beacon

[特別インタビュー]スターダムを一気に駆け上がったF東京MF武藤(後編)「点を取らないと満足できない」

このエントリーをはてなブックマークに追加

 新人最多得点記録タイの13得点を挙げて得点ランク4位となったFC東京MF武藤嘉紀だが、初ゴールを挙げるまでには時間を要した。しかし、一度ゴールを奪うと、ゴールラッシュを演じることとなる。果たして、得点量産の背景には何があったのだろうか――。

――FC東京と日本代表の試合を見て、ゴールに対する意識の高さが、他の日本人選手とは違うと感じます。
「自分も元々、ゴールへの意識は高くはありませんでした。サイドハーフをやっていたというのも影響しているかもしれませんが、FC東京でシーズンの途中からFWになったことで、その意識が変わりました。得点を取るためにはどういう動きが必要か、どこのポジションにいれば得点を取りやすいかを模索しながら、いろいろな人の言葉を聞き、監督の指導を受けて、何とか得点を取る術を自分で見つけ出せたと感じています」

――シーズン序盤は初ゴールまでに時間がかかり(リーグ戦初ゴールは第8節)、それまではドリブルで相手を抜く姿が印象的でした。
「ドリブルは通用すると感じていましたし、自分的にはそこに楽しさがありました。自分のプレーがたとえゴールにつながらなくても、そこまでのプレーの過程に納得していた自分がいたので、それが序盤に結果を残せなかった理由の一つだと思います。でもFWとなり、得点を取ることが第一優先になると、ゴールを奪うためのドリブルや動き出しができるようになりました。それと、今まではドリブルで相手を抜くことが楽しかったけど、得点できたときに本当に喜びを感じることができたので、今は相手を抜くだけでは満足できません。とにかく今は点を取らないと満足できない自分がいるので、ゴールに対する考え方は大きく変わったと思います」

――代表戦の初ゴール(9月9日ベネズエラ戦)でもそうでしたが、第14節清水戦で完全にフリーになっていた米本拓司選手をおとりに使い、ドリブルで2人をかわして決めたシュートからは、ゴールへの強い執着を感じました。
「清水戦の場面ではパスを出しておけば簡単に得点が取れたかもしれませんが、自分で決める自信がありました。あの場面では自分でボールを奪っていたのですが、もしパスを出して、その選手がシュートを外してしまったら絶対に後悔すると思ったので、それなら外してでも、自分で奪ったボールなら決め切ってやろうという気持ちが強かったですね」

――あそこで決め切ることで、周囲を納得させたと思います。
「自分で言うのもあれですが、あれは結構良いゴールでしたね(笑)」

――どん欲という意味では、第31節名古屋戦のゴールも武藤選手らしさが出ていたと思います。
「あれはノミネートゴールになっても良かったんじゃないかなって思いますね(笑)。これも、自分で言うのは何ですけど、あれほどうまくいくゴールは、そうそうあるものじゃありません(笑)。もう一回、あのゴールを再現しろと言われても、多分無理だと思います。それぐらい、うまくいったゴールでしたね」

――結果的に新人最多得点記録タイの13得点を挙げましたが、一方でその記録を超えられませんでした。うれしさと悔しさはどちらが強いのでしょうか。
「メディア的には『満足していない』と言うのが一番いいと思いますが、半々ですね。自分がシーズン最初に目標としていたのが、10得点でした。この10得点というのも、普段は自分が掲げないような大きな目標として掲げたものです。それを有言実行できたので、自分自身を評価したい気持ちはありますが、14点目を取れなかったのは、自分の力不足だとも感じています。今季は14点目を取る力が自分になかったことが分かったので、来季はそれ以上に得点が取れるように練習し、努力あるのみだと思います」

――得点ランク4位となりましたが、武藤選手より得点ランクで上の選手はPKでの得点があり、武藤選手はPKがゼロです。その価値は大きいと思いますか。
「どうですかね。そうやって見ると、得点ランクが上の選手はPKを蹴っているので価値はあるかもしれませんが…、やっぱり、自分もPKを蹴っておけば良かったかなと(笑)。ただ自分は、自分が獲得したPKを監督が指名したキッカーに譲っていたので、どん欲な姿勢を見せて自分で蹴っていれば、記録も塗り替えられていたのかもしれません。キッカーに名乗りを上げる勇気がある選手が得点ランクの上にいると思うので、来年はその部分の改善もしていきたいですね」

――13得点を挙げた一方でアシストはわずかに1本でした。
「アシストに関しては、もっと増やさないといけません。ラストパスや、ドリブルで仕掛けた後のプレー精度が低いと、自分でも分かっています。アシストという結果はついてきませんでしたが、今年そうやって自分の課題が分かったのは、本当に大きな収穫だったと思います」

――FC東京で存在感を示しましたが、武藤選手の攻撃力は代表でも発揮されていると思います。
「それは、まだまだですね。代表では自分のプレーをまだ出せていないと思いますし、もっともっとできるというところを見せないといけません。アジアの戦いでも結果を残すことが本当に大事だと思うし、言い訳はできない大会です。自分にとっては初めての国際大会になりますが、自分自身にプレッシャーをかけて最高の結果を出したいと思います」

――来季は今季以上に期待が高まると思いますが、来季の目標を教えてください。
「今年以上のインパクトを残したいですね。そのためにもリーグ戦で13得点以上取りたいし、チームとしても今季は9位と納得できる結果ではなかったので、来季はタイトルを取りたい。そして、タイトルを獲ったときに自分が胸を張って『タイトルを獲ったのに貢献できた』と言えるくらいの活躍をしたいと思います。日本代表ではポジションを確保できるように、『左サイドは武藤だ』と言ってもらえるようなアピールを続けたい。生半可な結果ではポジションをつかみ取れないと思うので、クラブでもそうですし、代表でも最高の結果を残していけるように頑張ります」

――現在履いているスパイク、アディゼロ F50の印象を教えてください。
「自分の特長はスピードとドリブルだと思うので、そういうプレーヤーにとって、この軽さは非常にありがたいですね。軽いスパイクは底が横にズレてしまうことがありますが、このスパイクは横ズレしないので、ドリブルをしやすいし、切り返したときにスパイクがしっかりついてきてくれます。スピードタイプのプレーヤーである自分としては、本当に求めていたスパイクです。このスパイクでなければ、あれだけのプレーは出せないと思うので、これからもこのアディゼロ F50を履いていきたいですね」

―スパイクへのこだわりを教えてください。
「サッカー選手にとってスパイクは命と同じですし、スパイクで自分のプレーや試合が決まると言っても過言はないと思うので、本当に信頼できるスパイクしか履きたくないですね。これだけインパクトのあるデザインで、すべての機能性を兼ね備えているスパイクは、そうそうありません。自分はこのスパイクを信頼しているし、このスパイクで点を取りたい気持ちがあります。そういう気持ちがあったからこそ、結果もついてきたと思っています」

――最後に、武藤選手のような選手を目指す、中高生の部活生に向けてエールをお願いします。
「自分は中高生のとき、とにかくボールに多く触れていました。中高生年代はボールタッチやドリブルがうまくなる年代だし、飛躍的にうまくなれる年代だと思うので、体とボールが一つになるくらい、とにかくボールに触れる機会を設けてほしいです。それと自分のように、負けず嫌いであってほしい。たとえ小さい頃でも、ライバルに負けて何も思わなかったら、そこで成長は止まってしまうと思います。誰に対しても負けを認めないくらい、たとえ負けてしまっても次の対戦で必ず勝てるように努力し続けてほしいですね」

(取材・文 折戸岳彦)

★関連ニュースはアディダス マガジンでチェック

TOP