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[総体]個性と思い切りの良さで流れ一変させた明秀日立が第一学院振り切り、全国王手!:茨城

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[6.17 全国高校総体茨城県予選準決勝 第一学院高 2-3(延長)明秀日立高 カシマ]

 平成27年度全国高校総体「2015 君が創る 近畿総体」サッカー競技茨城県予選は17日に準決勝を行い、1月の全国高校選手権に出場した第一学院高と3年前の総体予選優勝校・明秀日立高が激突。茨城県北部勢同士となった一戦は明秀日立が延長戦の末、3-2で勝利し、水戸商高との決勝(21日)へ進出した。

「茨城にはないスタイルを、ということでタフに戦いながら足元の技術もしっかりというところで魅力を感じて進学してくれている子が増えてきてくれている」と萬場努監督が説明する明秀日立は近年メキメキと力をつけ、部員数も100名を越える大所帯に。また10番MF吉田知樹(3年)や技巧派の右SB林大地(3年)、闘争心を前面に出したプレーが印象的なMF前川尚梧(2年)ら個性的な選手が並ぶ明秀日立に対して、07年創部から8年目の昨年度に選手権初出場を果たした第一学院は全国大会で先発フル出場した強靭な左SB高沢成(3年)や抜群の跳躍力と強さを発揮するMF杉野和矢(3年)を中心に冬に続く夏の全国大会を目指した。新鋭同士の決勝進出を懸けた戦いは延長戦にまでもつれる熱戦となった。

 互いに出方を伺いながらの序盤、まずスコアを動かしたのは第一学院だった。12分、左サイド後方から高沢が放り込んだFKをファーサイドの杉野が圧倒的な高さのヘディングシュートで叩きこんで先制点を奪う。第一学院は23分にも左CKから杉野が決定的なヘディングシュート。明秀日立は左SB菅野佑哉(3年)がゴールライン上でクリアして難を逃れたが、攻撃面ではファーストDFの寄せが速く、また球際の勢いがあって選手同士の距離感もいい第一学院の前にパスミスを誘発されてしまう。前半終了間際には左サイドを縦に突いた吉田のクロスをMF桜井太一(3年)が合わせたが、第一学院はDFの好守で防いでリードしたまま前半を終えた。

 だが後半、試合の流れが一変する。萬場監督が「ビハインドがいいのか分からないですけど、どうせ負けるなら思い切って負けようというのがウチのスタイルというか。逆に重いものが取れて『やるしかない』というところに持ってこれた」という明秀日立は後半開始から前線へ投入された長身DF小池架惟斗(3年)がポイントとなり、チャンスを連発。また吉田が「みんなで話して(前半)パスミスが多かったからそこをしっかりとしようと」と振り返ったチームは個々の選手たちがゆとりを持ちながら、アイディアと精度あるパスワークを展開して第一学院の守りを振り回す。そして15分、左クロスのクリアボールをファーサイドで拾った小池がDFを外してクロス。これを中央の林が頭で合わせて同点に追いついた。さらに4分後の19分には右サイドから強引にPAへ潜り込んだFW伊藤駿介(3年)のラストパスを交代出場のFW鵜野宏翼(2年)が右足ダイレクトでゴールへ流し込んで逆転する。

 ここぞとばかりに前へ、前へと出ていく明秀日立はその後も交代出場のMF小磯克文(2年)や吉田がサイドで突破力を発揮するなど、完全に相手を飲み込んでいた。萬場監督は「(将来のことを考えると)弱いところを修正するよりも強いところが抜きんでちゃった方が最後は強いのかなというのとウリになりますよね。高い子は高さ徹底して負けなかったり、速い子はドリブルさせたり。本当は(ボールを)離して欲しいけれど我慢したり(微笑)」。それぞれの特性を活かした攻守を見せる明秀日立が、多少粗さを見せながらも非常にムード良く試合を進めていた。それでも第一学院はCB白将大主将(3年)やGK白将士(3年)中心に1点差のまま食い下がると、少ないチャンスをものにして同点に追いつく。29分、杉野の右足ミドルはGK宮田英幸(3年)の好守に阻まれたものの、これで得た左CKから同点ゴール。ファーサイドでボールを拾ったCB小島一希(3年)のクロスから交代出場FW権田陸(2年)が執念の同点ヘッドをねじ込んだ。

 明秀日立は試合を決めるチャンスを活かせずに逆に追いつかれ、延長戦に持ち込まれた。だがCB石川慶人主将(3年)が「同点に追いつかれても負ける気はしなかったです。相手の足が攣り始めていたし、自分たちは走りには自信があるので負ける気がしなかった」というように明秀日立は延長戦で再び突き放す逞しさを見せる。延長前半8分、明秀日立は林の左CKが相手オウンゴールを誘い、勝ち越し。第一学院もセットプレーから反撃したが、抜群の運動量を示していた桜井をはじめ、最後まで足を止めなかった明秀日立が1点差で勝利した。

 同じく決勝へ進出した昨年の方が技術レベルは上だったと明秀日立の選手たちも認めている。だが石川は「走り、タフさは自分たちは自信があります。去年に比べると上手さは欠けるんで強さでカバーしていかないといけない。強さで勝っていかないといけない」と前を向く。また萬場監督が勝因に挙げた選手層の厚さ、そして積極性。それら今年の武器を発揮してタイトルを取りに行く。水戸商との決勝へ向けて指揮官は「去年(決勝で鹿島学園に)負けているからこそしっかりリベンジしたい。あそこまで行って勝つのと負けるのとでは全然違うと思いますから、しっかり準備していく」。台頭続ける明秀日立が、名門を突破して2度目の全国舞台に立つ。

[写真]後半15分、明秀日立は林が同点のヘディングシュート。流れは一気に明秀日立側へ傾いた

(取材・文 吉田太郎)
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