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霜田委員長が語ったハリルホジッチ新監督招聘の経緯と期待

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 日本代表の新監督に前アルジェリア代表監督のバヒド・ハリルホジッチ氏が就任することが正式に決定した。12日に開かれた日本サッカー協会の理事会で承認された。理事会後、原博実専務理事と霜田正浩技術委員長が記者会見を行った。

以下、会見要旨

●霜田正浩技術委員長
「本日、技術委員会から推挙したハリルホジッチ監督が理事会で無事、承認いただき、正式決定の運びとなったことを報告します。交渉の経緯や選考理由を途中で話すことは難しかったですが、ようやく正式に決まったので、あらためて交渉の経緯や選考理由について、簡単ではありますが、説明したいと思います。

 2月3日にアギーレ監督との契約解除が決定となり、技術委員会として新しい日本代表監督を選任しないといけないという事情になりました。そこから技術委員会としては2つの方針を決めました。一つは3月に開幕を控えたこのタイミングでJリーグの現職の監督を引き抜かない。そして、海外から外国人監督を招聘する場合、アジアを勝ち抜いて世界に出て、世界で勝つことを目的に監督を選ぶのであれば、世界を知っていて、世界を経験している経験豊富な監督を連れてくることにトライしようと。

 経歴的に素晴らしい監督であっても、会ったことも話したこともない監督にいきなりオファーをすることはできません。まずはいろんな監督と話して、情報を収集し、現在の契約状況がどうなっているか、サッカー観はどうか、サッカーの哲学はどうか、日本代表監督の意欲はあるか、モチベーションはあるか。そういういろんな情報を収集することを先決としました。約10日間、2週間近く情報を収集し、一度日本に持ち帰り、もう一度技術委員会を開いて、情報を収集した監督の中からだれを選任するのがいいか、だれから交渉するのかがいいかを議論しました。そういう手順を踏んで交渉にあたりました。

 2月22日に技術委員会を開き、そこから会長、原専務理事、法務委員会、協会の幹部の方にも報告し、条件を設定し、そこから交渉にあたりました。その時点で技術委員会としては、過去の実績、経験、実際に会った感触や人柄、人となり、そういったことを全部踏まえたうえで、ハリルホジッチ監督に一番に交渉してみようということになり、26、27日の2日間かけて、彼といろんな話をしました。

 決して日本サッカー協会の条件が素晴らしかったわけではないが、彼はいろんな国の代表監督のオファー、いろんなクラブ、ビッグクラブのオファーを断って、日本代表を選んでくれました。非常に高いモチベーション、高い意欲で日本代表の新しいプロジェクトをやりたいと言ってくれ、条件等でも大筋合意したので、それを本日の理事会に推挙させていただいた」

―ハリルホジッチ監督に一番期待することは? また、今回の交渉にあたって元日本代表監督のオシムさんからはどういうアドバイスがあったか?
「異なる2か国で代表チームを率いて、W杯の出場権を獲得した。そして欧州のビッグクラブで数々の代表選手と一緒に仕事をしてきた。そうした実績や経験から非常に自分の仕事に自信を持っている。そして、日本人選手のクオリティーを高く評価してくれている。非常に厳しい監督ではあるが、日本人が持っているクオリティーやストロングポイントを生かして、日本が世界で戦える武器を増やしてくれるのではないかと思っている。

 2つ目の質問については、オシムさんと親交があるとは聞いていたが、オシムさんと具体的に何かを話した事実はない。実際にオシムさんに会いに行ったが、その日、突然お通夜が入ってしまい、オシムさんと会って話ができなかった。オシムさんを訪問した理由は、監督をだれか紹介してもらおうということではなく、今までオシムさんが『日本代表を日本化する』という話をしてきた中で、ザッケローニ監督やアギーレ監督が率いた日本代表はオシムさんの目で見て、どんな道を進んでいるか。僕らはこのまま日本代表の強化を進めていきたいが、外から見てどうかというサッカーの話を単純にしたいと思って訪ねたが、残念ながら会うことができなかった。なので彼から何かアドバイスを受けたという事実はない」

―契約期間はいつからいつまでか? 国籍がフランスとなっているが、フランス語を話すのか? またGKコーチは?
「契約書に記載されている契約の金額、期間は守秘義務があるので、ここで開示することはできない。ボスニア・ヘルツェゴビナ出身ではあるが、フランスの国籍も有している。パスポートもフランスで、フランス語を話す。フランスに家もあるし、奥さんもフランス人。家族もフランスで生活している。選手時代からフランスで長く生活しているので、国籍もフランスということで、本人から了承を得ている。

 GKコーチについては、監督はコーチとフィジカルコーチの3人で来るが、アギーレ監督と一緒に戦ったリカルド(・ロペス)GKコーチをそのまま続投させる。日本人のGKから高い評価を得ているのと、僕ら日本サッカー協会も彼の仕事ぶりは評価している。国籍は違うが、一緒に仕事をすることに監督も納得しているので、その体制でスタートしたい」

―一番最初にハリルホジッチ氏と会ったのはいつか? またアギーレ前監督の問題を踏まえ、候補者の身辺調査に関してはどんなことを行ったのか?
「2月8日に出国し、21日に帰ってきた。約10日間の中で多くの監督の情報を得ることができた。その中の1日、彼と直接会って話をして、彼の気持ちやサッカーの考えなど、いろんな話をすることができた。その期間に一度会っている。

 技術委員会としてはあくまでも指導者としての資質、監督としての力量というところで評価し、推挙したいと思っている。前回の教訓があるので、協会全体でしかるべき部署がしっかりチェックしていると聞いているので、そこは協会にお任せしている」

―アギーレ前監督と契約解除した際、大仁会長に進退伺をしたということだが、現在は自身の進退についてどう考えているか?
「アギーレ監督が契約解除したときにそのような気持ちを会長や原専務理事に伝えたのは事実。ただ、3月の試合、あるいは6月のW杯予選というスケジュールは待ってくれないし、日本代表は止まるわけにはいかないので、次の監督を探すことがまずは責任をまっとうすることだと言っていただき、ハリルホジッチ監督の招聘に技術委員会全員であたってきた。彼と話をして、日本に来てもらうように説得した。人間同士のつながりの中で、彼にこちらに来てもらった以上、このタイミングで仕事を放り出すのは非常に無責任だと思っている。新しい監督が決まり、新しいプロジェクトが始まったので、今、私がやれることはハリルホジッチ監督をしっかりサポートすることだと思う」

―来日の予定。ビザの問題もあるが、月末の試合の指揮は可能か?
「本日2時から理事会が行われて、冒頭で承認していただいた。そのタイミングで現地に連絡を取り、現地で就労ビザの発行が下りていることが確認できている。本日、フランス時間の夕方のフライトで日本に向かいます。3月の指揮は間に合う」

―ハリルホジッチ氏が日本人のクオリティーを評価しているということだが、具体的には?
「監督の口から聞いてもらうのが一番いいと思うが、ヨーロッパで活躍している日本人選手の情報は僕らが伝えなくても十分分かっているし、日本人のプレーのストロングポイント、あるいはウィークポイントも含めて、この部分を伸ばしていけば世界と十分に戦えるという点はいくつか挙げていた。具体的に言うと、もともとずっと言われているが、俊敏性や持久力、勤勉性。しっかり規律を守り、チームとしてコレクティブに戦えるという資質は日本人の選手はすでに持ち合わせているだろうと言っていた。日本人はこうやって戦うというのは具体的にイメージしながら話していた」

―逆に日本の課題としては、どういうことを挙げていたが?
「まだ始まっていないので、あまりネガティブなことは言わないほうがいいかなと思うが、監督はそこも十分に分かったうえで、自信を持って日本人はまだまだ伸びると言ってくれている。今後、練習や試合を通じて、そういうところも監督から聞いてもらえればと思う」

―ハリルホジッチ氏のどんなところが日本代表に合うと思ったのか?
「真面目さ、勤勉さ、手を抜かずに戦うことを要求する監督で、アフリカの選手よりも日本の選手のほうがそういうことには長けていると。勤勉性も含めて、チームのために戦う、チームのために犠牲になるというメンタリティーは日本人の選手は持っているだろうという分析をしている。勝利のためには一切手を抜かず、やれることはすべてやる。勝利するためには完璧主義者でありたいと、監督は言っている。代表チームは勝たなければいけない。いいサッカーをして、勝利をして、サポーターやスポンサー、ファンの皆さんに勝ったところを見せないといけないと思っているので、そういう勝利への執着心を監督は非常に強く要求してくると思う。そういうところを日本のチームにもたらしてほしいと思っている」

―身辺調査に関してはどういうアプローチをしたのか? また、契約期間は言えないということだが、ロシアW杯を前提にした契約という理解でいいのか?
●原博実専務理事
「技術委員会からある程度、候補者があがってきた段階で、その人たちに関して、もちろん内部でも調べているが、外部機関にも依頼をして、そういうチェックをしっかりしてもらった。しっかりチェックを依頼し、チェックしたうえで問題ないとなった」

●霜田委員長
「契約期間は言えない。もちろんW杯に出ることが目標。そのために連れてきた監督なので」

―代表監督で初めてイスラム教徒の監督になるかと思うが、食事面などでのサポートは?
「監督がイスラム教かどうかというのは本人にも確認するが、日本にもいろんな宗教の方が生活しているので、特別、何かしなければいけないというリクエストは監督からも聞いていない」

(取材・文 西山紘平)

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