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[MOM327]福岡大DF武内大(4年)_吐血も乗り切る遅咲きのファイター

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.14 大学選手権2回戦 専修大1-2(延長)福岡大 味フィ西]

 名古屋グランパスに内定しているCB大武峻主将(4年=筑陽学園高)という大学屈指のDFと共に、今年の福岡大の守備を牽引するのがV・ファーレン長崎への入団が内定しているCB武内大(4年=国見高)だ。最後の局面で身体を投げ出す事をいとわないプレーと、最後まで諦めない姿勢は福岡大の伝統である泥臭い守備を最も体現していると言っても過言ではない。

 しかし、ここまでのサッカー人生は苦難の連続だった。国見高時代の3年間でまともにプレーした期間は合計し僅か半年しかない。プレーしては膝を負傷するという日々の繰り返し。一番の成長期である高校年代にほぼプレーが出来ず「(サッカーを辞めようと)何度も思いました」と本人は当時を振り返る。

 サッカーを続けようと思ったのは、支えてくれる家族、仲間がいたからだった。「地元が大分なんですが、長崎まで通わせてくれていると考えると辞められなかった」。そして「プロサッカー選手になる」という大きな夢。これを叶える為にもサッカーを辞める事など到底出来るわけがなかった。

 ただ、大学経由でプロになるとしても、高校生活のほとんどをプレーせずに過ごした武内に声を掛けてくれるところは皆無だった。そんな中、人脈をたどり何とか福岡大の練習に参加。結果として、しかし練習参加で再び膝を負傷。福岡大には進学出来たが、そのまま手術をすることになった。

 大学に進学してからも、怪我と戦う日々は続いた。やっと3年生の時に負傷も癒え、出番を増やしていくと、今年に入りレギュラーポジションを奪取。「気持ちだけで走っています」と本人が言うように、サッカーが出来なかった期間に身に付けた不屈の精神力で福岡大の堅守を支え続けた。

 今日の試合でも、タレント揃いの専修大攻撃陣に対しても身体を張った守備で勝利に貢献した。最終ラインで見せる身体を張った守備は観る者の心を打った。しかし、その裏側で身体は限界を越えた状態になっていた。すると、武内は延長戦に入る前の90分間で体力を使い果たし、延長に入る前に嘔吐してしまう。しかも、吐いたものは血。普通はその状況に怖じけ付いてしまうものだが、「交代枠を使い切っていたので、自分がやるしかないと思った」と不屈の精神力で窮地を乗り切った。

「4年間本当に色んな人にお世話になった、リハビリの人もそうですし、親もそうです。お世話になった色んな人に恩返しが出来るようにプレーをしたい」

 ここまで色んな人にお世話になってきた。だからこそ、大学生活最後の大会で有終の美を飾る事を誓う。来春からは大きな夢と本人が語るプロの舞台で戦うことも決まった。ただ、その前に福岡大をインカレ初優勝に導く大仕事が残っている。お世話になって人に恩返しをするべく、3回戦も全力を尽くし戦い抜く。

(取材・文 松尾祐希)

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