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記録には残らないアシストを決めた横浜FC GK南「やられたらイヤなことを伝えただけ」

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[4.29 J2第10節 東京V0-1横浜FC 味スタ]

 拮抗した試合は残り時間が10分を切っても、得点が動いていなかった。後半37分、横浜FCは、PAのすぐ外でMF寺田紳一が倒されてFKを獲得する。絶好のチャンス。GK南雄太はハーフウェーラインを越えてボールの近くまで走り寄り、ボールの近くにいた寺田に一言、二言アドバイスを送り、ゴール前まで戻って行った。

 ボールの前には、右利きのMF佐藤謙介、寺田、左利きのMF中里崇宏が立った。佐藤がボールを越えた後、中里が短い助走から左足で低い弾道のシュートを放つ。ボールは壁の外側を巻き、ゴールネットを揺らした。この1点が決勝点となり、横浜FCは1-0で東京ヴェルディに勝利した。

 気になるのは、南がどんなアドバイスを送っていたのか、という点だ。一気にゴール前まで駆けて行った理由について「距離が、良い距離感だったので」と南は説明する。

「ニアも、ファーも、両方打てる位置でした。あれが近すぎると、ちょっと壁の上を越えるのは難しくなります。そうするとGKは、ニアの方というか、自分の立っている方に来るボールに集中できるんですが、(あの距離は)どっちも考えないといけない良い距離でした。さらに、あそこで一人またぐと、GKはタイミングを取りづらいんです。だから、(GKを)ちょっとズラすように『一人またぐように』ってアドバイスをしました。そうやるつもりだったと言われましたけどね」

 実際に佐藤謙介がボールをまたいだ後、東京VのGK佐藤優也はタイミングを取り直している。南は満足そうに続ける。「自分があそこで一人にまたがれると、結構、嫌なので。一人目でどうしてもタイミングをとります。そこでタイミングをズラされると、ボールが見えないから、のぞきたくなるんです。そうすると、逆への反応が、ちょっと遅れる。GKが、少しのぞくように左に寄ったので、ニアに蹴れば空くなと思ったところに、ザト(中里)がうまく蹴りましたね」と、GKの視点から決勝点の場面を解説し、「キックが見事だったと思います。僕は逆の立場でやられると、いろいろとイヤなことがある。それを伝えただけで、最終的にチョイスするのは、蹴った人ですから。上手く入って良かったです」と、決勝点となったゴールを喜んだ。

(取材・文 河合拓)

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