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[MOM1291]國學院久我山DF花房稔(3年)_魂の叩きつけヘッド

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 全国高校選手権2回戦 國學院久我山高 1-1(PK5-4)日章学園高 駒沢]

 國學院久我山高(東京A)の李済華監督は都大会決勝後の取材時から言っていた。「花房はDFとしてパーフェクトですよ」。そして日章学園高(宮崎)戦後にもこうコメントした。「花房はいい。彼が最後、どの舞台まで行くかがとても楽しみ。逸材ですよ」。

 ここまで手放しで褒められるDF花房稔(3年)は、チームのCBの一角をつとめる。國學院久我山は3バック、4バックの両方を柔軟に使い分ける。堅守がウリのチームにあって、相手によって時間帯によってもシステムを変えられるのは、花房ともう一人のCB内藤健太(3年)が絶大な信頼感をチームにもたらしているからだ。この試合でも、「日章学園の10番=FW村田航一(3年)と9番=MF河野翔太(3年)をしっかりおさえておけば」とポイントははっきりしていた。

 しかし、まさかの失点。これは予想外だったらしい。「中盤からのDFの集中力が切れていたと思う」。動揺は隠せなかったという花房。しかし後半34分、左CKの場面。キッカーのFW檜垣寧宏(3年)からボールが来た。

「絶対に来ると思った。3年生の意地を期待しているし、信頼もしていた」。目の前には日章学園のDF陣がズラリといた。だから捕りにくいだろうと、思い切り叩きつけた。ボールは日章学園の足元を抜け高くバウンドし、日章学園の頭上を越えてネットにおさまった。「自分でもビックリ。ヘディングは中学の時は得意でしたけど、今はそんなでもない」というが、両親がともにバスケ経験者、本人も垂直跳びは73cmと、ビッグヘッドが生まれる素地はあった。しかし何より印象的だったのは、真価が問われる劣勢の場面で、美しさより魂を感じさせる力強いシュートだったことだ。

 同点で迎えたPK戦でも「責任感があるので」と5番目に立候補。冷静に中央へ決めチームの勝利を決めた。「PK戦の前から気持ちで勝つつもりでいた」という意気込み。花房をはじめ、この試合では國學院久我山の気持ちの強さが随所に見て取れた。

「ハーフタイムでプレーは良いと言った。でも、1点取れていればいい流れが確実にできていたのに、できていないことが怖いとも言った。結果、言った通りの展開になってしまった」と李監督。決してこの試合内容に満足はしていない。ただし「失点後、積極的に上がったことでサッカーの流れを作った。残り15分、強い意志を示してくれたのはうれしかった」。

 現実は決してそんなことない、と前置きしておくが、國學院久我山というと「美しく勝つ」コンセプトが先行し、なぜか“脆さ”という代償がセットにつきがちだ。特に昨年度、優勝候補と言われながら開幕戦、アディショナルタイムのゴールで敗れたインパクトが高校サッカーファンには強く刻まれている。

 しかし、今年度は違う。まるで現3年生たちがその先入観を、トラウマをぶち壊そうとしているようにすら見える。その急先鋒といえる花房稔。彼らが、もし新たに「美しく力強く勝つ」サッカーを観る者に植え付けようとしているのなら、3回戦の京都橘高(京都)戦が格好のチャンスだ。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 伊藤亮)
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