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選手権東京予選組み合わせ決定直後の強豪対決、成立学園が関東一に逆転勝ち

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[8.31 T1リーグ第14節 関東一高 2-3 成立学園高 新小岩私学事業団総合運動場]

 8月31日、高円宮杯U-18サッカーリーグ2014東京(通称「東京Tリーグ」)1部第14節の関東一高成立学園高が行われ、成立学園が3-2で逆転勝ちした。

 前日30日に全国高校サッカー選手権東京都予選の組み合わせが決まったばかり。全国高校総体に出場した成立学園は関東大会優勝の駒場高や昨年度の選手権出場校である國學院久我山高、実践学園高、帝京高などと同じBブロックで、関東一はAブロックで総体予選優勝の駒澤大高や昨年度全国8強の修徳高、国士舘高などと優勝を争うことになった。秋・そして冬への思い新たにこの一戦に臨んだ両校の戦いは、成立学園が制した。

 前半、関東一が2点を先取する。まずは17分、MF尾山直己(3年)の縦パスでディフェンスラインと入れ替わるように飛び出したMF万代勇輝(3年)がGKに倒されてPKを獲得。これを万代がGKにコースを読まれながらも右足でねじ込んでリードを奪う。直後には右タッチライン際からダイアゴナルに走ったSB二瓶亮(2年)に万代からのスルーパスが通る。成立学園のSBにプレッシャーをかけて思うようなポゼッションをさせなかった関東一は35分、左CK後の混戦からMF鈴木隼平(2年)が頭でゴールへ沈めて2-0とした。

 関東一の小野貴裕監督は「(きょうの試合前に選手権初戦が行われる)10月に向けてという話をしました。自分の持っているものを9月中にどんどん出していかないと、10月になった時に(2回戦から登場する)シードの自分たちに対して、相手は一回気持ちを出しきって上がってくる。今は勝つことも、勝つために何をやるか、ということももちろんなんですけど、毎試合毎試合気持ちを全部出し切らせてギリギリのゲームをこなしておかないと、相手がグッとかかってくるときに喧嘩できなかったり、『こんな感じじゃなかったのに』となってしまう」。前半はその気迫が見えた関東一。だが、失点後に気持ちの面が落ちてしまうなど、精神面のタフさという点では課題の残る試合となってしまう。

 対して、全国総体の初戦敗退から自分たちのサッカーを見つめ直してきたという成立学園は2点を先行されたものの、ポゼッションスタイルの攻撃を変えないまま、前線からの守備をギアチェンジ。主将のFW上村諒斗(3年)が「以前は点取られてから引いてしまうところがあったんですけど、点取られたとしても、そこからプレッシング掛けて前から取りに行くように変えた。きょうも先に点を取られたんですけど、前半の最後の方、前からプレッシングに行って流れを変えて点も取れたんで良かった」という成立学園は積極的な守備によって自分たちで流れを引き戻すと、42分にエースMF上田悠起(3年)が鮮烈な左足ミドルを叩き込んで1点差とする。さらに45分、右サイドを駆け上がったSB吉田将也(3年)がゴールライン際から素晴らしいクロスを入れると、「相手の嫌なところへ入ることができた」という上田が頭でゴールへ叩き込んで同点に追いついた。

 さらにたたみ掛ける成立学園は後半8分、上田の左CKのこぼれ球をCB内田悠磨(3年)が鮮やかな右足ボレーでゴールへ突き刺して逆転。意気消沈してしまった関東一に対し、成立学園はFW町田ブライト(3年)が相手DFを置き去りにするスピードを披露し、MF守屋怜治やMF柴田知樹(ともに3年)が献身的に動いてボールに絡み続ける。そして30分過ぎには上田が立て続けに右足シュートが放ち、CKのこぼれ球を上村が狙うなど試合の流れを掴んだまま終盤へ持ち込む。関東一も前線でキレのある動きを見せたFW角口大征主将(3年)や左サイドを打開するSB阿部凌雅(3年)の攻撃参加などで反撃。終盤は勢いを取り戻してサイドアタックを繰り返すと、40分には交代出場のFW小笠原翔紀(3年)が左サイドを抜け出してPAへ侵入する。だが、DFをかわしてゴール至近距離から放った右足シュートはGK八木優樹(3年)が反応良くストップ。終盤の勢いを得点に結びつけることができなかった。

 成立学園は全国総体初戦で高川学園高に0-1で敗戦。昨年は近大附高に0-5と力の差を見せつけられたが、今年の敗戦の理由は違う。緊張で足が動かず、先制されて焦り、自分たちのサッカーができないまま敗れてしまった。太田昌宏監督は「やり切って0-1で負けたら納得もできるけれど。緊張で驚くほど動けなかった。あれだけ攻撃できないとは。ああいうところでできるチームにならないといけない」と無念さを滲ませる。その後、夏は自分たちの力を常に発揮し、勝負にこだわることを意識してやってきた。上村は「インハイで(高川学園に)負けて、実際あの試合は何もできなくて、その後の遠征やフェスティバルでは『勝ちにこだわる』という部分をテーマに、点を決められた状態から2点、3点取るということを意識してやってきた。きょうの試合はそういうメンタルの部分で相手より上回ったと思う。インハイ終わって勝ちにこだわるという部分をやってきて最近勝てるようになってきたし、練習から『意識変えてやろう』と言っているのできょうも0-2からひっくり返せたと思う」と胸を張った。

 そして選手権へ向けて上田は「自分たちのサッカーができれば負けることはないと思う。でも自分たちのサッカーができなった時にいつものプレーに近いプレーができるかが勝負。いい時にいいプレーできるのはふつうだと思う。いかにできない時に流れを持ってこれるか」と語り、上村は「自分たちのサッカーをして勝って、全国大会に出たら、今年のインハイで出来なかった部分、自分たちのサッカーをやり通すことだったり、前からのプレッシングとか、練習で見つめ直してきた部分を全員で意思統一して発揮して、勝ち上がって日本一を目指したいです」。5-1で堀越高を下した8月28日の試合に続いてリーグ戦では2試合連続逆転勝ち。夏の悔しさを持ち続けて選手権にぶつける。

[写真]成立学園は内田(左)の決勝点で関東一を破った

(取材・文 吉田太郎)

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