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現役高校生必見!!ユニバ代表・神川監督が語る、「進路は高2から…」

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 ユニバーシアード日本代表を率いる神川明彦監督(明治大総監督)がゲキサカの取材に応じ、「大学サッカー」について語ってくれた。大学サッカーに向いている人とは?進路選択で重視するべきポイントは?地方の高校生は関東や関西に出てくるべきか? 大学進学を目指し、その先もトップレベルでプレーを続けたい現役高校生選手は必見の内容だ。オープンキャンパスなども行われる夏休みを前に、今一度進路について考えてみては。

 神川監督は、2004年から2014年まで明治大で監督を務めてきた。今季からは総監督という立ち場でチームを見守っている。2012年にはJFA公認S級ライセンスも取得。これまでには日本代表DF長友佑都(インテル)を指導してきたほか、MF山田大記(カールスルーエ)やMF三田啓貴(F東京)など、多くの人材を輩出してきた。多数の選手を育成してきた指揮官に大学サッカーについて聞いた。

―最近ではプロから声がかかっていても、大学進学を選択する選手も出てきました。大学サッカーに向いている選手はどのように考えますか?
「基本的にはどんな環境でも自分自身の見据えた目標に向かって、日々をコツコツと積み上げられる人。これが大学サッカーに向いている人だと思います。ハッキリ言って、環境は整っていないし、指導者のレベルも高いか低いか見えないところもある。当然、本業である学業もやらないといけないというなかで、受身だったり、自分の目標を見失いがちな人はやめたほうがいいと思います」

「誰も手を差し伸べてくれないし、大学サッカーは自分でキャッチし続けるしかない。注目もされないし、卒業もしないといけないなかで、しっかりとやれる自信があるという選手は選べばいいと思う。でも、24時間サッカーだけをやっていたいんだという選手はプロへいった方がいいですね」

―大学というのはサッカーのためのクラブではなく、あくまで部活という立ち位置になります。
「僕は大学サッカーは無くてもいいカテゴリー、必要不可欠なカテゴリーではないと思っている。基本的に大学という高等教育機関で高い教育を受けたい、かつスポーツに勤しみたいという子は大学サッカーをやればいいと思う。大学は学ぶところで、サッカーをするところではないので。僕のその考え方は昔から変わっていないです。だからこそ、ユニバーシアード代表でも、サッカーのことは話しますけど、それ以外の周辺の“ものの考え方”も徹底して話しています」

―高校生が進路を選択する上で重視するべきところはどこになるのでしょうか?
「その大学の風土や体質が自分のあっているものかどうかは、絶対に見なければいけない。あとは大学にいって、何を学びたいかもリンクさせる必要があります」

―大学へ練習参加するなかでしっかりと見るべき部分は?
「肌感覚、居住空間ですね。自分がその大学のクラブに身をおいたときに、居心地がいいと思ったか、ここは耐えられないなと思ったか。厳しいか、耐えられるかどうかではなく、自分が求めている風土や体質の空間なのか、違うのかは絶対に見た方がいいです。できれば早い段階の高校2年生くらいから、見ておいた方がいい」

「高校の監督さんや先生も、大学サッカーはほとんど見ていない方が多い。(練習へ)見に来ていませんから。だから適切なアドバイスはできないはず。なので自分の目で、肌で、感じないとダメですね。監督さんが『Aの大学へ行け、Bの大学へ行け』というから見学にいくというのはやめて欲しいです」

―それでも先輩や監督、顧問の先生、知り合いに勧められたからという理由で進学する選手が大半なのが現実です。
「危険ですね。極めて危険です。4年間というのは、終わってみれば短いかも知れませんが、決して短くはないですよ。日々を過ごすところと考えると、中学や高校と比べても長い。しかも自分で決められる24時間が今までよりも遥かに多い。自分で判断して、自分で決めて、行動するという基本的な行動姿勢ができていないと、大学へ来ても決しておもしろい生活にはならない」

「誰かが与えてくれる、誰かがつくってくれる、パッケージみたいなものを求めているなら、大学に来てサッカーをやらない方がいいと思う。普通に受験して、大学生をやった方がいい。大学で何をやりたいかが少しでも明確になっていて、その実現のためにはどこの大学のどこのサッカー部だと、自分がなりたい自分になれる可能性が高まるかを考えて選んだほうがいいです」

―必死にサッカーに打ち込んでいる高校生が進路について、そこまで深く考えられるかというと、難しい部分もあるのかもしれません。
「高校生には『そんなことまで考えてないよ』と言われてしまうかもしれないけれど。それくらい考える高校生であってほしい。『早熟たれ』ですね。なぜかというと、大学選びは極めて重要だから。自分で決めるまでの過程や覚悟が大事になってくるんです」

「不利益なことが起こったり、どんなことだって理想通りにはならない。そんな困難がぶつかってきたときに、解決するのは自分自身だから。大学では誰も手なんか差し伸べてくれない。それを解決するときの一番の糸口は『なんで自分はここにきたのか』という選択の過程や、理由や覚悟なんですよ。そこからしか、そういう苦しみからは脱却できない。他人や組織にも脱却の糸口はない。だから自分で選ばないとだめだよと」

―明治大学さんでは高校生の練習参加を広く受け入れているそうですね?
「明治大は高校2年生から練習参加を許可しています。明治大を希望していなくても、『大学サッカーってなに?』というところから、見てみたい子は来いよとやっていますから。もちろん、高校の監督さんを通じて(の参加)ですけど、弱いチームだろうが、強いチームだろうが関係ないです。そういう意味でもうちは門戸を開放しているんです。知らないでものを選ぶ子が多すぎるので」

「果たして(関東)1部にいくことだけが、本当にいいことかはわからない。(関東)2部へ行った方がいい場合もあるかもしれないし、都学連の方がいいかもしれない。4年間も高い授業料を払って、やりたくもない勉強をやるのはバカバカしいじゃないですか。そういう部分を考えれば、自分でいろいろな条件をつくって、その条件に従って、大学を選んだ方が絶対いいに決まっているので」

「18から22歳というのはもっとも人間として、脳や精神が成長する度合いの高い時期。欧米に比べると、日本人は成長が遅い。向こうだと15歳くらいから大人っぽいが、日本は幼い。要するに日本の教育システムがそのレベルだから、幼くなってしまう。それならば、サッカーを通じて、18歳から22歳である程度の完成形をめざすのであれば、ちゃんと自分で選んだ道でやった方が効率はいいんじゃないかなと。社会に出たら、それこそ誰も助けてくれないんだから。だったら、(学生として)最後の4年間は重要なんじゃないかなと高校生に投げかけたいですね」

―地方の学校へ通う高校生のなかで、より上を目指す選手は関東や関西を選びがちです。その選択は正しいのでしょうか?
「地方の選手が関東に出てくる上での一番のネックは金銭の問題。経済面の問題がクリアになっていて、かつ自分の目的に達している大学がそこにあるのなら、関東まで来るべきだとは思うけれど、そういう部分がクリアできなかったら、今は地方にも魅力的な大学はたくさんある。そこをしっかりと見た方がいいですね」

「逆にいうと地方の方が全国大会に出やすい。デンソーカップチャレンジの地域選抜にも選ばれやすいという面もある。高校生は、そういう部分が分かっていない子も多いんじゃないかと思う。北海道や東北などでもいい。周りがどうあれ、自分のやるっていう気持ちがあればいいんじゃないかなと。だからこそ、周りに流されるような奴ではだめなんです」

「とはいえ、環境が人を育てるという面もあるので、より高いレベルの環境を目指せればいいとも思う。明治大も一部分は環境はいいが、一部分は悪い。人数は少なくて、練習のピッチでのレベルは高い、そういう部分の環境はいい。ですが寮はあまり良くないし、学費は高いし、授業は全然“下駄を履かせて”くれない。朝練しかやらないという環境の悪さもある。何がいいかは自分で決めないと。あとは高校の監督の意向が強すぎる場合もあるから、それはそれとして聞いておいて、やっぱり自分でしっかりと調べられるような人であってほしいですね」

(取材・文 片岡涼)

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