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[選手権予選]12年高校総体日本一の三浦学苑「絶対神奈川制覇」へ初戦突破:神奈川

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[9.21 全国高校選手権神奈川県予選2回戦 東海大相模高 1-2 三浦学苑高 横須賀リーフスタジアム]

 21日、第93回全国高校サッカー選手権神奈川県2次予選2回戦が行われ、12年全国高校総体優勝の三浦学苑高と東海大相模高との一戦は、2-1で三浦学苑が勝った。三浦学苑は10月12日の3回戦で横浜創英高と対戦する。

 12年の全国高校総体では神奈川第2代表として初出場。決して前評判が高かった訳ではなかった三浦学苑が徳島商高との初戦を2-0で制すと、堅守とオープン攻撃で一条高、前橋商高、静岡学園高、立正大淞南高と伝統校を連破して決勝進出を果たす。完全に勢いづいたチームは決勝でも武南高を2-1で破り、初出場初優勝の快挙を達成。ヤンチャな選手たちが技術と勢いによって、神奈川県内で未だ1度も優勝したことのない三浦学苑の名を全国に知らしめた。

 ただ、その後はなかなか結果が出なかった。周囲から高い評価を得ている今年も関東大会予選では準優勝したが、全国高校総体予選では準々決勝で向上高に苦杯。全国屈指の激戦区・神奈川で厳しい戦いを強いられてきたが、主将の左SB熊谷崇大主将(3年)が「神奈川制覇という目標を掲げている。関東あとひとつで逃して、インターハイは上手くいかなくて、残り選手権に選手権へかける思いはみんな強い。絶対神奈川制覇して選手権へ行きたいです」と誓うように、選手たちは今大会で悲願の神奈川制覇を果たし、もう一度全国で三浦学苑の名を広めるつもりでいる。

 神奈川の頂点へ向けた戦いのスタートは簡単なものではなかった。枝村隼人監督が「東海大相模も勢いあっていいチームでした」と語ったように東海大相模はポゼッションから左FW長谷川修平主将(3年)と右FW光本拓史(2年)の突破力を活かした攻撃を特長とする好チーム。それでも三浦学苑は立ち上がりから、テクニカルな選手揃うアタッカー陣と大型SB熊谷の攻撃力で相手を押し込んだ。

 5分、MF菊池大樹(2年)の1タッチのラストパスからFW塚原海人(3年)が左足シュート。10分には再び菊池の1タッチパスから熊谷がPAへ決定的なクロスを送る。そして13分にはインターセプトしたMF高橋一矢(3年)が右足ミドル。攻勢に試合を進めた三浦学苑は15分、CKのクリアボールを左サイドでつなぎ、菊池が左足クロスを入れる。MF斉藤健太(3年)が競ってファーサイドへ流れたボールを拾ったCB若旅拓矢(3年)が、縦に持ち込んでから「マークを外してもらって自分がフリーになった。シュートはファーサイドを狙って決めました」と右足でゴールへ流し込んでスコアを動かした。

 幸先よくリードを奪った三浦学苑だったが、東海大相模に反撃を許す。17分にはCKのこぼれ球を拾ったMF鶴田陸(2年)の右クロスからファーサイドの長谷川に決定的なシュートを打たれてしまう。これは1年時に正守護神として全国制覇を経験しているGK角井栄太郎(3年)がストップ。だが22分、バックパスのミスを突かれて東海大相模MF上瀧陸生(3年)に抜け出されると、GKとの1対1から同点ゴールを決められてしまう。

 このゴールで息を吹き返した東海大相模に対し、三浦学苑は掴んでいた流れを失った。東海大相模は25分にも鶴田の右FKにCB野口知樹(3年)が飛び込み、38分には再び抜け出した上瀧が決定機を迎えるなど、逆転のチャンスをつくる。加えてGK安部秋都(3年)や野口中心の守備もゴール前で堅く、強豪相手に食い下がった。それでも相手の背後を突くボールと個人技を交えて攻める三浦学苑は左サイドで攻撃力を発揮した菊池と熊谷をはじめ、高いポテンシャルを秘める1年生MF砂子田翔や斉藤らが個でDFを剥がしてチャンスメーク。斉藤がPA付近で2人をかわしてシュートを放つなど2点目を狙っていった。

 後半もサイドを攻略して攻める三浦学苑は14分に右サイドを崩して塚原が決定的なラストパス。22分には交代出場のMF磯部龍(3年)の右クロスから菊池が左足を振りぬく。ただチャンスを活かせない三浦学苑に対し、東海大相模も光本がスピードを活かして縦突破を仕掛けるなど対抗。33分には抜け出したFW多田順士郎(3年)が左足を振りぬいて、熱い応援を繰り広げた控え部員たちを大いに沸かせる。

 ただ勝ったのは三浦学苑だった。後半35分、左サイドから仕掛けた菊池の折り返しを斉藤が左足ダイレクトでゴールへ流し込んで決勝点。「嬉しいしかない。プレーで貢献できていなかった。決められたことが唯一良かった」と振り返る斉藤の千金弾による1点を空中戦で強さを発揮する若旅やCB川島岳(3年)、角井中心に守って2-1で競り勝った。

 調子に乗れば、どこまでも止まらないような雰囲気のあった2年前に比べて今年の三浦学苑はマジメな選手が多いという。ただ、そのひたむきさが最後に白星を引き寄せた。枝村監督は「2年前に比べたら全然。ここからまた完成度を上げていかないといけない。まだまだおぼつか無さがある。緩みの部分は練習からなくしていかないといけない。本人たちも分かっていると思うんですけど、なかなか修正しきれていない。だからまだまだですよ。勝ち進む中で成長していかないといけない」と厳しい。ただ難敵・東海大相模に劇的な形で勝利。熊谷は「相手の応援も凄くて飲み込まれてしまった。でも踏ん張って取れたことが成長したなと。今まではあの展開で点取られていたんですけど、踏ん張れたことは成長できたところかなと思います」と手ごたえを口にした。主力と控えとの差が少なく、プレーや声で流れを変えられる選手もいる。元々守備に自信を持っており、トーナメント戦を勝ち抜く力は十分。2年前、先輩たちが全国制覇するシーンを見ていた選手たちが今冬、まずは初の神奈川制覇を果たす。

[写真]前半15分、三浦学苑はCB若旅が右足で先制ゴール

(取材・文 吉田太郎)

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