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進化し続ける時の人 F東京FW武藤「毎試合毎試合、少しずつ成長できている」

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[10.22 J1第29節 F東京 2-1 広島 味スタ]

 写真を見てのとおり、FC東京のFW武藤嘉紀に対するマークは、日に日に激しくなっている。しかし、そのマークさえも22歳のアタッカーは、自身が成長するために必要なものと捉える。

「これだけマークが厳しくなってきた中で、自分の良さを出せるかで真価も問われます。1回1回、激しいアタックや削りにイライラしないこと。それが今日はできました。サイドでのドリブルで、(DFを)ちぎることもできましたし、自分の良さを今日も出せたと思います」

 再三、武藤に突破された広島DF塩谷司は「4、5回は突破されたので、次にやるときは、やられないようにしっかりしたい」と反省したが、抜いた側の武藤も満足はしていない。「塩谷選手という日本を代表するバックを抜いたことは、自信にもつながります。そこでゴールにつながるのが一番でしたが、それができなかったので、抜いた後の精度は上げていきたい」。

 前節の大宮戦、今節の広島戦と、対戦相手は二重三重のカバーリングで武藤を止めに来た。だが、それにも武藤は動じない。自分に相手DFが集中してきたら、周囲を活かせばいい。その判断スピードを上げようと、自身に課題を与え続ける。

「何人もマークが来て、前半はうまく周囲を使えなかったのですが、後半になって自分に来る選手を逆手にとって、渡邉選手にスルーパスを出したり、良い形もできました。判断はまだまだ遅いですが、良い感触はつかめています。ああいうプレーをしっかり続けていかないといけない」

 日本代表のハビエル・アギーレ監督は以前、武藤について「日々進化している」と語っていたが、武藤も手応えをつかんでいる。「試合の中で足りないことを、すぐに修正することが必要になります。その点では、毎試合毎試合、少しずつ成長できていると思います」と、胸を張る。

 厳しいマークを受けながら、一瞬で仕事をする。後半29分には、DF太田宏介のセットプレーから、決勝ゴールを挙げた。「しっかり当てられたわけではないのですが、DFに当たってコースが変わってくれたので良かったです。ニアに走り込んで、点で合わせることができれば、自分のスピード、反応の速さで相手より先に触れると思っていました。それが形になって良かったです。前節の大宮戦でチームに迷惑をかけていたので、ホッとしました」。

 そう安堵する姿には、まだ初々しさが残る。だが、自身の成長に、そしてチームの勝利には貪欲だ。「目の前の1試合1試合に勝ちに行きます。負けてしまうとACL(出場権の獲得)だったり、首位争いに加わることできなくなるので。とにかく目の前の1試合1試合に勝つことを目標にしたい」。更なる成長を渇望する若武者は、残り5試合、消化試合を戦うつもりは、ない。
(取材・文 河合拓)

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