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「日本人の技術」で世界に勝負!MF渡辺柊斗とMF渡邊凌磨が“日本代表”として「NIKE MOST WANTEDグローバル ファイナル」へ

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 世界に挑戦する“日本代表”2名が決まった。世界で戦える若き才能を発掘する世界的なスカウトプロジェクト、「NIKE MOST WANTED」は21日、横浜みなとみらいスポーツパーク(神奈川)で国内最終セレクションの「ジャパンファイナル」を行い、勝者としてMF渡辺柊斗(東海学園高)とMF渡邊凌磨(前橋育英高)を選出。2選手は今年5月初旬にイングランド代表の本拠地あるセント・ジョージズ・パーク(イギリス)で開催される「NIKE MOST WANTEDグローバル ファイナル」へ参加し、セント・ジョージズ・パークでの約6か月間のエリートトレーニングや欧州プロのスカウトの機会を得られる「ナイキアカデミー」入りをかけて、世界約50か国からスカウトされた才能たちと実力を競い合う。

 日本人は日本人の武器で勝負――。今回、ヘッドスカウトとして選考を担当した元日本代表DF名良橋晃氏は「彼らは結果も出しましたし、引き出しというか、アイディアが凄く多彩だったので、そういう意味でも世界でも勝負できる2人じゃないか。日本人の良さを出してくれると思う。アジリティ性、動き出しの良さが日本人の特長でありますので、そういうところで勝負してもらいたい。(今回のセレクションでは)強さ、高さという武器を持った選手もいたんですけど、向こうの選手と戦うにはまだまだ勝てないというところもあった。それよりも『日本人の技術出せます』という選手の方が勝負できると考えました」と選出理由を説明した。

 セレクションは1次セレクション参加47人を25人にまで絞って行われた最終セレクション含めて僅差の戦いとなった。まず1次セレクションではパス&コントロール、ポゼッション、アタック&ディフェンスといったメニューを行い、その後4チームに分かれての11対11(20分×4本)を実施。DF小川明(履正社高)が1対1での強さを発揮し、DF河野哲志(修徳高)がスライディングタックル一発で突破を阻止、またMF関戸裕希(前橋育英高)が果敢なチャレンジを見せるなど、それぞれがアピールしていく。2本目にはMF和田幸之佑(久御山高)が右クロスのこぼれ球を右足で鮮やかにゴールへ突き刺し、3本目では関戸が約40mのロングシュートを決める。また4本目にはFW鈴木英記(伊勢崎商高)が左足ループシュートでゴールネットを揺らし、渡辺柊やMF阿部貴憲((無所属、元SVザントハウゼン)もゴール。4本のゲームを終えた後に最終セレクションへ進む25名が発表された。

 中盤で再三ボール奪取を見せていたMF江郷下奨(東海大仰星高)や中盤にリズムを生んでいたMF岡本北斗(松蔭高)、FW林純平(尚志高)、DF打越大樹、MF鵜澤恵太(市立船橋高)、MF市川兼伍(中京大中京高)も力を出し切れずに敗退してしまうような混戦。最終セレクションでは、1次セレクションを勝ち抜いた25選手がA、B各チームに分かれて20分ハーフの11対11に臨んだ。先発はAチームがGK藤川誠人(桐蔭学園高)、右から田崎大地(中京大中京高)、河野哲志(修徳高)、山上泰成(伊勢崎商高)、佐藤翔生(前橋育英高)の4バック。鈴木徳真(前橋育英高)、小泉佳穂(前橋育英高)のダブルボランチで右MF渡辺柊、左MF阿部、2トップは鶴田賢之(東大阪大柏原高)と磯野隆明(市立船橋高)が務め、後半には和田が投入された。一方、Bチームの先発はGK片山淳介(神奈川大附高)、4バックが右から会津雄生(柏レイソルU-18)、滝谷直斗(生田東高)、佐藤誉晃(尚志高)、小川。中盤は山本蓮(久御山高)、渡邊凌のダブルボランチで右が関戸、左が野澤祐弥(神奈川大)、2トップは前田マイケル純(日大藤沢高)と石塚龍成(湘南工科大付属高)で後半は古城優(堺西高)と鈴木英に代わった。

 最終セレクションは6分にAチームの渡辺柊が約40mの左足ループシュートでゴール。鮮烈な一撃で幕を開けたゲームは11分にBチームの渡邊凌がドリブル突破から強烈な左足シュートを放ち、14分にはAチームが磯野のキープから走り込んだ鈴木徳の右足シュートでゴールを襲う。17分には同点ゴール。中央突破を図ったBチームの石塚が、DFに阻まれかけながらも強引に打開して左足シュートをゴールへねじ込んだ。

 年代別日本代表に名を連ねる鈴木徳がボールコントロールとテンポの速いパスで違いを示せば、同じく年代別日本代表の会津は本来のポジションではないSBでも隙のないプレー。中盤でボールを運びながらフィニッシュに絡む渡邊凌や大事な局面で的確なパスを通す山本、好守から決定的な仕事をする渡辺柊、自陣ゴール前で強さを発揮した佐藤誉、小川ら実力者たちが「勝者2名」への争いを激化していく。そして後半は5分に混戦を抜け出したAの磯野が決定的な右足シュート。7分にはBが関戸のスルーパスから古城が決めたループシュートで勝ち越す。だがAは11分、小泉の右足ミドルが相手GKのミスを誘って同点。終盤、印象に残るゴールを決めようと互いがアグレッシブに攻め合う中、Aの鶴田やBの古城、野澤が決定機を迎えたが決めきることができずに2-2で引き分けた。

 関係者が「過去最高レベル」と口にしたほどの「ジャパンファイナル」。勝者2人だけでなく、渡邊凌の前橋育英高の同僚である鈴木徳と関戸も高い実力があることを示し、またドリブルで存在感を放った阿部やジャパンファイナル開始直前まで実施された追加セレクション「THE LAST CHALLENGE」から勝ち上がってきた鈴木英といった選手の評価も高く、スキルの高さ、スピード、高さ、強さなどそれぞれの武器を出し合った。誰が勝者として選ばれるのか、予想できないほどの接戦。その中で選考を担当した名良橋氏、広島強化部・足立修スカウト、鹿島強化部・亀谷誠スカウト、浦和強化部・山田暢久スカウトたちは世界相手に「日本人の技術」を出せる才能をもった渡辺柊と渡邊凌を勝者として選出した。

 渡辺柊は世界の才能たちと戦う「グローバルファイナル」へ向けて「ここまで来たら目標はプロサッカー選手なので、しっかり自分の実力を試してチャレンジして上に上がっていけるようにしていきたい」と意気込み、渡邊凌は「日本のプロを通さずに海外へ行けるのは、自分の目標に少しでも早くたどり着くことができるので、グローバルファイナル突破してスカウト陣の目に留まるようにやっていきたい」と誓った。名良橋ヘッドスカウトは“日本代表”として世界と戦う2人に「日本人は遠慮してしまう。失敗を恐れずに勝負してほしい。負けん気というか、向こうの選手よりも気迫を出してほしい。日本人の良さを出しつつ、日本人離れした気迫を出してほしい。日本人の殻を破ってほしい。(グローバルファイナル)初日から自分の我を強く出してほしい」とメッセージ。日本人初となるナイキアカデミー入りへ、選ばれた若き2人の才能が“日本人離れ”したメンタリティーを持って、その技術を世界に示す。

(取材・文 吉田太郎)

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