DF岩波拓也は、昨季J2を経験したことでプレーヤーとしての幅を広げたと語り、クラブがJ1に復帰した今季もレギュラーとして最終ラインに君臨している。そして、15歳から各年代の日本代表に名を連ね、日の丸を背負い続けきた20歳の若武者は、16年に開催されるリオデジャネイロ五輪の先の2018 FIFA ワールドカップ ロシアを見据えていると話した。

――昨季、J2を経験し、1年間レギュラーを張ったことで自身の中にも変化があったと思います。
「1年間、試合に出続けることで『慣れ』ができました。J2にはいろいろなスタジアムがありましたが、どんな環境、ピッチ状況でも自分のプレーができるようになったと思います。また、週末に試合をして、体を休めて、またコンディションを上げていくという1週間のサイクルにも慣れました。試合に出場できないと、練習試合がある週とない週があるので、練習試合がない週には試合勘が鈍ったりします。ユースでずっと試合に出ていた分、プロになって試合に出られない時期のコンディション調整は難しいと感じていましたが、昨季、試合に出続けることでその感覚を取り戻せたのは大きかったし、その経験は今季のJ1でも生かせていると思います」

――プレー面での変化はありましたか。
「1年を通してピッチに立ったことで、自分の通用する部分と課題とする部分が分かりました。僕は体が結構細くて、体の強さの部分や1対1で負けることが多く、対人の部分は課題に感じていました。どうやって克服しようかと考えているときにケガをしてしまったのですが、リハビリの中でいろいろなトレーニングをこなして体重が7キロくらい増えたんです。最初は体が動かなくてちょっとやりづらいと感じる部分もありましたが、今は相手と体がぶつかり合っても簡単に当たり負けしなくなったので、チームに迷惑を掛けましたがケガをしたこともプラスだったと捉えています」

――逆に通用すると感じた部分は?
「空中戦や最終ラインからつないでいく部分は自分の中で手応えを感じました。特に空中戦は、今季J1の外国籍選手相手にも通用していると感じるので自信にもつながっていますし、その土台はJ2で1年間プレーすることで身に付いたと思います。空中戦で負けないために一番大事なことですか? それは競る相手の特長によりますね。走ってきて競るのが得意な選手には走らせないようにしますし、ジャンプ力のある選手には飛ぶタイミングを遅らせようとしたり、相手によって対応の仕方や競り方を変えています。それは自分でJリーグをテレビで見てFWの選手の特長を頭に入れようとしていますし、スカウティングからも相手の情報を教えてもらえるので、それを試合で生かすようにしています」

――地上戦で1対1になったときには相手FWのどういう部分を見て、対応しようとしていますか。
「相手が先に動かないとDFは動けませんが、相手の動きについていこうとすると守りづらくなるので、僕は相手の動きよりもボールの動きを見て対応しようとしています。どうしても相手の方がスピードに乗っている状況が多いので、タッチミスやドリブルが大きくなったときなどを見逃さずにボールを奪おうとしていますね。1対1の対応も、J2を経験したことで成長できました。J2にも強い選手、速い選手、足下がうまい選手とタイプの違う選手がたくさんいて、さまざまなタイプの選手と対戦したことで僕自身のプレーの幅が広がったと感じます」

――DFの醍醐味を感じる瞬間を教えてください。
「サッカーにあまり詳しくない観客の方が見てもスタジアムが沸くようなプレー、空中戦で相手選手に勝ったり、チームの危機を救うシュートブロックを見せられたときですかね。僕はキックの精度も持ち味にしているし、前線に上がってシュートを打つことも得意だったので、中学や高校のときは攻撃的なポジションをやりたい気持ちもありましたが、プロになってからはそう感じなくなるくらい、DFの面白さを感じています。自分のゴールを守るという意味で、ものすごいやりがいを感じていますね」

――ただ、現在のポジションでもキックの精度は生かせていると思います。
「もちろん生かせていますが、あくまで僕はDFです。キック精度以上に無失点で試合を終える、代表クラスのFWをどれだけ抑えられるかという部分に比重を置いています。もちろんカウンターのチャンスだと感じれば、一気に前線の選手へパスを送ることもありますが、フィードは周りの選手が出せますので、無理せずに一度チームメイトに預けることを意識して、自分は守備に回ったときのことを考えるようにしています」

――今やクラブの最終ラインに欠かせない選手へと成長し、コーチングの意識も高まっているのでは?
「U-21日本代表ではコーチングも意識してやっていますが、クラブでは経験のある隣のCBの選手が指示を出してくれるので、自分は自分のプレーに集中しています。ただ監督から、『もっと声を出せ』と言われているんです。クラブでプレーしても、代表でプレーしても意識は変わらないのですが、代表に比べると声を出す回数が少ないのかもしれません」

――世代別代表の方が『俺が先頭で』という意識が強くなるのでしょうか。
「クラブでももちろんその気持ちはありますが、甘えてしまうというか…。もちろんプレーが変わることはありませんし、声を出そうともしていますが、U-17日本代表のときにキャプテンを任されていたこともあり、どちらかと言われれば、世代別代表の方がよりチームを引っ張らないといけない気持ちがあるのかもしれません」

――U-21日本代表候補合宿に参加して、チームの雰囲気はいかがでしたか。
「クラブとは違った雰囲気があって、すごく楽しかったですね。まだ、お互いの特長を把握している部分がありますが、今は個人のアピールよりもチームとしてどう良くなっていくかが大事だと思っています。手倉森誠監督が考えるチームコンセプトの理解を深めて、チームとして成長していかないといけませんが、少しずつではありますが成熟しようとしているのは感じます」

――手倉森監督の印象を教えてください。
「まだ監督に就任されて、それほど時間は経っていませんが、代表に対する強い気持ちをヒシヒシと感じています。リオ五輪の監督を任されている以上、前回大会のベスト4という成績を超えなければならないこと、アジア大会でも優勝しなければならないことをチームに伝えている部分があります。僕たち選手もそれは強く思っていますし、チームとしての本気度はものすごく高くなっていると感じます」

――4年前のアジア大会では関塚隆監督率いるチームが優勝しています。
「前回大会のチームがアジア大会でベスト4で終わっていれば僕たちは決勝進出しただけで、もしかしたら心の隙が出きてしまうかも知れませんし、それは五輪でも同じことが言えます。もしロンドン五輪がベスト8で終わっていれば、僕たちはベスト4に進出すれば満足する気持ちが出てきてしまうかも知れません。そういった意味でも、前の世代のチームがアジア大会で優勝し、五輪でもベスト4まで進出してくれたことは刺激になるし、僕たちの目標は前回大会以上しかないので、それはそれで良いことだとプラスに捉えています」

――岩波選手にとって、日の丸を背負う意味は?
「今まで偉大な選手たちが袖を通してきたユニフォームを、僕も着れるというのは誇りに思っています。価値観は人それぞれだと思いますが、僕にとっては代表のユニフォームを着てプレーする以上に大きなことはありません。ただ代表はいつ誰が外れてもおかしくないし、いつ誰が入ってもおかしくない場所なので常に危機感を持っています。自分が手倉森監督の代表にずっと残れるかと言われたら、そんなことは絶対にないし、もし残れると思ってしまったら自分の成長は止まってしまう。僕が15歳の頃、U-15日本代表を率いていた吉武博文監督から『代表には指定席はない』と言われた言葉がずっと頭に残っているので、代表に生き残るためにも、クラブで毎試合良いプレーを見せられるように意識しています」

――11年のU-17W杯ではキャプテンを務めましたが、U-21日本代表でもキャプテンマークを巻きたい気持ちはありますか。
「代表を引っ張るという気持ちはありますし、U-17日本代表でその立場を経験した以上、キャプテンマークを巻きたい気持ちは当然あります。ただ、次の五輪で僕が巻ければ良いなとは思いますが、それ以上にまずは代表に選ばれることを考えないといけないし、代表に選ばれるために努力し続ける必要があります」

――五輪は自分の中で、どういう位置付けにしていますか。
「僕はFIFA ワールドカップ ロシア出場を目指しているので、その途中にあるアジア大会とリオ五輪では良い結果を残さないといけないと思っています。4年後に向けて、U-21代表は日本を代表するチームにならないといけないし、個人的にもそういう選手にならないといけません。だからこそ、A代表の選手として五輪に出場し、もちろんその先にあるFIFA ワールドカップ ロシアにも出場できればと考えています」

――最後にスパイクへのこだわりを教えてください。
「実は派手な色のスパイクが好きなんですよ。僕は目立ちたがり屋なので。でも以前、派手なスパイクを履いていたらコーチからメチャクチャ怒られまして…。『CBが派手な色のスパイクを履いていたら、相手FWの視野に入りやすくなる。どこにいるのか分かりやすくしてどうする!!』と言われたんです。そういうこともあったので、今では落ち着いた色のスパイクの方がいいと感じています。プレデターはワールドカップ仕様の白黒が好みでしたが、新しい赤黒もいい感じですよね。常に新しいスパイクを履いていたい気持ちがあるので、最新の物を履けるのはうれしいです」

(取材・文 折戸岳彦)

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