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[選手権予選]「ボロボロだった」時期を乗り越えた夏の千葉王者・習志野、劇的V弾で準決勝進出:千葉

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[11.2 全国高校選手権千葉県予選準々決勝 習志野高 1-0 東京学館高 東総運動場]

 第93回全国高校サッカー選手権千葉県予選準々決勝が2日に行われ、夏の高校総体予選で優勝した習志野高と東京学館高との一戦は、後半終了間際に交代出場のMF米田悠斗(3年)が決めた決勝点によって、習志野が1-0で勝った。98年度以来16年ぶりとなる選手権全国大会出場へ前進した習志野は、9日の準決勝で流通経済大柏高と対戦する。

 夏の千葉王者にとって全国総体以降は試練の日々だった。総体予選で5年ぶりに優勝した習志野だったが、躍進が期待された全国総体では初戦で初芝橋本高(和歌山)に0-3で敗戦。相手の堅い守りを攻略できず、セットプレーと試合終盤の連続失点によって早々に大会を後にした。その後チームは主将の注目SB佐古大輔(3年)ら怪我人が続出。砂金伸監督は「インターハイで負けた後、結構チームがボロボロになっちゃって。手術したヤツもいるし、ギブス巻いていたヤツもいるし、そういう主軸がいない間ですぐ遠征へ行くじゃないですか。そうしたらボロボロで、試合やればやるほど『このチームで良く千葉県優勝できたよな』と思うくらいに格下げしまして・・・」と振り返る。

 遠征では攻守のバランスを欠いて失点が続くなど、結果が出なかった。チームにとって試練の夏。ただ、その中でチームは逞しく成長する。「『リーグ戦でプリンス上がるのもオレたちの夢だから』って気持ちを切り替えさせながら、怪我人が数人いる中で取っ替え引っ替えサブの連中出しながら、9月、10月のリーグ戦を乗り越えられた。きょうも『誰かいなくても乗り越えられてきたし、オマエら絶対に乗り越えられるよ』という話をした」と指揮官が説明したように、全員で苦境を乗り越えたチームはプリンスリーグ関東昇格への第1関門である千葉県リーグ1部で優勝。この日は怪我人不在の中でチームを支えたMF木村拓麻(3年)が大学受験のために不在というピンチだったが、指揮官の言葉通りに全員で乗り越えて見せた。

 ただし、試合は大苦戦だった。立ち上がりからフルスロットルで習志野にチャレンジした東京学館が習志野を押し込む。10番MF若本紘次郎(2年)やFW金子友也(2年)らが果敢な仕掛け。そしてシュートレンジに入れば間髪入れずにミドルシュートを狙っていく。そして敵陣でスローインを獲得すると、CB鵜飼亮多主将(3年)と左SB片山修(2年)が左右から次々とロングスローを放り込んだ。17分には右ロングスローのこぼれ球をMF秋月健太(2年)がシュート。そのこぼれ球を若本が決定的な形で押し込もうとする。

 両サイドハーフのプレスバックも徹底されていた東京学館は習志野のサイド攻撃を阻止。その勢いある攻守の前に習志野は攻撃が落ち着かない。木村不在の影響によって中盤でタメをつくることができなかったこともあってロングボールを蹴り込んでは鵜飼の豪快なヘッドに跳ね返され、また相手を勢いづけてしまう。前半はこの日が先発復帰だった右SB佐古がドリブルで切れ込むシーンや、連続したショートパスから1タッチのスルーパスで背後を狙う攻撃も見せたものの、シュート数はゼロ。非常に重苦しい40分間だった。砂金監督も「本人たちも分かっているんだけどメンタルなところ。ハーフタイムも『オマエららしくないね』と言って笑っていたんですけど」と苦笑い。それでも後半開始から大型FW小林尚也(3年)を投入し、左利きの右FW藤池翼(3年)を左サイドへ移動させた習志野は流れを徐々に引き寄せる。

 小林の存在を警戒してか、東京学館は前半ほど前に出られなくなった。また左サイドを縦に突く藤池によって相手の守りを広げた習志野は、MF高橋裕太郎とMF梶浩徳(ともに3年)のダブルボランチがセカンドボールを拾い出す。そして12分には左サイドを突破した藤池の折り返しを東京学館DFがクリアミス。これを拾った小林が決定的な右足シュートを放つ。さらに14分には相手セットプレーを阻止してからカウンター。GK松田健太郎(3年)が右サイドへ展開すると、10番FW串間竜弥(3年)が逆サイドへアーリークロスを通して藤池が左足シュートを打ち込んだ。ボールが動き出した習志野は「前半は相手に合わせちゃったかなというのがあった。でもサイドから崩せば点が入るというのがあったので、後半は修正してサイドから攻めれたらいいなと思いました。(0-0の展開でも)焦りはなかったですね。県リーグでやった時も1-0だったので。1点勝負だなと思っていました」という左SB見原一歩(3年)の攻撃参加も効果を発揮。そして守っては指揮官が「ロングスロー(対策)の練習もしていたんですけど、積極的だったし、的確だったと思います」と賞賛した松田が好守を連発し、高林剛士(3年)と西村慧祐(2年)の両CBも空中戦で奮闘してゴールを許さなかった。

 そして今季、交代カードが結果を出し続けている習志野はこの日も交代出場の米田が試合を決めた。試合終了1分前の後半39分、習志野は左サイドで見原がワンツーにチャレンジ。一度は相手に身体を入れられたものの、上手く回り込んだ見原がボールを奪い返す。そして見原の折り返しを藤池が左足シュート。これはDFにブロックされたものの、こぼれ球を米田が「もうゴールが見えたんでとにかく枠に冷静に入れようと思って」と得意の左足でゴールへねじ込んだ。本来はサイドハーフの米田をFW起用する砂金監督の采配も当たって栗色の名門が白星をもぎ取った。

 苦しい戦いをものにした習志野。佐古は「(苦しい夏を乗り越えて)3年生に『自分がやんなきゃ』という自覚が出てきましたし。まだまだですけど2年生が、少しずつついて来てくれるようになった。チームとして少しずつ大きくなったと思います。最初は簡単に失点したり、そこから立て直せなくてというのがあった。でもチームがひとつになって勝ちにこだわるところを取り戻せたと思う」。準決勝では夏の総体予選で2-1で勝っている流経大柏と激突する。全国総体への連続出場を11で止められた流経大柏が凄まじい気迫で襲い掛かってくることが予想されるが、苦境を乗り越えてきた習志野が再びその壁を突破する。

[写真]後半39分、習志野は米田が決勝ゴール

(取材・文 吉田太郎)
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