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フットサル日本代表86年生まれトリオ鼎談 FP滝田学×FP渡邉知晃×FP皆本晃 後編 代表での86年組の役割

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 フットサル日本代表は、18日、20日にクロアチア代表と親善試合を行う。日本代表が国内で試合を行うのは、年に一度。活動回数の少ないチームにとって、重要な強化の場であると同時に、日本のファン・サポーターの前でプレーできる数少ない機会だ。この2連戦の日本代表に招集されたFP滝田学(ペスカドーラ町田)、FP渡邉知晃(名古屋オーシャンズ)、皆本晃(府中アスレティックFC)の86年生まれトリオは、2年後のW杯でもチームの軸となることが期待されている。彼らはW杯8強入りという目標を達成するために、何が必要と考え、プレーしているのか。そして、目前に迫ったクロアチア戦への意気込みを聞いた。

 以下、鼎談後編

――日本代表の常連となっている3人ですが、最初に代表入りしたのは誰だったのですか?

皆本「オレですね。ミゲル監督になって、最初の中国遠征で呼ばれました。オランダとかと対戦したときです」

滝田「その後に、(渡邉)知晃が入って、最後にオレが入りました」

渡邉「でも、みんなミゲル監督の初年度から呼ばれていますよ」

皆本「その後、オレは前十字靭帯を切って、1年はチームでもプレーできませんでした。その後、(ケガから)復帰してからも、スペインに行っていたので。最初に呼ばれてから、2年以上は代表に呼ばれませんでしたね。だから、アジア選手権に出たのも、今年が初めてでした」

渡邉「オレも今年が初めてでした」

滝田「滝田、奇跡のアジア選手権3回出場(笑)」

――おお、それはすごい。

滝田「奇跡が起きているんですよ、いろいろ。2010年は(北原)亘くんが直前のスペイン遠征で骨折して、若手枠のような感じで入れてもらえました」

渡邉「オレは最後の最後、入れ替わって外れました。その次の大会でも、直前まで合宿に呼ばれていたけど、アジア選手権のメンバーには入れなかったので、今年がまさに『3度目の正直』でした」

――コロンビアW杯まで、もう2年になりました。そろそろその話題も選手たちの中で出ていますか?

滝田「もう危機感しかないですよ」

渡邉「前回のW杯が終わってから、しっかり意識していますよ」

滝田「W杯に出られるポジションを約束されたわけではないと思いますし、危機感はすごくあります。プラス、出場するのも簡単じゃない。W杯のアジア枠が減るっていう話もありますし、そうすると最低でもアジア選手権で決勝に行かないと、W杯には出られなくなるので、本当に簡単な話ではないですよ」

皆本「W杯には出たいけど、それ以上に『勝ちたい』『上に行きたい』っていう想いが強いです。その気持ちでスペインにも行っていたので。出ることもそうですが、出たうえで、どれくらいできるのかが大事だと思っています。それが、日本代表が、どこを目指していくのかという話にもつながっていく。ベスト16を目指すなら、これくらいでいいのかもしれない。けど、もっと上を目指すなら、今のままでいいの? と感じますし、そのためにどうすればいいかは、監督だけでなく、オレたちも常に話し合っていかないといけない。監督が提示してくれないなら、自分たちでそういうところを詰めて行く必要性があるのかなと強く感じています。チームのポテンシャルは本当に高いと思うので、その目標を見据えて、しっかりやっていかないといけない」

滝田「タレントはやっぱり今まで以上に力強い選手がそろっていますよね。(森岡)薫くんにしろ、逸見(勝利ラファエル)もいますし、仁部屋(和弘)もちょっと違う。仕掛けられる選手です」

――2年後のW杯に向けて、ミゲル監督は『ベスト8進出』という目標を掲げています。そうなると今度は、前回のW杯で敗れたウクライナのレベルの相手に勝たなければいけません。活動期間も限られている中で、どのようにチームを、そのレベルに持って行こうと考えていますか?

皆本「スケジュールがどうなっていくのか、そこまで見えていませんが、どれくらいまでやらないと、スペインに勝てないかというレベルは分かっています。ただ、そのチェコとかのレベルは逆に分からないんですよね」

滝田「オレは逆にスペインとはやったことがないから…。ウクライナとか、チェコとは親善試合で戦っていますが、親善試合と本番が違うっていうのを抜きにすれば、確実に底上げができれば、十分に勝てる可能性があるというか、勝てる可能性の方が高くなっていると思います。やっぱり、全体の底上げは大事だと思いますね。たとえば、イタリア遠征では(森)秀太が初めて代表に入りましたが、みんなと同じレベルでできていたのは、すごい成果だと思うし、そういう選手が出てくることは、代表の強化にもつながると思うので、すごくいいことだと思います。ただ、『何が必要?』と言われると難しいけれど、チーム力が上がっていれば、そこのレベルに勝てる可能性は、自然と必然的に上がっていくと思っています」

渡邉「そんなに時間があるわけではないから、一気にブラジル、スペインのレベルになるのは、簡単なことではありません。オレが思うのは、チームとして良いときの試合を出せる回数を増やして、最低限のレベルを上げていくこと」

滝田「うん。安定して、自分たちの力を出しきれる能力を身に付けるようにする」

渡邉「そう。アジア選手権のイラン戦もそうだけど、良いレベルの試合ができることもあるわけだから。昨年のスペイン遠征のインテル戦も、そう。強豪と渡り合えたり、勝てたりする試合ができている。でも一方で、イタリア遠征で敗れた3試合のように、あまり出来がよくなくて、自滅するような試合もある。その波を、いかに小さくしていくか。良い試合ができる確率を高くしていくことを全員で意識していく。常に、自分たちの最低ラインを高くして、それ以上の出来の試合をしていれば、ブラジルやスペインを抜きにして、ヨーロッパ、南米でも『強豪』と言われるチームにも勝てると思います」

滝田「本当に、ここ2年くらいの感じだと、リエッティとかラツィオの試合も勝てる試合だったと思うし、最低でも引き分けに持って行ける地力は付いていたと思う。それができなかったことに関して、僕自身の責任は、すごく感じているところはあります。(佐藤)亮くんとも話したんだけど、所属チームでやっているような、自信を持ったプレーができているかというと、できていないことも多い。それが出せるかどうかには、いろんな要因があります。やっぱり所属チームと代表は違うんですよね。(代表に)残りたいと思うからこそ、消極的になっちゃうし、ミゲルの言っていることだけになってしまう。オレ自身もそうだけど、みんなそう。コイツ(皆本)なんて、ちょっと演じて、そうじゃないような素振りを見せていますけど、本当は、みんな良い子ちゃんなんですよ(笑)」

皆本「演じていないから(笑)」

渡邉「いや、滝田の言っていること分かるよ(笑)」

滝田「ちょっと噛みついて、『オレはオレの道を行く』っていうのを見せている感じなんですけど、実は、みんな良い子ちゃんなんですよね。だから、もうちょっと僕らの世代が吹っ切れてもいいのかなっていうのは、確かにあります。でも、……残りたいんですよね」

――それは、誰もが代表に残りたいですよね。ただ、W杯本番で急に自分のすべてを出そうと思っても、準備期間で一度もやっていないと出せない気もします。そう考えると、準備期間で試さないのは、勿体ない気もします。

滝田「まだフットボール文化が根付いていない、プロフェッショナルになり切れていないのかもしれないですね。だから、オレらの世代がしっかりしないといけない。2年後の本大会では、ちょうど30歳だしね」

皆本「本当に細かいところで詰め切れていないところは、たくさんあるよね。(新しい選手に)『伝えてほしい』と言われても、伝えることもないくらい細かい部分がたくさん詰め切れていない」

――皆本選手は府中でやれているプレーを代表でも出し切れている感覚はあるのですか?

皆本「出し切れているかと言うと、役割も違うので何とも言えないのですが、代表での仕事はある程度こなせているとは思います。ただ、府中の自分と代表の自分は別物だと切り替えています」

滝田「聞こえ方が悪くなるかもしれませんが、府中のときの方が、圧倒的に代表のときよりも役割が大きいんだと思います。みんなそうだと思いますけどね。だけど、代表でそれをやっていいかという問題も出てくる。バランス的に」

皆本「府中だと、仕掛けて、守って、ゲームつくってって、全部やらないといけない。でも、代表に行けば仕掛けられる選手もいる。守れる選手もいる。そうなると自分ができるのは、ゲームをつくる部分だと思うから、パスを散らしたり、運んだり、動かしたり、フィクソのディフェンスを手伝ったりと、仕事をフォーカスして、専念してやっている部分はあります。だから、もしかしたら、『府中ではこれだけやっているじゃない』と物足りなく思われるかもしれないけど、代表に来たら、もっとできるスペシャリストがいるから、こっちはこの人に任せて、こっちは別の人に任せて、その代わりここはオレしかできないから、オレが必ずやらないといけないという部分なので、そこは捉え方次第にもなるかなと思います。あとはセットによって、僕は役割も変えないといけないし、そこでうまくいかない部分もあるのかなと思います」

滝田「それは、ミゲルも考えていると思う。アラで仕掛けるっていうのをイタリア遠征では、晃にも求めていた。アジア選手権ではフィクソでやっていたけど、今回はあえて仕掛けることを求めていた」

――仕掛けましたか?

皆本「……そんなに回数は」

滝田「もう少し仕掛けて良かったよね、本当に」

皆本「仕掛けたかったね。展開を自分でつくらないといけないし、そこのわがままな部分をちょっと出し切れなかったかなという部分はあります。仕掛ける選手は、どこかでサボらないといけない。どこかで他の3人を放置して、待っていた方が、絶対に仕掛けるタイミングは増える。そういうふうにした方が良かったかなと思う試合展開のときも、あとで振り返るとあったかなと。そういう反省はありますね。ただ、どっちが正しいのかは分からないですけど」

――滝田選手は、これまで守備を求められてきましたが、攻撃面でももっと力を出したい?

滝田「僕もそういう意味では、ゲームをつくっていかないといけないと思っています。多分、相手が体格の良いピヴォを起用して、体で戦わないといけないときは、オレが当てられているのかなというのはあります。イタリア遠征では、フィクソの中でも一番、出場機会が少ないくらいでしたし、走れるフィクソ、機動力のあるフィクソが、試合にいっぱい出ていた感じはあります。だから、単純に、そこの危機感もありますね。それは、それですが、守備面でチームに貢献できる部分があるのであれば、そこをまっとうできるようにしないといけない。同時に、攻撃面のプラスアルファを身に付けないといけない。僕も町田では狙うパスも多いし、それが代表で出せないのは、前の選手たちが僕のやりたいことであったり、特徴を理解していないのもあるだろうし、僕が要求していないのもあると思う。だから、もっと言っていいのかもしれないし、逆にそれを言うことで狂うことがあるのかもしれない。ただ、イタリア遠征では特にフィクソも点を取りに行こうと話していたんですけど、結局、1点も取れなかったので」

――前回のW杯ではブラジル代表のFPネットが得点王になりました。フィクソには得点力も求められています。

滝田「あの選手はスーパーですけど、ゴールを脅かす選手にはならないといけない」

皆本「世界のトレンドがそうだからね。フィクソが点を取るっていうのは。急に攻め上がれば、フリーにもなりやすいしね」

――例えば、サッカー日本代表のFW武藤嘉紀選手は、代表からJリーグに戻ってから、『一気に自信を付けたな』ってわかるような、すごいプレーを見せています。でも、パッとFリーグの試合を見に行ったとき、なかなか『あ、この選手は別次元だ。やっぱり代表選手だ』っていうのが、正直、分かりにくいんですよね。そういう圧倒的な違いを、ぜひ3人には示してほしいのですが…。

皆本「府中では得点に直結する仕事もやらなきゃいけないから、違いも出しやすいし、もっと全面に出さなきゃいけないとオレも思っている。でも、フィクソの選手は、そう言われても、なかなか難しいよな?」

滝田「いや、『それでも』でしょ」

皆本「そう? 行ける?」

滝田「行けるっていうか、存在感は出したいよね。そういう意味では、やっぱり友くん(小宮山友祐)とかは目立っていたし。難波田治さんの存在感はすごかった。時代が変わっているっていうのも大きいとは思うけど…」

皆本「確かに。治くんとか友くんの名前を挙げられると、分かる気がする。そう言われると、それでもやらないといけないね」

滝田「タレントも、カリスマ性もあったからね。鈴村(拓也)さんもそう。市原(誉昭)さんも、そんなに派手なプレーはなかったけど、カリスマ性はすごかったし、そこは明らかにオレらに足りないところだと思う」

――そういう意味では、ぜひ、この世代にFリーグから飛びぬけた個を見せてほしいです。

滝田「ニブノブ(仁部屋和弘、小曽戸允哉)とか、今シーズンの星(翔太)くんのインパクトはすごいですよね。プレーもそうだし、色違いのシューズを履くとか、いろいろなアピールをしている。だから、あとは渡邉さんですね。色違いのリストバンドとか付けて…」

渡邉「ヘアバンド付けましょうか? 一昔前に戻る感じで(笑)」

――見た目からのアピールも大事だと思います。話を戻しますが、代表に選ばれるのは、クラブでのパフォーマンスが評価されてのことじゃないですか。それを前提とすると、代表でも自分を出すっていうのは、そんなに悪いことではない気がするのですが。

滝田「やっぱりミゲルの中でも、僕らの中でも、Fリーグの中ではこれができて、これで点は取れるけど、代表では通用しないという部分があるから、一概には言えないですよね。これまで名古屋だけが、アジアクラブ選手権に出ていましたが、Fリーグの各クラブが、あの大会に出て、Fリーグ以外のアジアクラブと真剣勝負をしていたら、もっといろんなことが変わってきたと思うんです」

渡邉「名古屋以外の選手だと、代表に入らないとアジアのチームと対戦できないからね。クラブ単位でアジアのクラブと真剣勝負をしていれば、自ずとレベルが上がるというのは、実際にやっていても感じますね」

滝田「Fリーグのレベルが上がって、海外トップレベルのチームと戦っているような感覚になるのが理想だと思うので、どうすればリーグのレベルが上がるかも考えていかないといけない」

皆本「あとは、代表の活動も限られているから、そこでもっともっと細かいところを詰めていきたいですね」

――クロアチア戦は、代表活動という点でもそうですが、国内で試合ができる貴重な場です。最後に、このクロアチア戦に向けての意気込みをお願いいたします。

渡邉「アジア選手権優勝後、初の国内での親善試合ということで、日本代表の試合をたくさんの方々に生で見て頂けるチャンスです。強豪クロアチアが相手ですが、勝ちにこだわってやりたいと思っています。勝利を目指しつつも、アグレッシブな、観ていて楽しいフットサル、日本代表はこういうフットサルをやるんだというのをしっかり体現したいですね。やはり勝利して観客の皆さんと喜びを分かち合いたいです」

皆本「クロアチア代表はヨーロッパの中堅国で目標に掲げているW杯ベスト8を懸けて直接戦うレベルの相手だと思います。まさにW杯に向けて自分達のレベルがどこにあるのか証明する絶好の機会だと思います。W杯ベスト8、そしてそれ以上を期待していただけるような試合をしたいと思います。それとともに、まだまだマイナースポーツのフットサルにとって、代表チームはそのスポーツの魅力を伝える一番のアイコンです。その責任も果たせるように最高の試合に出来るように頑張ります。ぜひ会場で応援よろしくお願いします」

滝田「本当にアジアチャンピオンとしてやってきた僕らの活動は、日本国内で、生で見てもらうという機会はなかったからね。まずは日本国内でやる試合で、僕たちが積み上げて来たものを存分に発揮して見てもらいたいです。相手もクロアチアという欧州でもベスト8に入っている良いレベルのチーム。自分たちの積み上げて来たものを見せるにはもってこいの相手です。また、世界で見ても、越えないといけないラインにいるチームなので、そこはすごく楽しみですし、アジアチャンピオンとしても、そこは乗り越えたいと思います。特に86年組は、活躍しないとダメですからね。86年組、頑張ります!!」

(取材・文 河合拓)

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