beacon

[MOM1144]日大藤沢MF田場ディエゴ(3年)_熱戦に決着つけた“日藤のマラドーナ”

このエントリーをはてなブックマークに追加

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] 
[10.12 全国高校選手権神奈川県予選3回戦 桐光学園高 1-2 日大藤沢高 日大藤沢G]
 
 決勝ゴールを決めたMF田場ディエゴ(3年)は試合後、桐光学園高の4連覇を阻止する決勝ゴールに興奮した日大藤沢高のチームメートたち担ぎ上げられた。そして仲間たちの頭上で祝福に応える背番号10。その姿はプレースタイル同様、まるで“王様”のようだった。日大藤沢は1-1の後半27分にエースを投入。圧倒的なキープ力を持つ“日藤のマラドーナ”だが、なかなかボールに触ることができなかった。ファーストタッチまで時間を要したが、それでも35分、田場は強豪対決に決着をつける決勝ゴールを決めた。

 PA内右サイドにこぼれたボールに反応すると、飛び出してきたGKよりも一瞬早くボールをつつく。GKが弾いたこぼれ球を拾った田場はバックステップを踏んで体勢を立て直すと一気に加速。GKを振り切って左足シュートをゴール左隅へ突き刺した。「『試合を決めてこい』と監督に言われて、試合を決めてヒーローになれればいいと思ってプレーしました」というエースの劇的な決勝点。国体神奈川県選抜で10番も背負った逸材がピッチ上で結果を出した。

 両親はペルー出身。日本人の曽祖父を持つ田場はサッカー好きな父の影響で、伝説のMFディエゴ・マラドーナ氏の名から「ディエゴ」と名付けられた。神奈川県藤沢市で生まれ育ってきた田場は意外にも「小学校の時は足下が全然なかった。裏街道とか、前に蹴って走る選手だった」という。それが中学時に所属したFC湘南ジュニアユースのドリブル中心のトレーニングによって徹底的に足技を磨かれ、県内外の強豪校から注目される存在に。そして地元の強豪・日大藤沢へ進学した田場は一度ボールを持ったら2、3人がかりでもなかなか失わないキープ力で注目度を増した。「苦しくなったらひとりで自主練ですね。ふつうにまたいだりして」と不振の時も技術を磨いて、より自信を持つ武器にしてきた。

 ただここまでは苦しいシーズンだった。ボールを持てば間違いなく全国トップレベルのMFは1試合のうちどこかで輝きを放つものの、ゲームの中で消えてしまうことが少なくない。結果を残すことができず、「自分の課題は1試合通して走り切れない。ディフェンスもできないんですよ」というMFは夏休み明けから先発を外れていた。「スタメンで出たいという気持ちがあった」という田場だが、ベンチスタートから勝負どころで起用され、少ない時間で結果を出すことを求められた。その中で迎えたこの日。再びベンチスタートとなったが「(先発復帰する)そのためには仕事をして結果を出さないといけないというのがあった。きょうは相手桐光だし、ここで決めたら(インパクトは)2倍くらいになるだろうと」とスタメン奪還に燃えていたエースはインパクト十分の一撃でチームをベスト8へ導いた。
 
 決勝点を決めたが、先発復帰はこれからの本人の頑張り次第だ。佐藤輝勝監督は「彼がスタートになるくらいの精神力と強さを持って、一発だけじゃなくてできるようになれば、このチームは優勝できると思う。(先発に)戻ってきてくれるかは本人次第だと思います」。この日は勝負どころで起用するために温存されていた部分もあった。諦めずに取り組み続ければ、準々決勝で念願である先発に舞い戻っている可能性は十分にある。自身の憧れについて「クリスティアーノ・ロナウド見てプレーしていたけれど、『似てないよ』と言われて。変えたりして今最近ハマっているのはロナウジーニョですね」という“マラドーナ”。「絶対に全国に行きます」という目標を実現し、そのテクニックで全国を沸かせる。
 
(取材・文 吉田太郎)

TOP