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[選手権]Jの練習メニュー導入で徹底強化!流通経済大柏が走力、切り替え勝負で走り勝つ

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[1.5 全国高校選手権準々決勝 流通経済大柏高 3-0 立正大淞南高 フクアリ]

 5日、第93回全国高校サッカー選手権は準々決勝を行い、フクダ電子アリーナ(千葉)の第2試合では流通経済大柏高(千葉)が立正大淞南高(島根)に3-0で快勝。前橋育英高(群馬)と戦う準決勝(10日、埼玉)へ進出した。

 07年度優勝校の流経大柏と10年度4強の立正大淞南。ともにハイプレスを大きな武器する両チームによる強豪対決は流経大柏が制した。この1年、「切り替えゼロ秒」を合言葉にしてきた立正大淞南に対し、流経大柏はこの大会へ向けてJクラブが導入しているトレーニングで走力を強化してきた。その成果を示す3-0快勝。会場を沸かせるほどの走りを見せていたMF久保和己(3年)は「相手も『切り替えゼロ秒』というのがテーマだったんですけど、自分たちも『切り替えゼロ秒』というのがテーマなんですよ。『どっちが本物か』。自分たちがプレスも速くて、競り合いも負けないで、その次のセカンドボールも負けなくて、それが勝因だと思っています」と胸を張り、本田裕一郎監督も「良く走りましたよね。寄せもいつものウチらしくできたと思います。立正も速かったと思うんですけど、その上を行けたかなと思っています」と自慢の走力、ハイプレスで走り勝った試合に満足げだった。

 ただ、立ち上がりは中盤の活動量多い立正大淞南がいい試合の入りを見せた。MF藤井潤太とMF平山翔(ともに3年)のダブルボランチやMF宮森信吾(3年)の出足が非常によく、流経大柏のボールを引っ掛けて行く。4分にはPAへの縦パスにFW中浜諄(3年)が反応。流経大柏はCB山田健人(3年)がPAで何とかクリアしたが、直後の右CKで立正大淞南は得意のトリッキーなセットプレーからゴールライン際を藤井が抜け出して会場を沸かせる。

 序盤は2トップを残して押し込まれる形となっていた流経大柏だが、10分頃から球際の強さと自慢の走力を発揮して流れを引き寄せる。13分には相手DFのクリアボールを拾ったFW渋谷峻二郎(3年)が胸トラップから強烈な右足シュート。そして14分には左MF小川諒也(3年、F東京内定)の左足FKのこぼれ球を拾ったFW高沢優也(3年)がPAで粘り、最後はCB廣瀧直矢主将(3年)が決定的な左足シュートを放った。立正大淞南もセットプレーからゴールに迫ったが、南健司監督が「相手の速い寄せによっていつもの攻撃的なスタイルに持ち込めなかった。中盤ゾーン、FWもウチのクリアに対するコーススライディングタックルをかけてきていた。あれはストレスになる。中盤、FWのスライディングタックルの技術の高さを感じました」と評した流経大柏の前に攻撃的な展開に持ち込むことができない。

 そして25分、流経大柏がスコアを動かした。右中間から相手のチャージを受けながらもボールを運んだ久保が敵陣中央右寄りの位置でFKを獲得。キッカー・小川の左足シュートのこぼれ球に右サイドで反応した渋谷が右足でゴールへ押し込んだ。先制した流経大柏はさらに31分、久保が再び右サイドでFKを獲得。ここで流経大柏はトリックプレーを選択する。小川がクロスを入れると見せかけて縦へグラウンダーのスルーパスを入れると、フリーで抜け出した久保がシュート性のクロスボール。これを山田がコースを変えてゴールネットへ沈めた。

 立正大淞南も37分に宮森がダイビングヘッド。39分には中浜の落としを受けた宮森が決定的な右足シュートを放った。だがGK瀬口隼季(2年)のファインセーブに阻まれた立正大淞南は、2点差のまま食い下がったものの、後半に突き放されてしまう。久保を筆頭にMF澤田篤樹とMF浅沼拓己(ともに3年)のダブルボランチらがペースを落とすことなく走り続け、前線で高沢が技術の高さを見せてチャンスをつくる流経大柏は後半19分、PAへ飛び込んだ久保がPKを獲得。立正大淞南は決定機をファウルで阻止したCB山本弥彦(3年)が一発退場してしまう。キッカー・小川の左足PKはGK妻鹿寛史(3年)が左へ跳んでビッグセーブしたが、直後に妻鹿が自陣からのFKでキックミス。流経大柏はこれをインターセプトした高沢が独走し、そのまま左足シュートをゴールへ流し込んだ。

 10人になった上に3点差。立正大淞南にとっては心折れそうな展開だったが、諦めずに攻め続ける。そして後半アディショナルタイムにはCB中村健人(3年)がクロスバーを叩くヘディングシュートを放った。南監督も「10人になって0-3なったら、これは逆転不可能と考えれば分かる。そこでやりきったのは凄かったなと思いました。良くやったと思います」と讃えた終盤の戦い。それを振り切った流経大柏が準決勝進出を決めた。

 流経大柏はJクラブのトレーニングメニューを導入し、自慢の走りをより強化していた。12月中旬に波崎(茨城)で行った合宿では、J1昇格を決めた松本山雅FCに所属するOBのDF飯田真輝の協力を得て、運動量豊富なサッカーを展開する松本が取り入れている走力強化を実行。それも松本が週1日行っているというメニューを合宿期間中毎日やり続けた。50mを8秒以内で走り、24秒の休憩後に16秒以内で100m走、48秒の休憩後に24秒以内で150m走、そして200、250、300mと走るインターバル走を午前午後の各練習後に4セット行うという過酷なメニュー。それでも小川や渋谷はそのメニューを設定タイム内で完走して見せるなど、圧倒的な走力を持つチームはさらに「走れる」チームになった。

 久保は「山雅が週1のトレーニングを毎日やっていた。とにかくキツかったので走りの部分で。あれだけ走ったのならオレらの方が走れるというのがある。やっている瞬間は本当に苦しくて、『もう!』となっていたけれど、こういう大舞台になって、後半だったり苦しい時間帯になると、キツいんですけど自分たちの方が走れる、走らないといけないというプライドがあるので。自信になっています。日本一の苦しさを味わったので絶対に日本一にならないといけない」。その自信によって走り勝った流経大柏。準々決勝前日に「ここ(準々決勝)から第2ステージなんだから、ここからどうやって頑張るかなんだ」と話したという本田監督の下、まず「第2ステージ初戦」を快勝した流経大柏が頂点まで走りぬける。

(取材・文 吉田太郎)
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