beacon

[大学選手権]5バックの“積極守備”で福岡大が関東4連覇専修大を破る

このエントリーをはてなブックマークに追加

[12.14 大学選手権2回戦 専修大1-2(延長)福岡大 味フィ西]

 第63回全日本大学サッカー選手権の2回戦が14日に味の素フィールド西が丘で行われた。2年前の準優勝を果たしている福岡大は関東大学リーグ4連覇を達成した専修大を延長戦の末2-1で下し、14日の3回戦でびわこ成蹊スポーツ大との対戦が決まった。

 エースで横浜F・マリノスに入団が内定しているMF仲川輝人(4年=川崎U-18)を負傷で欠くとはいえ、強力攻撃陣を擁する専修大と戦うにあたり、福岡大は4バックだった1回戦から布陣を5バックに変更した。名古屋グランパス入団内定のCB大武峻主将(4年=筑陽学園)を中心に守備から試合に入る事を選択するが、消極的な選択をした訳ではない。

「常時5枚入る状態になると、前へのプレッシャーが効かなくなるので、前半は上手く5枚の中で誰かが飛び出していって対抗が出来ていた」

 乾真寛監督が語るように、前半は引くのではなく、前から積極的な守備を仕掛けることが狙いの布陣だった。相手の攻撃陣に仕事をさせず、大武の脇を固めるV・ファーレン長崎入団内定の左CB武内大(4年=国見高)と右CB丸尾祐太(3年=札幌創成高)も身体を張った泥臭い守備でチームを支え続けた。

 この守備陣の頑張りに応えたい福岡大攻撃陣は、前半8分に相手陣内でMF木本恭生(3年=静岡学園高)がインターセプトから裏へとスルーパス。これに反応したMF野嶽惇也(2年=神村学園高)が2試合連続となるゴールを流し込み、待望の先制点を奪取。試合を優位に運ぶことに成功した。
 
 その後も、最終ラインに加え、ダブルボランチの木本、MF稲葉修土(3年=立正大淞南高)も身体を張った守備で、専修大のFW前澤甲輝(4年=清水商高)、FW山川翔也(3年=新潟西高)を中心としたアタックを封鎖。福岡大は1点リードのまま、前半を折り返した。

 しかし、後半に入ると様相は一変。攻撃のギアを上げて来た専修大を相手に、ズルズルと5バックが後退し、前半見られたようなアグレッシブな守備が見られなくなってしまう。専修大のスピードスターFW佐藤遵樹(2年=千葉U-18)を後半10分に投入されると、さらに最終ラインは自陣に張り付く形になった。同13分には左サイドでボールを受けた前澤にドリブル突破を許すとクロスを上げられる。これを中央に走り込んできた佐藤に合わせられ、あわやと言うシーンを作られてしまい、苦しい時間が続く。

 すると、後半16分にジェフユナイテッド千葉内定の右SB北爪健吾(4年=前橋育英高)のパスに、右サイドで抜け出した佐藤が中へとセンタリング。「木元が僕に(山川の)マークを受け渡そうとして、止まったら、その間で打たれてしまった」と大武が語るように、福岡大はマークが微妙にずれてしまうと、専修大の山川にヘディングシュートを叩き込まれ、同点に追い付かれてしまった。

 これで、苦しくなった福岡大は勝ち越し弾を狙うべく、失点直後に大武の判断で左SB瓜生紘大(2年=筑陽学園)を一列上げ、4バックに変更。守備を修正し、前からの圧力をもう一度掛けにいった。それでも相手の攻撃陣を止められず、追い込まれていったが「うちの伝統」と乾監督が言い切る泥臭い守備でなんとか凌ぐと、勝ち越し点を狙うべく攻撃を仕掛ける。

 後半42分にはサガン鳥栖内定の途中出場FW山崎凌吾(4年=玉野光南高)のポストプレーから同じく途中出場のFW中野圭一朗(3年=岡山芳泉高)が左足でシュートを放つもバーの上。その後も何度か攻撃に転じたが、押し込まれてから、長い距離を走り相手陣内に攻め込むことは、体力が残っていない福岡大にとって苦しい作業となった。

 試合は90分で決着が付かず延長戦へと突入。延長前半も相手に押し込まれる展開が続く。同10分にはMF北出雄星(3年=三菱養和ユース)のスルーパスから山川に決定的なシュートを放たれるも枠の外。福岡大は差し返す一発を放つ余力は残っていないように見えた。

 しかし、延長後半5分だった。「PK戦を考え始めていた」と指揮官が言うように、決着はPK戦の様相を呈していたが、左サイドでMF川上竜(2年=福岡U-18)がボールを受け、中へと折り返すと専修大守備陣が競り、右サイドへとボールがこぼれる。この位置に走り込んでいた野嶽がこのワンチャンスを見逃さず、右足を振り抜くとこれがゴール右隅に突き刺さり決勝弾。交代枠を使い切っていた為、一度足がつっても気持ちだけでプレーを続行した男が大仕事をやってのけ、福岡大は勝利を収めた。

「マイボールが少ないのはある意味もう覚悟の上なので、その中でも効果的な攻撃とか専修大の弱点を付く事は出来ました。ゴール前でボールを持っている率からすれば、シュートチャンス率はうちのほうが多かった。やられているように見えても、身体ごと投げ出していってシュートブロックをするのはうちの伝統なので、それこそ美しくないかもしれないけど、泥臭く粘っこいプレーが随所に出たので、我々らしいサッカーで勝てたと思います」

 乾監督が語るように、自分たちの良さを出して勝った試合に充実した表情をしてみせた。次なる相手は春先に合同で合宿を張るびわこ成蹊大に決まった。3度の準優勝を誇る九州が誇る名門が初優勝を成し遂げる為にもここでは負けられない。美しくはないのかもしれない。勝負強い福大サッカーで頂点まで上り詰める。

(取材・文 松尾祐希)

▼関連リンク
第63回全日本大学選手権特設ページ

TOP