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[総体]『もう富岡は終わった』と言われないように」16年度限りで休校の富岡が24日に福島県予選初戦

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「尚志だけには絶対に負けたくない。それはいつも思っている」。

 こう語るのは、富岡高・佐藤弘八監督だ。福島県において、富岡は東北屈指の強豪校である尚志高の最大のライバルとして、福島のサッカーを共に最前線で牽引してきた。毎年のように県予選決勝は両者がぶつかり合い、一昨年度の選手権で富岡は、前評判が高かった尚志を下し、創部3年目で初出場した08度年以来となる、5年ぶり2度目の選手権出場を果たした。だが、そんな彼らに受け入れがたいニュースが突きつけられた。

「富岡高校、15年度の新入生を受け入れず」―。

 富岡は16年度を最後に、事実上“消滅”することになってしまったのだ。今年4月、富岡町の隣に位置する広野町に県立校のふたば未来学園が開校。11年3月11日に発生した東日本大震災によって甚大な被害を受け、そこからの復興を目指す同地区に明るい話題を振りまいた。しかしその裏で、原発事故の影響によって未だ避難先のサテライト校での授業などを余儀なくされている富岡は、その役目を終え、17年4月から休校することになってしまった。

「正直、この決定は受け入れがたいのは事実です。でも、もう決まった以上、今いる選手たちと必死に戦うしかない」(佐藤監督)。

 サッカー部に残された時間はたったの2年。2、3年生のみ47人のチーム編成となった今年のチームは、CB安部隼生を軸とした3バック、大黒柱の渡辺大輝と三瓶慎哉のダブルボランチを軸に守備を構築すると、左の江川大悟、右の国分裕史の運動量豊富なウイングバックやFW高橋裕司、スピードあるMF荒大地が鋭いカウンターを繰り出す。一昨年ほどテクニックがある選手が揃っている訳ではないが、全員守備、全員攻撃で伝統と言えるカウンタースタイルを貫いている。

「『もう富岡は終わった』と言われないように、最後まで諦めないで戦い抜きたい。『福島に富岡あり』と印象を残し、最後の時を迎えたい」(佐藤監督)。

 自分たちのスタイルを磨き上げ、まずは「ラスト2」となった高校総体予選を勝ち抜き、ライバル・尚志と激闘を演じたい。もう一度、全国大会に出て、富岡の名を刻みたい。“終わり”が決まったからこそ、1日たりとも無駄に出来ない。富岡は24日、平成27年度全国高校総体「2015 君が創る 近畿総体」サッカー競技(兵庫)福島県予選初戦(2回戦)で湯本高と対戦。他のチームとは一線を画する、強烈なモチベーションのもと、一つずつ時を重ねていく。

(取材・文 安藤隆人)
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