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[選手権予選]日本一に近づくための強化、山梨学院が古豪振り切り全国王手:山梨

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[11.1 全国高校選手権山梨県予選準決勝 山梨学院高 3-1 甲府商高 中銀スタ]

 第93回全国高校サッカー選手権山梨県予選は1日、甲府市の山梨中銀スタジアムで準決勝を行った。3年ぶりの全国大会出場を狙う山梨学院高と約半世紀ぶりとなる全国出場を目指す甲府商高との一戦は、3-1で山梨学院が勝利。山梨学院は8日の決勝で帝京三高と戦う。

 09年度高校日本一の山梨学院は、夏に体感した全国トップのレベルへ自分たちの基準を引き上げている。地元・山梨で開催された全国高校総体3回戦で優勝校の東福岡高(福岡)と対戦した山梨学院は、劣勢を強いられたものの、1点差のまま食い下がり、試合終了間際にPKを獲得。これを決めることができずに0-1で敗れたが、山梨学院戦を除く全試合で3得点以上、1試合平均4.3得点をたたき出して優勝した東福岡を最後まで苦しめた。元清水エスパルスヘッドコーチの山梨学院・吉永一明監督は「(選手たちは)夏のインターハイの負け方が頭に残っていると思うので。その悔しさを晴らすにはその舞台に立つしかない。すぐに追いつくのは無理だし、あの時点でやれたこととやれなかったことは見えてきた。日本一を掲げてきた中で、実際にそのチームとやれたのは財産だと思います。それを活かさないといけない」。

 準決勝への準備となるこの一週間にあえて行ったのは、ゲームウィークには行わないような強度の高いトレーニングだった。目標は山梨で必ず優勝することであり、日本一。「ここで刺激を入れたかった。今年、強い動き、強いプレーを大事にしてきた。(決勝、その先を見据えて)確認をするのはここしかない。怪我のリスクはあるけれど、あえてやりました。トレーニングからやっていかないとゲームの中で出ていかないと思う」と指揮官は説明する。右SB山中登士郎主将(3年)は技術の高さに加えて各選手のコンタクトの部分でも段違いの強さを発揮していた東福岡について「あれがトップレベル。東福岡は一人ひとりの強さをやって感じた。結果を見ても、1点に泣いたというか、取るべきところで東福岡は取って自分たちは取れなかった。小さな差かもしれないですけど、その差が大きい」。東福岡に一歩でも近づくことができるように、スプリントの本数や球際でより厳しくいく姿勢、一つひとつを試合の中で繰り返し発揮できるようにこだわってきた。この日、立ち上がりからハイプレスを敢行したのも、バージョンアップを目指している現れだ。ただ、試合では古豪・甲府商の健闘もあってミスが散発。先制、中押し、ダメ押しと効果的に得点して勝ったものの、山梨学院にとっては課題も残るゲームとなった。
 
 ボールを失ってもすぐに奪い返して連続攻撃を繰り出す山梨学院は前半10分、右サイドを駆け上がった山中のクロスからMF福森勇太(3年)がクロスバー直撃の右足シュート。10分にも10番MF小川雄大(3年)が決定機を迎える。ただGK中澤翔太(3年)の好守によって阻んだ甲府商は10分、MF伊藤祐(2年)とMF名取聖也(3年)の2人で左サイドを切り崩すと、14分にも敵陣でインターセプトした伊藤がスルーパスを狙うなど反撃。だが、山梨学院は15分、PAやや外側でボールをおさめたFW原拓人(3年)が右前方へスルーパスを送ると、FW宇佐美佑樹(3年)がダイレクトでクロスボール。これを原が188cmの体躯を活かした豪快なヘッドでゴールへ叩き込んだ。

 ただ甲府商も食い下がる。原の高さや小川の個人技など山梨学院の個々の高さ、巧さ、そして山梨学院得意のサイド攻撃で打開されるようなシーンもあったが、DF伊藤脩斗(3年)を中心にコンパクト且つ球際の厳しい守り。ミスの目立つ山梨学院の横パスをカットしたほか、PAでの危機も好セーブを連発した中澤に支えられて切り抜けて行く。そして非常に落ち着いたボールコントロールを見せる伊藤と名取を軸とした攻撃で対抗。GKのパントキックを収めた名取が一気に左足シュートへ持ち込むシーンもあった。

 山梨学院は後半10分、相手ハンドで獲得したPKを小川が右足で決めて2-0。ただ17分、自陣中央でミスからインターセプトされると、甲府商のカウンターがさく裂する。甲府商はMF内田佑歩(3年)が右サイドへ捌くと、名取がゴール方向へのドリブルからグラウンダーのクロスボール。これにファーサイドから走りこんだFW橘田郁弥(3年)がスライディングシュートでゴールへ押し込み、1点差とした。MF大場祐樹(3年)が中盤で存在感を発揮し、注目CB渡辺剛(3年)が圧倒的な高さを見せた山梨学院だったが、ミスから痛恨の一撃を食らってしまった。

 同点に追いつきたい甲府商は29分に橘田が前線で競り勝ち、名取がPAへ落ちたボールに反応。また伊藤のドリブルや交代出場のMF照井拓人(3年)の左足クロスで同点機をつくろうとする。だが反撃を封じた山梨学院は37分、鋭いターンでDFのマークを外して抜け出したMF伊藤大祐(3年)がMF多田倫浩(3年)からのスルーパスを右足ダイレクトでゴールへ流し込んで3-1。準決勝進出を決めた。

 全国屈指の実力を持つ山梨学院だが、過去2年の選手権はいずれも予選敗退。山中は「本当に、選手権というのは夏の悔しさの借りを返すところ。過去2年、先輩たちの悔しさをスタンドで見ていた選手もいるし、ピッチに立って感じた選手もいるんで、その悔しさを決勝でぶつけて、どんなに泥臭くても、どんな形でもいいので勝って全国に行きたいです」。目の前にある、最も大事な県決勝を乗り越えて、3年ぶりの全国選手権でもう一度日本一に挑戦する。

(取材・文 吉田太郎)
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