beacon

[総体]前半ビハインドも「シナリオ通り」の逆転勝利、市立船橋が夏の全国へ:千葉

このエントリーをはてなブックマークに追加

[6.20 全国高校総体千葉県予選準決勝 市立船橋高 3-1 千葉明徳高 東総]

 平成27年度全国高校総体「2015 君が創る 近畿総体」サッカー競技千葉県予選は20日、準決勝を行い、最多8度の全国総体優勝を経験している市立船橋高千葉明徳高に3-1で逆転勝ち。3年連続25回目の全国総体出場を決めた。

 すでに静岡県代表の権利を勝ち取っている清水桜が丘高の名将・大瀧雅良監督が「今年は市船がいいんですよ。(全国でも)トップを走っている」と語るなど、全国のライバルたちから高い評価を得ている市立船橋。MF椎橋慧也主将(3年)や左SB古屋誠志郎(3年)ら昨年からの主力を多数残し、高円宮杯プレミアリーグEASTで無敗の2位につけるチームは、全国大会での優勝候補に挙げられる力を有している。それでも激戦区・千葉の準決勝では何が起こるか分からない。前半9分、千葉明徳は右クロスをファーサイドのMF安部裕人(3年)が力強いヘッドで折り返すと、逆サイドのMF斎木涼(3年)が頭で打ち抜く。気持ちのこもった一撃は左ポストを叩いて内側に跳ね返り、ゴールへ。プレミアリーグEAST第6節までわずか3失点、今大会は2試合連続無失点と攻略困難な市立船橋ゴールを、初出場を懸けた千葉明徳がわずか9分間で破った。

 前半はこの1点によって1-0で終了。「焦れないで、(ボールを)動かし続けなさい。失うな。どこかで綻んでくるから相手の体力を奪おう」と朝岡隆蔵監督から送り出されていた市立船橋は失点前を含めて圧倒的にボールを握っていた。左右にボールを動かし、DFを広げたところでMF原輝輝(2年)と椎橋が縦にボールを入れて決定機を作り出す。11分には原のスルーパスからMF西羽拓(2年)が右足シュートを放ち、20分には右中間を抜け出したU-18日本代表FW永藤歩(3年)の折り返しをMF工藤友暉(3年)が狙った。永藤のスピードや右SB真瀬拓海(2年)のドリブルが相手の守りに穴を開けかけるシーンもあったが、素早いカバーリングで処理するCB高橋海(3年)、体勢が崩れても身体のどこかに当ててクリアしようとするCB金井巽海主将(3年)ら千葉明徳は集中した守り。市立船橋がボールを失わないことに重きを置きすぎたこと、また相手のカウンターを警戒しすぎて思いきりを欠いたこともあって、スコアを動かせなかった。

 市立船橋の椎橋は「(千葉明徳は)『市船だろうが、絶対に全国行く』って。中で『心折れたら、負けんぞ』という声かけもあって、全国行くことは難しいんだなと思った」と振り返る。だが、「後半相手を飲む感じで前から圧力をかけた」(椎橋)という市立船橋がギアを一段上げて千葉明徳ゴールへ襲い掛かる。後半7分、右サイドで相手のミスパスを引っ掛けた永藤が相手DFにボールを触られながらも強引なドリブルで中央へ。すかさず、前方でフリーとなっていたMF高宇洋(2年)へスルーパスを送る。これを高が右足で叩きこんで同点に追いついた。

 後半の40分間でまず1点取ることに集中していた市立船橋。そのノルマをクリアすると、この後は実力差を見せつける。11分、工藤の左CKを中央のCB白井達也(3年)が「ボールが良かったんで、触っただけ。フリーになれたし、ボールに合わせるだけでした」と完璧に頭で合わせて勝ち越しゴール。さらに15分には西羽からのスルーパスを引き出した高が右足で3点目のゴールを決め、千葉明徳の心理に大きなダメージを負わせた。畳みかける市立船橋はさらに24分、相手最終ラインの背後へ送られたパスに反応した永藤が快足と上体の強さでDFを振り切ると、GKも外してシュート。このピンチを金井のブロックで逃れた千葉明徳は30分、金井のオーバーラップから終盤存在感を発揮していたFW阿部航太(2年)が左足シュートへ持ち込む。諦めることなく反撃した千葉明徳だったが、白井、CB杉岡大暉(2年)、GK寺尾凌(3年)中心に堅い守りの市立船橋を脅かすまでには至らず。3-1で勝った市立船橋が全国切符を獲得した。

「いい試練」と朝岡監督が振り返る前半ビハインドの展開。それでもショートパスで相手を動かし続けて体力を削り取り、千葉明徳がペースダウンした後半に「シナリオ通り」に逆転した。指揮官も「しっかり逆転して勝ち切ったのは評価できる」という試合でまずは“最低ライン”の全国出場を決めた。椎橋は「普段自分らがプレミアで相手県リーグで舞台違うっていうプライドもありますし、そこで自信があった」という。加えて名門にさらなる自信を与えているのはその「日常」。椎橋は「自分らがチャレンジャーの気持ちでやらないといけない。監督からいつも、『マジメに、謙虚に、ひたむきにやれ』って言われている。これを言われるだけでなく、自分たちからやっているところもある。試合にも普段の生活が出るんで、チャレンジャーとして(の心構えで)できていると思う。また去年よりも、自分らで何かを成し遂げるために普段から取り組んでいる。(今年は)それぞれ個人が『自分がやる』っていう意識を強く持っている」と今年のチームが備えている力について説明した。この日のように市立船橋に向かってくる相手に対しても、常に挑戦者の姿勢で臨んで勝利を勝ち取るチームになっていることに主将は手ごたえを感じている。

 プレミアリーグでは「(昨年のように)残留っていう目標はやめましょう。優勝争いするっていう目標設定をした」(朝岡監督)という目標通りに首位争いを演じるなど、高い目線を持ってシーズンを送っている。だが、この日の前半は停滞感があった。またゴール前の迫力の部分でも、課題がある。優勝候補として夏の全国大会へ臨む市立船橋だが、昨年は初戦で敗退していることもあってもちろん油断はない。永藤は「去年全国で一回で負けているので、勝ち続けたいという想いがある」。また椎橋は「一つひとつ、勝ち上がるしかない」と言い切った。目標はもちろん全国制覇だが、挑戦者精神を持って一戦一戦勝ち上がっていくだけ。どこよりも勝つことを“義務付けられている”名門は、また意識高い準備期間を経て全国大会に臨む。

(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
【特設ページ】高校総体2015

TOP