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[緊急対談]フットサル代表初招集FP荒牧太郎×代表6年目FP渡邉知晃 「イタリアでも勝ちたい」

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 フットサル日本代表は、1日から13日まで行われるイタリア遠征に出発した。かつてFUGA MEGURO(現フウガドールすみだ)に所属していたFP荒牧太郎とFP渡邉知晃が選出された。29歳にして初選出の荒牧は、イタリア遠征中に30歳の誕生日を迎える。世代交代を進める中での異例の招集に「若手枠じゃないことは分かっています」と、気を引き締める。一方、6年間代表に呼ばれている渡邉は、荒牧を含めた新招集選手たちに「代表のやり方を伝えて行きたい」と語る。アジア選手権以来となる対外試合も組まれるイタリア遠征直前に、プライベートでも仲の良い両選手の対談が実現した。

以下、選手対談

――初の代表選出、おめでとうございます。心境は?

荒牧「代表選出の? ……。ないっすよ、別に」

――めちゃめちゃ嬉しそうに、そう言われても…。

渡邉「何かあるでしょ(笑)」

荒牧「いや、まだ向こうに行っていないので、何とも言えないですよね。向こうに行ってプレーをしたら、いっぱい話をすると思うんですけど」

――でも、代表のことは気になっていたんですよね?

荒牧「気にならないわけがないじゃないですか! スペインリーグでプレーしていた当時、一番、ブラジル人、スペイン人にバカにされてきた日本人フットサル選手が、高橋(健介)か、荒牧かだと思いますよ。12年のフットサルW杯のときはスペインにいたんですが、スペイン人に『日本どうなったの?』と聞かれて、『ウクライナに負けた』って答えたら、『マジで!? ウクライナに負けるの?』って。08年のブラジル大会のときも、ブラジルにいて。あのときは日本がブラジルに1-12で負けて、『おまえら、ジュベニール(ユース世代)の代表でも出したのかよ?』って言われて。そういうのがあるから、絶対に見返したいっていうのはありますよ。でも、ここまでずっと呼ばれなかったので」

――30歳を目前にしての初代表です。

渡邉「逆に年齢的には、代表入りを諦めるくらいの時期ですよね」

荒牧「そうだよ。そう思っていましたよ。別に代表のために、プレースタイルを変えても意味がないと思っていましたし、今は代表の若返りがすごいじゃないですか。(北原)亘くんとか、テツさん(村上哲哉)とか、あれだけのクオリティのプレーを続けているのに外されている。それなのに『なんで、オレを呼ばないんだ』なんて言えないじゃないですか? だから、もう静かにクラブで結果を出し続けるしかないと思っていましたよ」

――でも、それが実った結果ですね。

荒牧「それは、ミゲル・ロドリゴ監督に聞いてください。でも、もし、神戸セントラルの2日間を見て決めていたとしたら…。あのときは、仙台戦で2点取って、名古屋戦でも1点取れたのですが、それを期待されても、ちょっと困りますね」

渡邉「点を取れ!と言われてもね(笑)」 

荒牧「オレ!? ってなりますよね(笑)。守備ですよね、やっぱり」

――ちなみに、代表入りはどうやって知らされたのですか?

荒牧「クラブの社長から電話がかかって来て、『なんだろう』と思いながら出たら、『おまえ、セントラルで頑張ったから、そのご褒美に代表に呼ばれているぞ』って言われてね。その後に、(渡邉)知晃から電話が来てね(笑)」

渡邉「そう! 電話して『イタリア合宿の前にオフがあるから、東京で飯行きましょう』って誘ったんです。オレは、(荒牧が)代表に入ったことを知らなかったから、ここで会わないと、しばらく時間がないなと思って」

荒牧「オレは、代表に入ったことを知晃に言っていいのか分からなかったから、内心では『オレもイタリアに行くんだけどな』と思いながら、『わかった! 飯行こう!』って(笑)」

渡邉「あとで発表されたリストを見て、ビックリでしたね(笑)」

荒牧「いつもネタにしていたんですよ。代表のリストが発表されたとき、浦安はいつも何人か代表に入っているから『あれ、オレの名前はないな。なんでだろうな。おかしいな』って。それこそ神戸セントラルが終わった後も、ブラジル遠征がなくなり、イタリア遠征になったことを移動中の車内で聞いたんです。3人掛けの席で、左右に(藤原)潤さんと(星)翔太がいる状態で。潤さんは、初めてブラジルに行けると思っていたから、少し落ち込んでいて、『結局、藤原ブラジルに行けず』って自分で言っていました。だから『いいじゃないですか、イタリア。飯もめっちゃうまいし。いいなぁ、潤さん』って言っていたくらいです」

――では、荒牧選手は、『ここでアピールして定着を』とまでは考えていない?

荒牧「ないですね。ただ、若手枠でないことは分かっています。イタリア合宿の2週間、猶予があってやり方を覚えさせて、次の合宿に呼ぶっていうことは、多分ないと思うんです。この2週間で目途が経てば、また呼んでもらえるかもしれませんし、『これくらいか』となれば、二度と呼ばれないと思います。そういう意識はありますね。だから、自分の持ち味を発揮する2週間になればいいかなと思います。それでどうなるかは、ミゲル・ロドリゴさん次第です」

――日本代表の試合映像とかは、見たりしたんですか?

荒牧「アジア選手権の決勝は見ましたが、それ以外はほとんど。放送もされていないし、見ようもないですよね? だから、見ていないですね。(星)翔太にちょこちょこ聞いていたくらいで。でも、合宿じゃなかったのは、個人的には良かったです」

――合宿の方が、やり方をしっかり確認できるかなと思うのですが。

荒牧「合宿だと、日本人とプレーして終わりなので。イタリアに行けば、イタリア人とやって、どうこうじゃないですか。やっぱり合宿だと、Fリーグで戦っている選手同士になるから、あまり変わらないのかなって」

渡邉「その感覚は、年齢的なものもあると思いますよ。オレが初めて代表に呼ばれたときは、雑誌とかで見ていた人たちの中に、急に入ってやるような感じだったから。グレさん(木暮賢一郎)とか、友くん(小宮山友祐)とか、(稲葉)洸太郎くんとか、亘さんもそう。観客として見に行っていた人たちの中に、いきなり入っていたからね。いきなり刺激的だった」

荒牧「年齢も下だったでしょ? でも、オレは今回、上から3人目だからね」

渡邉「一緒にいるのが、同世代だからね。憧れとか、そういうのとはちょっと違うよね」

荒牧「でも、日本代表のユニフォームを着られるのも嬉しいですよ、もちろん。対戦するのもクラブチームですけど、イタリアは世界で3番目ですし、(相手が)格上なのは間違いないので楽しみです。でも、試合に出られないことも覚悟していますよ」

――どういうことですか?

荒牧「フィクソで、やり方がわからないのは致命的なので、そんなに出場時間をいっぱいもらえると思わない。フィクソの選手もたくさんいますし、クラブほど出られなくても、当たり前だと思います」

渡邉「オレが初めて代表に呼ばれたのは6年前、ミゲル監督の下での最初の代表活動となったスペイン遠征でしたが、最初のカハ・セゴビアとの試合は一度もピッチに立てませんでしたからね。そのときのカハ・セゴビアは、スターぞろいで本当に強くて。ベンチで『これがスペインリーグか』と思いながら見ていました」

荒牧「そういうことも、あり得ると思っています」

――ミゲル監督は、新しく選手を呼んだら、まずは試合を見せるようにするんですか?

渡邉「いや、そんなこともないと思いますよ。その試合は、監督にとって凱旋試合だった(※ミゲル監督は、日本代表監督就任前、カハ・セゴビアで指揮を執っていた)から、結果にもこだわった部分があったんだと思います。試合が終わって、すぐ『次は出るからな』って言われたので」

荒牧「代表はそういうところだと思いますよ。クラブだと『全員で勝ちに行こう!』となりますが、代表ではポイントポイントで求められる選手もいると思うので。それでも、仕事ができる人が、代表に残り続けると思うし、それができなかったら選ばれなくなると思います。まずはクラブでやっているプレーを、代表でも出せるように頑張ります」

渡邉「緊張することはないでしょ?」

荒牧「わかんないよ、やってみないと。ただ、フウガでフットサルを始めたときも、翔太とか、(佐藤)亮とか、知晃とか、年下だけど、僕よりフットサル歴が長かった。須賀さんにも『サッカーとは異なる新しい競技をやるつもりでやってくれ』と言われていたし、年下の選手にも分からないことがあったら、聞いていたからね。だから、今回も行って、上から3番目であろうが、分からないことはバンバン聞くつもりです。基本的な動きも、クラブと違うところもあると思います。でも、自分が思ったとおりに動いて、あとで直されれば『そういうことね』と修正しやすいと思う。だから、変に最初からうかがい過ぎずに、ミスしたのを指摘されるようにしたいと思います」

――では、最後にイタリア遠征への意気込みを。

渡邉「何回、代表に選ばれても、呼ばれて当たり前なんて思ったこともありません。みんな、そうだと思うけど、毎回、毎回が勝負。長く代表に呼んでもらっていますが、ダメなプレーをすれば呼ばれなくなる可能性もあるので、毎回、新鮮な気持ちでいくことには、変わりません。でも、戦術理解度とか、やり方に関する慣れは、絶対にアドバンテージとしてあるので、それを新しい選手に伝えていきたいです。それでみんなが理解すれば、チームのレベルも上がるので。それは積極的にやっていきたいですね。今回、太郎さんだけじゃなくて、名古屋で一緒にやっていた森秀太も呼ばれているし、楽しみですよね。あとは、この遠征は大会じゃないけど、やっぱり勝ちたいです」

荒牧「勝ちたいよね。僕は今回が初招集ですが、10回目の招集だろうが、100回目だろうが、イタリア人から見たら、同じ日本代表です。だから、初めてであることを言い訳にせずにやりたい。『初めてだから、できなくて当たり前』ではなくて、それでも日本代表として見られるわけだから、しっかりやってきたいと思います」

(取材・文 河合拓)

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