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[MOM1122]富山一FW坂本裕樹(2年)_選手権連覇へ台頭してきた「頼もしい」存在

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.13高円宮杯プレミアリーグWEST第13節 富山一高 2-2 東福岡高 富山一高G]

 富山一高が下位争いを抜け出すためには絶対に落とせない重要な7位・東福岡高との対決。結果こそ引き分けに終わったが、「リーグを戦う際はコツコツと勝ち点1を積み上げていく事も大事」と大塚一朗監督が次第点を与える戦いぶりだった。その原動力となったのが夏で一皮むけた2年ストライカー坂本裕樹の活躍だった。

「相手はインターハイになったチームだったので、絶対に勝ちたいと思っていたし、FWなので、チャンスを決めたかった」との意気込み通り、前半からトミイチが標榜する“奪ってから素早く攻めるサッカー”の終着点として前半から積極的にフィニッシュに絡むと、後半2分には中盤でのボール奪取から前線に入ったパスに素早く反応。ドリブルでゴール前に持ち込むと寄せたDFを切り返しで落ち着いてかわして打ったシュートをゴール左隅に叩き込んだ。

 続く6分にもPA左からMF河﨑輝太が打ったシュートのこぼれ球をしっかり押し込んだが、「自分でもオフサイドじゃないかなと思っていた」と苦笑いしたように判定はノーゴールで終わってしまったが、ストライカーらしい嗅覚の鋭さを見せた。

 成長を感じさせたのは12分のプレー。「試合の途中でこれまでの4-2-3-1から、4-4-2に変わって、前からの守備の重要性が増したので頑張ろうと思っていた」との言葉通り、高い位置から積極的プレスをかけて、ボールを奪うと一息つく間もなくそのままドリブルを開始。PA右まで単騎で持ち込み相手DFを寄せ付けるとゴール前にパスを送り、河﨑のシュートを演出した。この一撃はミートせず、ゴールとはならなかったが、「『攻守の切り替えを速くしろ!』とめっちゃ怒ったりしてきたけど徐々に良くなってきたし、守備に関わったりボールをキープしたり、色々出来るようになってきた」と大塚一朗監督が評価したように頼もしさを感じさせたプレーの一つだった。

 昨季は選手権の登録メンバー25人に入る事は出来なかったが、プレミアリーグに登録され、交代の切り札として経験を積んだ。今季は開幕から全試合に出場しているように主軸を張っているが足りない物は明確。「中学の時は中盤からボンっと長いボールを蹴ってもらい、それを走り込んで決めるだけの単純な選手だった」と大塚監督が振り返り、自身も「守備は得意ではなくて、攻撃だけの選手だった」と認めるように、守備意識の低さと運動量の少なさが課題だった。

 そんな彼に変化が生まれたのは今年の夏休み。「大塚さんから、口酸っぱく『守備の意識を変えろ。もっと前から行け』と言われ続けていたので、変わらないといけないと思えた。チームの誰よりも走ってやろうと頑張った」と“攻撃だけ”の選手からの変貌を決意した。

 意識の変化は着実に表れ、右MFを務めた前期から後期は本職であるFWに復帰。前線からのチェイシングでコースを限定するなど上り調子のチームに貢献した。「昨年よりは良くなっていると自分では思う。身体を張ってキープしたり、前からどんどん仕掛けられるようになった」と手応えを感じながらも、ここまでわずか1得点。「西村(拓真)さんは凄くて、ゴールを全部持っていかれる。自分も決めたいと思っていたので良かった」と胸を撫で下ろしたように、この日の得点は吹っ切れる意味でも重要なものとなりそうだ。

 憧れはタイプが似ていると評す昨季の選手権得点王で先輩のFW渡辺仁史朗(現・富山大)。「まだまだ届いていない。今日も足をつって(後半26分に)交代させられたり、運動量が足りない。もっと走らないといけない」と自分を見つめるが、先輩のDF村上寛和が「頭が良いし、動き出しも鋭いので頼もしい」と評するように周囲の信頼はすでに厚い。連覇がかかった選手権に向け、頼もしい存在が頭角してきた。彼の更なる成長がチームの成長をまた加速させるはずだ。

(取材・文 森田将義)

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