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[選手権]安川PKストップ!前回8強の履正社が公式戦連勝を21へ伸ばし、3回戦進出!

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[1.2 全国高校選手権2回戦 北海道大谷室蘭高 0-0(PK3-5)履正社高 NACK]

 第93回全国高校サッカー選手権2回戦が2日に行われ、NACK5スタジアム大宮の第2試合では北海道大谷室蘭高(北海道)と履正社高(大阪)が対戦し、0-0で突入したPK戦の末、履正社が5-3で勝った。昨年度8強の履正社は公式戦21連勝。3日の3回戦で中津東高(大分)と戦う。

 78年度大会で準優勝した歴史を持つ室蘭大谷から校名を変えて初めての選手権に臨んでいる大谷室蘭は、今年のプリンスリーグ北海道王者。一方、履正社は同関西優勝チームで、12月の高円宮杯プレミアリーグ参入戦では静岡学園高(静岡)、前橋育英高(群馬)という今大会の優勝候補2校を撃破して高校年代最高峰のリーグ戦への昇格を決め、同時に5月の総体予選敗退後から続く公式戦連勝を20へ伸ばしていた。実力派同士の好カードはPK戦までもつれ込む好勝負となった。

 前半、ややミスが目立った履正社。加えて平野直樹監督が「頑張ってやろう、ということで前がかりになり過ぎている部分があった」ことで中盤の選手がボールを持ちながらパスコースを探すことになり、また下がりながらセカンドボールを拾ってしまったことで前へのパワーを出すことができない。対する大谷室蘭は前線、中盤、最終ラインの3ラインが乱れず。隙を見せなかった。運動量豊富なMF中島洸(3年)とMF内山竣太(2年)が献身的なランニングを見せたほか、CB深井祐希主将(3年)を中心とした最終ラインも集中した守りを続けて行く。

 それでも局面で2本、3本と連続で鋭いパスを繋ぐなど、徐々に攻撃の迫力が出てきた履正社が押し込む時間を増やしていく。そして33分にMF多田将希(3年)の右CKからファーサイドの左SB小川明主将(3年)がヘディングシュート。さらに37分にはMF林大地(2年)の右アーリークロスをFW菅原大空(2年)が頭で合わせる。ただ「もっともっと個人個人が関わって1タッチ、2タッチで数的優位を攻守につくっていきたいと思っている。それを目指していたけれど、きょうは一人ひとりが孤立していた。連動した展開とか、守備とかがなかった。それをもうちょっとハーモニーできるように。もう少し協調してほしかったけれど、きょうは音が出し過ぎみたいな感じですかね」と平野監督が振り返る履正社は、持ち味の連動性ある攻撃、セカンドボールの強さなどを発揮することができない。

 一方、及川真行監督が「前からボールを追っていって外に追い込んでボールを奪っていくとか、最後押し込まれてもゴール前で体を張って守ることはできたと思う」と語った大谷室蘭は前半終了間際、MF平塚悠知(3年)が右FKから左足で鋭いクロスボールを入れると、GK安川魁(3年)が弾いたボールを中央で拾ったFW新田裕平(3年)が決定的な左足シュート。後半も履正社が押し込んでいたが、ビッグチャンスをつくったのは大谷室蘭の方だった。14分、左サイドから中島を経由して右中間のFW松井勇弥(3年)まで運ぶと、ターンでDFを振り切った松井が決定的な右足シュートを打ちこんだ。

 長尾悠平(3年)と安田拡斗(2年)の両CBを中心に相手のカウンターをケアしていた履正社は後半17分に登場したFW瀧本高志(3年)がパワフルなキープ、突破で相手にプレッシャーをかける。24分に左サイドを抜け出した瀧本が強烈な右足シュートを浴びせ、27分は小川とのワンツーでPAへ侵入したFW牧野寛太(2年)が中央へ持ち込んでから右足シュートを放つ。ただGK引間雄大(3年)らが好守を見せる大谷室蘭ゴールを破ることはできない。一方の大谷室蘭も35分に平塚のスルーパスで新田が右中間が抜け出したが、GKとの1対1から放ったシュートはゴール右外へ。決定機を逸した大谷室蘭は0-0のままもつれ込んだPK戦で2人目・MF池高慧悟(3年)の右足シュートが履正社の守護神・安川に止められてしまう。対して1人目の牧野から4人連続で成功した履正社は、5人目のMF角野光志朗(3年)が右足シュートをゴール右へ流し込んで決着をつけた。

 履正社はこれで公式戦21連勝。「積み重ねが80分、90分後に出て来る。勝ち負けの確率を上げるためには目の前の仕事を確実に、クオリティを上げていくということが勝利に近づくための一番の近道かなと思っています」と平野監督は言う。試合後の勝ち負けのことを考えるのではなく、目の前のことを私生活含めて着実にやってきたことが結果として出ている。初出場だった昨年度は準々決勝で後半アディショナルタイムに追いつかれてPK戦で敗退。安川が「最後まで集中してやること。細かいところまでこだわってきた」と語るように最後の1分にこだわって戦うチームを目指してきたが、勝ち切ることのできるチームになっている印象だ。

 安田は「最後は人間性と普段の生活と最後絶対に出て来る。去年私生活悪いところがいっぱいあった。今年はちょっとしたことから『サボることをなくそう』と言ってきて。ゴミ拾うとか、ちょっと靴並べるとか、そういうところが最後出るからこだわってやってきた」。好成績につながった日々の積み重ねと去年の反省。安田が「それを達成する前にコーチと(プレミアリーグ参入戦まで全部勝ったら)20連勝やから、全部勝とうやと言っていて。そんときはまさかホンマにできるとは思っていなくて、でも気づいたら20連勝していた」と驚く快進撃がこのあと、どこまで続くのか注目だ。大会前の前評判の高さによって生まれた緩み、不安があることは確か。「目の前の試合を一生懸命やることが得意の子たちがいきなり優勝候補と評価してもらって『オレたち行けるのかな』とかね。足下がちょっと危ういですよね。締めたんだけど締まっていない。(この日の苦戦で)これで目が覚めてくれればいいけれど、まだちょっと浮かれているんですよね」と指揮官は苦笑いしたが、履正社イレブンは苦戦をしっかりと反省し、切り替えて1日後の3回戦で不安を一蹴する戦いを見せる。

[写真]履正社はPK戦のヒーロー・安川(左)と5人目のキッカーとして決着をつけた角野がハイタッチ

(取材・文 吉田太郎)
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