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[総体]「後半に頑張れるチーム」水戸商、2点ビハインド跳ね返して鹿島学園にPK戦勝利!!:茨城

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[6.17 全国高校総体茨城県予選準決勝 鹿島学園高 2-2(PK3-5)水戸商高 カシマ]

 平成27年度全国高校総体「2015 君が創る 近畿総体」サッカー競技茨城県予選は17日に準決勝を行い、今年の関東大会予選で優勝した鹿島学園高と昨年県内2冠の水戸商高との一戦は、2-2で突入したPK戦の末、5-3で水戸商が勝利。水戸商は4年ぶりの全国総体出場を懸けて、21日の決勝で明秀日立高と対戦する。

 前半終了時のスコアは0-2で2点ビハインド。水戸商はMF高野雄大(2年)が相手のキーマン、MF金子修羅(3年)をマンマークしてゴールから遠ざけると、オープンスペースを活用した攻撃でチャンスをつくり出す。だが、ボールを左右に動かしながら主導権を握って攻める鹿島学園は16分、サイドチェンジから左サイドでパス交換したMF小沼峻(3年)が、中央方向へ運んでから右足ミドルを叩き込んで先制。その後もMF齋藤弘貴主将(3年)を起点に攻撃を組み立て、サイドチェンジから小沼の突破力や金子のアイディアあるパスで攻める鹿島学園は、39分にも小沼が左中間から左足ミドルを逆サイドのゴールネットへ突き刺して2点差とした。

 水戸商にとっては思惑を下回る2失点。それでも、佐藤誠一郎監督から「次の1点取ったら動くぞ。後半、とにかく圧力かけて行こう」と送り出されたチームは盛り返す。前半からスペースへの動きが利いていたFW鈴木陽哉(3年)に加え、10番MF谷田部晶(2年)、そして後半開始から投入されたFW川上達也(2年)によるサイド、相手の背後を突く動きが機能。後半はFWから中盤へ下りた岡野将也主将(3年)が球際で奮闘するなど、立ち上がりからショートカウンターで次々とシュートシーンを作り出す。またサイドチェンジに鹿島学園の最終ラインが対応できず水戸商はチャンスの数を増やしたが、ゴール前でのアイディア、精度を欠いて得点することができず、29分に鈴木の折り返しから岡野が右足で狙ったシュートもわずかに枠を外れてしまう。一方の鹿島学園も金子のミドルシュートなどで追加点を狙うが、2得点の小沼が足を攣らせて交代し、前半に積極的なシュートを見せていたMF天貝莉駆(3年)も交代すると流れを引き戻すことができない。

 それでも、後半35分を迎えて残り時間は5分。鹿島学園は着実に勝利へ近づき、水戸商は追い込まれていた。だが36分、CB會澤海斗(1年)を前線に上げて1点をもぎ取りに行っていた水戸商は幸運なゴールで勢いを増す。左スローインを受けたSB篠原貫太(2年)が左足で「シュータリング」。次の瞬間、これが、クロスを警戒した鹿島学園GKの頭上を越えて逆サイドのゴールネットへ突き刺さった。水戸商にとって、待ちに待った「次の1点」。このゴールが試合を動かした。39分、水戸商はMF佐藤俊介(2年)が左サイドからアーリークロスを入れると、相手DFを振り切ってPAへ走り込んだ谷田部が左足でゴールへねじ込んで同点に追いつく。「1点返した時点であと5分と分かっていたので、リスク負って攻めて点決めないと勝てない。打った瞬間、覚えていないです。気持ちだけで」という谷田部の無我夢中で放った一撃によって、残り時間1分で試合は振り出しに戻った。

 延長戦ではスコアは動かず。鹿島学園は昨年の全国総体で先発を務めていたMF年代快人(3年)を延長後半開始から投入したことでボールの流れが良くなった。終了間際の11分にはMF小長井大夢(2年)のスルーパスからFW岡野宏希(3年)が決定的な左足シュートを放ったが、水戸商GK大内昴(2年)がセーブ。水戸商も直後に谷田部がチャンスを迎えたが、GK江藤将司(3年)に阻まれて試合を決めることができなかった。

 試合はPK戦へ突入。互いに2人ずつが決めて迎えた3人目、先攻の水戸商・篠原が決めたのに対し、後攻・鹿島学園GK江藤のシュートはGK大内に止められてしまう。4-3で迎えた5人目、水戸商は「気持ち強いんですよ、アイツ。(負傷などでキッカーが)1人欠ければアイツ5番にしようと決めていた」(佐藤監督)という強心臓の1年生DF會澤が右足でゴールを破って決着。水戸商が強豪対決を制して全国に王手を懸けた。

 0-2から挽回して勝利した水戸商。後半に相手を上回り、白星に繋げた戦いぶりは彼らが理想とする姿だった。岡野は「自分たちは『後半に頑張れるチーム』を目指して関東(大会予選)終わってからつくり上げてきている。みんな頑張ってくれて嬉しい気持ちですね。自分が1年生の時の3年生の試合で、その時もカシマスタジアムで鹿島学園と戦った時に2-0で勝っていたんですけど延長戦で2-3で負けてしまって、そこからずっと走れるチームで最後に頑張れるチームを目指してきた」と説明する。この試合、3年生の先発は岡野と鈴木、そして右SB田中拓巳の3人だけ。技術、崩しの多彩さなどは県内2冠を達成した昨年を下回るが、それでもトレーニングでショートスプリントを繰り返して体力を強化し、「チーム力の高さと、最後まで頑張れる選手がいる」(岡野)という今年は水戸商らしく走り勝つことのできるチームになっている。

 3試合連続となった延長戦でも体力負けせずに勝ち抜いた水戸商が、次は決勝戦に臨む。谷田部は「いろいろな人の支えがあってやらせてもらっている。失うものは何もないという気持ちで、(自分たちは)弱いとか言われていたんですけど、ここまで来たら関係ないので、気持ち出して頑張りたいと思います」と宣言。79年に全国総体優勝を成し遂げている茨城の名門は、走り勝って23回目の全国切符を掴む。

(取材・文 吉田太郎)
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