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[MOM320]大阪体育大MF池上丈二(2年)_プロになるために第3の挑戦の地で戦う技巧派

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.11 大学選手権1回戦 大阪体育大3-1北陸大]

 風下で不利な展開の中、多くの選手がロングボールを蹴ることで相手に奪われることを避けようとしたが、左サイドで1人だけ足下に余裕を持つ選手がいた。大阪体育大の2年生MF池上丈二(2年=青森山田高)だ。巧みにボールを動かし、相手に囲まれても動じない。エースFW澤上竜二(3年=飛龍高)が北陸大のDF深井脩平(3年=浦和実業学園高)らに厳しくマークされる中、コーナーフラッグ付近で相手2人の間を抜け出すなど、高い技量を見せてチャンスメークに貢献した。

 池上のプレー精度の高さは、勝敗に影響を与えた。前半43分のFK、後半23分のCKは、池上のキックからゴールという結果が生まれた。連覇を狙う大体大には、坂本康博監督が「竜二の周りがどれだけ動いて点を取れるか。サイド攻撃と、竜二の下で潜る選手が出てこないといけない」と話すエースを生かすための課題があるが、問題を解消するためキーマンの候補と言えるだろう。

 教え子を厳しく評価する指揮官は、池上のプレーに対して「まだちょっと判断が遅い。ドリブルするのか、早めにクロスを上げるのか。ボールをこねくり回して遊んでいる。迷っていると、ああいうプレーになってしまう。あそこにボールが入ると攻撃に時間がかかる」と苦笑いを浮かべながら注文を付けたが、評価を覆す働きを期待しているのは、明らかだ。

 1学年上の澤上も、池上には期待をかけている。「スピードがあるタイプじゃないけど、一度自分がボールを受けてワンツーで抜け出したときにアイツが相手と1対1になれば個人技で行ってくれる。アイツが低い位置で持ち過ぎるのは、サポートが悪いから。できるだけサポートに行って前で持たせたいし、前では持ち過ぎてもいいと思う」と援護を約束した。

 熊本生まれの池上は、プロを目指すために各地を転々としてきた。バレイアSCで中学時代を過ごした後、長崎の名門・国見高に進学した。1年次には全国高校サッカー選手権大会のメンバー入りも果たしている。しかし、3年次には青森山田高の一員として同選手権に出場している。「進学先に国見を選んだけど、自分に成長を感じられなかった。2年で試合に起用してもらっていたけど、このまま終わってしまうのではないかと、中学生時代の所属チームの指導者などに相談して、親にも話をして、転校を決めた。大きな決断だったけど、今はあれで良かったと思っている」と池上は振り返る。

 主力選手が転校する例は多くない。難しい決断だったが、プロになるという夢のために道を選んだ。九州から東北へと飛び、現在は第3の挑戦の地である大阪で技を磨いている。北陸大との1回戦を3-1で勝利し、2アシストを記録した池上は「今日はアシストで終わったけど、1試合1得点が目標でゴールに絡む選手になりたいと思っている。課題は、ゴール前で良い判断でシュートに持ち込むところや、得意なドリブルからシュートを打ちきるところ」と満足することなく、さらなる活躍を誓った。

 前回大会は1年生ながら準決勝でゴールを決めるなど、優勝に大きく貢献。今後はチームをけん引する役目も担うであろう期待株だ。現在は「大体大と言えば澤上竜二」だが「もう一人、ちょっと名前が似ている池上丈二もいる」と広く言われるようになる日が近く、やってくるに違いない。

(取材・文 平野貴也)

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