beacon

アジアの頂点目指すU-21代表MF矢島「自分の力を証明する」

このエントリーをはてなブックマークに追加

 アジア大会に臨むU-21日本代表メンバーに選出された浦和レッズMF矢島慎也が、大会2連覇に向けて決意を表明した。所属する浦和では今季リーグ戦未出場だが、手倉森ジャパン初陣となった今年1月のAFC U-22選手権から招集され続けるU-21日本代表では常連の一人となっている。アジア大会では、12年U-19選手権、そしてU-22選手権で敗れた因縁の相手との対戦もグループステージで待ち受けるが、視線は上に向けられている。日の丸を背負う男は自らの存在価値を証明しつつ、アジアの頂点を目指す。

――アジア大会を戦うU-21日本代表メンバーに選出されました。率直な気持ちを教えてください。
「『クラブでの出場機会がある』という項目が選考基準になっていたら、アウトだったのかも知れません。でも、周りの選手がJリーグに出場している中、出場していない自分が代表に呼ばれたからといって引け目を感じる必要もないし、むしろ代表でもやれると思っています。Jで出場機会を得ている選手と同等、もしくはそれ以上のプレーができればいいと思うので自分の力を証明したい。U-21日本代表は同世代の選手から刺激をもらえるので自分の成長にもつながる場だと感じていますし、そこに呼ばれることは毎回、本当にうれしく思っています」

――浦和ではなかなか出場機会をつかめずに苦しんでいると思います。
「試合に出られない今の状況は、当然悔しいです。ただ、代表で良いパフォーマンスを見せられれば自信にもつながってくると思うし、それがレッズに戻ってきてからのレギュラー争いにもプラスにつながるはずです。僕はジュニアユース、ユースとずっとレッズで育ってきたので、クラブやサポーターの期待に応えたいと思っているし、レッズで試合に出場して勝てるチームの中に自分がいたい気持ちは強いです」

――公式戦での出場から遠ざかると試合勘が心配されますが、特別に取り組んでいることはありますか。
「難しいですよね、その感覚を保つのが。疲れた中でどれだけシュート精度を保てるかという練習もしているし、練習試合ではしっかり動けているので大丈夫だと思っていても、公式戦になると疲れの度合いが違うんですよ。だから、公式戦に出ることはサッカー選手として、本当に大事だと感じています。ただ、負けてはしまいましたが、天皇杯3回戦(8月20日群馬戦●1-2)で久し振りにフル出場したので、そこまで不安には思っていません」

――8月11日~13日までは福岡で行われたU-21日本代表候補のキャンプに参加しました。印象はいかがでしたか。
「手倉森(誠)監督から、『アジア大会は前回大会で優勝しているので、自分たちも優勝しないといけない』と強く言われました。だから選手たちも、その目標に向けてチームで話し合いながら、まとまろうとしていましたね」

――選手での話し合いを行うとき、誰が中心になっているのでしょう。
「誰が中心というのはありませんでした。プレーに関わっている選手がグループを作って、『もっと、こうした方がいいんじゃないか』という話し合いをする感じで、誰かが率先してではなく、一人ひとりから『ここは、こうした方がいい』という話が出ていました。まだまだチームとしては完成していない感じですが、皆で良くしていこうという段階にあると思うし、アジア大会前にはキャンプもあるので、もっとチームとして良くなるんじゃないかという期待があります」

――合宿の最終日には福岡と練習試合を行いましたが、システムが頻繁に変わりました。
「確かに頻繁に変わりましたが、僕はあまり混乱しませんでした。僕が出場した前半は4-3-3から4-2-3-1になって最後に4-3-3に戻りましたが、どちらのシステムも経験したことがあるし、後半に試した3バックもレッズでやっているので、いろいろなシステムに対応できると思っています。4-3-3のときのデメリットはアンカーの横にスペースが生まれることで、そこをうまく埋めながら守備ができていれば、福岡戦の前半も4-2-3-1にシステム変更せずに4-3-3のままで良かったと感じています」

――手倉森監督は『選手が考えて、システムを変えていい』と話していました。自分たちで判断するには勇気が必要だと思います。
「勇気も必要ですし、難しさもあります。誰かが勝手にポジションを変えても、チームとしてそれを共有できないといけませんからね。自分たちでシステムを変えてハマれば一番いいですが、それができない状況であればベンチから指示が出るはずです。ただ、その指示が出る前に自分たちで感じ、必要とあればポジションを変えることが求められていますね」

――攻撃や守備をこなしつつ、システム変更にまで頭を働かせるのは大変ですね。
「でも、システムは無理やり変えないといけないわけではありません。試合中に『こうした方がいいだろう』と思い、それをチームとして自然と共有できて、スムーズにシステム変更できるのが一番です。だから、『システムを変えないといけない』という固定観念は持っていません。僕はピッチ全体を見ながら、『あそこのスペースが空いているな』とかを考えながらプレーするのは好きなので、手倉森監督が求めるサッカーを完成に近付けていくのが楽しみですね」

――手倉森監督の印象はいかがですか。
「言葉の掛け方や使い方がうまいですね。ブラジルW杯後に行われた福岡合宿でのミーティングでは、『次は自分たちの世代が中心になっていかないといけない』と強調して僕たちのモチベーションを高めてくれたし、試合中には審判や相手チームに対してアピールしてくれるので選手からすると心に余裕が生まれます。指示を出すのも『ここは、こうしろ』と強要するのではなく、『ここは、こうだからこうしよう』と諭す感じなので、選手をコントロールするのがうまいなと感じます」

――合宿中に特別に声を掛けられましたか。
「ありましたが、ここではノーコメントです(笑)。手倉森監督は1月のU-22選手権から、いろいろな選手に話し掛けていますし、その中で僕に話し掛けてくれたときもありました。守備は守備の選手を集めて話をするときもあるし、『今、チームでどう?』と一人ずつに声を掛けることもあるので、選手とのコミュニケーションを大事にしている印象ですね」

――アジア大会では、1月のAFC U-22選手権で対戦したクウェートとイラクと同組になりました。
「U-22選手権のグループリーグで対戦したクウェートは、自分たちがずっとボールを保持する展開でしたが、なかなかゴールを割れずに0-0で終わりました。印象としては、スピードのある選手がいると思うので、その選手を後ろの選手にしっかり捕まえてもらい、ボールを持っているときは不用意な奪われ方をしないように気を付けたい。ボールを奪われたら前からしっかり守備を行い、カウンターを阻止することが重要だと思います。アジア大会では当時対戦したチームとはメンバーも代わるでしょうが、自分たちがしっかり集中して90分間を戦えれば勝機は十分にあると思います」

――イラクにはU-22選手権の準々決勝、そしてU-20W杯出場を賭けた12年のU-19選手権の準々決勝でも敗れた因縁の相手です。
「…イラク、怖いですね。いや、相手としてという意味ではなく、手倉森監督も『縁がある』と話していたように、怖いくらいに縁があり、『またイラクか』という感じの怖さです。確かに苦い思い出ですが、U-22選手権の時はチームが立ち上がったばかりで皆が手探りの状態でした。ずっと押し込まれる展開となり、最後の最後にやられたという印象です。ああいう展開になったときに、監督からの指示を待つだけでなく、ピッチの中だけで解決しないといけない問題もあったと感じています」

――あれから半年が経ち、チームとしての成長も感じていると思います。
「自分たちで考えて問題を解決する力も身に付いてきたし、チームとしても連係が高まっていると感じるので、イラク戦はチームとしてどれだけ成長したかが分かりますし、国を背負っている以上、とにかく勝つことが大事です。そして、今回こそは勝てるという自信も持っています。『一番大事なのは勝つこと』と手倉森監督も話していたので、イラクにリベンジするだけでなく、勝ち続けてアジア大会2連覇を目指します」

――最後に新色のマジスタを見た感想とスパイクへのこだわりを教えてください。
「水色の蛍光色って言うんですかね。こういう色のスパイクを履くのは初めてですが、僕は青系の色が好きだし、爽やかな色なのでお気に入りになりそうです。履いてボールも蹴りましたが、軽くて蹴りやすいなと感じました。スパイクのこだわりと言いますか、小さい頃から自分が好きな選手や有名な選手が履いているスパイクを履きたいと思っていて、ブラジルW杯でもスペイン代表のMFアンドレス・イニエスタやドイツ代表のMFマリオ・ゲッツェがマジスタを履いてプレーするのを見ていたので、そのスパイクを履けるのはうれしいですね」

――新しいマジスタを履いて、どういうプレーを見せていきたいですか。
「日本代表のカラーともリンクしていると思うので、アジア大会で勝利に貢献できるプレーを見せたい。レッズと代表では役割も違いますが、共通して求められているのは点に絡むこと。チャンスに顔を出してチームを勝利に導くゴールを決められるように頑張ります」

(取材・文 折戸岳彦)

▼関連リンク
第17回アジア競技大会特集ページ

TOP